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恋愛未満少女漫画家  作者: ぱんの mimi
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スケッチと誰もいないはずの教室

どこの学校にでも飛び抜けてモテる人というのはいるもので


私の学校には私と同じクラスにその人物がいた。


彼の周りには常に黄色い声が飛び交い、彼の一挙一動に視線が集まる。


だから私は彼を心の中でこう呼んでいた。



『ヒーロー』



ヒーローと同じクラスになれたことを私は心の底から喜んでいた。


授業中うるさくても、休み時間が騒がしくても



だって私は



重度のオタクで


さらに言えば



将来の夢は少女漫画家になりたかったのだ。



ヒーローは話題に事欠かなかった。


オサレな雑誌の表紙にいそうな顔や

180センチ以上ある高身長や

バスケ部で2年生の唯一のスタメンなことも

同級生はもちろん、下級生、または先輩たちにもファンがいること。


これだけ女子からきゃーきゃー言われれば男子からの別な熱視線を浴びそうなものだけど、

ヒーローはその嫌味のない性格や、女子に対して一定の距離を保っていることから、男子からも好かれる、真のヒーローなのだった。



それもこれも本人から直接聞いた訳ではない。

360°、小鳥のように毎日囁かれるヒーロー情報を聞くだけで、彼の『人となり』が、同じクラスになって1年と半年。全く喋った事のない私にも、伝わって来るのだった。


今日もヒーロー事情に詳しいファンの子たちの噂話に耳を傾け(盗み聞きともいう。)

またネタが溜まったぜ。と一人ニヤニヤと放課後の教室に残っていた。


私は部活には入っていない。


当然世の中の高校生は用事もないのに教室に残っていたりはせずに、部活やバイトなどで青春を謳歌しているのでいつも私は放課後の教室を独り占めしていた。


放課後の教室は良い。


誰もいない教室で教室や、そこから見える風景をスケッチする。


『学校の中がみれるなんて、学生の特権だよね。ホントに羨ましいわ。』


サークルの主催者から私はそう言われてから、たくさんのなんでもないものをスケッチするようになった。



いつか使うかもしれない。



誰もいない教室ってのはキケンだ。

いつも出来ないことをしたくなり、それを実行する変な勇気が湧いてくるのだ。


今日も私は匍匐前進のように床に這いつくばりながら、幾多の椅子と机の脚をスケッチしていた。


いや。使わないだろ。

そう突っ込んでくれる優しい人は誰もいないのだ。



ガラガラ

ピシャ


私のクラスの引き戸は結構豪快な音がする。

高揚していた気分がすこし沈み、埃まみれの自分が若干、いや、かなり『ないわー』と思っていた時だった。



あの、ヒーローが女子の腕を引き教室に入ってきたのだった。

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