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掌編小説集1 (1話~50話)

腕輪

作者: 蹴沢缶九郎

男は仕事場まで信号に引っ掛かることなく到着する。もっとも、そんな事は男からすれば些細な事で、とくに珍しくもなかった。


数年前、男は神社の前で銀色の腕輪を拾った。その腕輪に、男は言葉に出来ない不思議な魅力を感じ、手に取り腕にはめてみる事にした。


「なかなか良いじゃないか。」


持ち主には悪いと思ったが、こんな所に捨ててあるのだ、どうせいらなかったのだろうと腕輪を自分の物とした。


男の身に不思議な事が起こり始めたのはそれからだった。


ある日、仕事で向かった営業先での事。


「丁度良かった、お宅の取り扱ってる様な製品が必要だったのだ。是非話を聞かせてくれ。」


あれよあれよと話は纏まり、仕事で成果を残す。


また別のある日、気にかけていた女性から、


「実はずっとあなたの事が…。」


と愛の告白を受けた。


何気なく買った宝くじに高額当選した事もあったし、病気というものには無縁となった…。


そんな幸運が度々に起こったのである。


自分の身に起きた幸運は、間違いなく腕輪のお陰であると、男には不思議とそんな確信があるのだった。


「この腕輪がある限り、俺は幸せに恵まれ続けるのだ。」


と。



やがて、男は美しい女性と結婚して子供を授かる。幸せ、いつまでもこの時が続けば良い、全てが順風満帆


…のはずだった。



突然子供が高熱を出し、急いで病院に連れていく。検査の結果、医者の話では、現在の医学では施しようのない大病との事だった。


愕然と帰路へつく。自宅の電話が鳴り、出ると警察。


「お宅の奥さんが事故に遭いまして、病院に運ばれ…」


何かを言っているようだったが、それ以上は聞こえてこなかった。


男には、まるで今まで自分の身に降りかかるはずだった全ての不幸が、自分を避けて周りの人間に降りかかり始めた…、そんな気がしてならないのだった。


ふと、銀色の腕輪に目をやる。


腕輪はどこか妖しく光り輝いていた。

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