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君を思いて、ショッピング

桜の見送りを受け、歩くこと2日、トラブルもなくなく予定通り、都に到着した。

都は思ったほど発展した場所ではなく、人と家の密度が高いだけで、想像したものとは大分違う、それに所々で大規模に壊されたような痕跡がある戦争の後だろうか

「ここが都ですか?」

「確かにそうじゃが、ここは外町じゃ、もう少し行ったところに守衛門があってのう、その中が店や貴族のおる所謂都らしい場所じゃ。まぁ、そこに行く前にまずはこれを換金せんとのう。」

レッカは翁に連れられ、街の中を見物しながら、巨木を買い取ってくれる問屋を目指し歩いていく。

「なんじゃ、そんなに珍しいか、キョロキョロするんじゃなかぞ、田舎者ば思われる」

「原始の人々の文明レベルの都ですから珍しいは珍しいですが、それより疑問なのはここにいる人たちもみんなミスター翁や月子のような力が使えるものなんですか」

「いいや、そうでもない。わしはともかく、月子は特別じゃ。ここまで強く、しかも生まれつき使いこなしちょるのは月子しか知らん。普通、わしの次元の力を使おうとすると、長年の研鑽がいる。現に桜は力を使っておらんじゃろ、あれは桜が訓練しとらんから、本人に負荷がかかる。だから使わん。

ここにおる殆どのものがそうじゃ、使ってもわしらほど強くはない。

通常己の力のあり方に気づくのに10年、そこからそれを顕現させるのに3年。さらにその力が自在に使いこなすまでまた10年。そして極めようと思えばそこからさらにほかを犠牲にして10年はそれくらいかかるもんじゃ。

それこそモノにできればそれだけで、地方の有力者や力によっては宮仕えも夢ではない。」

「要は特別ってことですね。なるほど、どうりで皆こっちを見て逃げていくわけだ。」

「わ、私を怖がりようわけやなかとよ。この人たちはじさまを怖がって逃げとるとよ。

じさまは昔この都で一番強か武士やったとよ。えっとなんやったね、すごか呼び名。」

「破壊剣龍大帝のことか?それとも煉獄大将軍のほうか?」

「どちらも悪側の呼び名としか思えないし、そう呼ばれる絵面が容易に想像がつくな。自分のこの世界の認識を修正する必要があるようですね。最初に出会ったのがミスター翁のせいで僕は危うく偏見を持つところでした。」

「こげなよか男ば、そないにおったら大変じゃろうが、」

「えぇ、世はまさに世紀末、ここ以上に嫌な世界ですね。」

レッカは助けてもらった恩義はあるが、暴力的で、ガサツで、ウザイまでの自己中心の翁が嫌いだ。だからこそ、翁に対しては毒を持って答える。

木材の換金を終えると3人は守衛門を超えて中心街に赴く。門をひとつ超えただけなのにそこはまるで別世界。建物から、人の身なりから、道の整備の程度まで全てが違う。唯一変わらないのが皆翁を見て驚き怯えることだけだ。

「さて、レッカ、わしと月子は買い物がある。お主は好きにこの街でも見と回っとれ。」

「いや、別に行く場所なんかないですから、ついていきますよ。」

「桜と月子の物を買うんじゃ、男のお主は邪魔じゃ」

「それを言ったらミスター翁もでしょうが、近寄っただけでお店の人が店じまいしますよ」

「わしが桜のものを選ばんでどうする。」

レッカは納得こそしていないが、まぁ、別に食い下がることではないと判断する。

「分かりました、それじゃ、1時間ほどぶらついてきますので、」

レッカは一人、翁たちが向かった方向とは反対側へと歩いて行った。

「本当に良かったのか?せっかくの都じゃ、レッカと一緒じゃのうて、」

「じゃけど都はじさまが一番詳しかもん。それに私は欲しいモノがあるったい、あのね、」

月子は大して変わらない背伸びをし、屈んだ翁に耳打ちをする

「そう言えば来週じゃったな。花見の約束。かんざしに、新しい着物か、相分かった.

とはいえ少し遠いのう」

翁はまるで子猫を掴むように月子を掴むと、肩に乗せ、大通りを走っていく。

まるで象が俊馬のごとく走り抜け、街はさながら地獄絵図。レッカは姿こそ見えなくとも、その悲鳴と土煙で何が起こっているかの想像は難しくなかった。

目的地についた月子は、大人っぽいものから可愛い物まで、次々に試していく。

「えぇのう、迷うとるのう、まるで、婆さんの若い頃をみとるようじゃ。」

翁は楽しそうな月子に満足気だ。

「そらそうばい、私の大勝負ね、だから失敗出来んと、どげんね、これ愛らしかね?」

「あぁ、月子ならなんでも似合うぞ。」

「もう、そういうことやなかと、でも本当によかとね。好きなもんばこうてくれるって」

「あぁ、構わん、構わん。孫に買うちゃる楽しみのようなもんじゃ、それにわしは銭ば持っとる。ワシも年じゃ、そう長くはなか、使えるうちに使わんとな。金はどうせ、わしが死んだら、桜が世界旅行で豪遊であるだけ使うだけじゃ。多少は減っても、文句は言わん」

「じさまそれでよかとね」

「なに、地獄に銭ばもっていけん。しょんなか、それよりこんなジジイを愛してくれたならそれくらいの役得があってもよか、わしの供養もしてくれるよか妻じゃ。」

翁は笑い遠慮するなと、迷うものをすべて買おうかと打診する。

月子はそれじゃ意味がないと、念には念を入れて一つを選ぼうとする。


次話2月3日18時

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