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痴話げんか

荒野を走ること2日、二人は虹の大橋を前に窮地に陥っていた。

高さ100メートル、幅2キロにも及ぶこの大峡谷の袂から下を覗き込む。

「降りて渡るというのは現実的じゃないですね。」

「だね、流石にこれはきついね、まぁ、それ以前に私の愛馬は泳げない。しかし予想外だったな。まさか鬼に襲われ、大橋が落とされるとは、」

どんな災害も退ける世界最大の吊り橋、かけられてゆうに二百年。落とされることなど想定反していなかったため、この橋が落とされて困るのは彼らだけではない。

あたりでは物流が途絶え、こっちでも対岸側でも混乱が起きている。

「ほかに橋は?」

「ない、ここからさらに下流に行けば峡谷の高さも下がって川幅も広がり、渡し舟があるけど、そこを迂回した場合、ほら向こうに見えるだろ、対岸のあの山に阻まれて鬼ヶ島があると言われている場所に行くには私のバイクでも2週間はかかる。」

「それじゃ、ダメですね。ちなみにもし、橋があったとしたら、ここから鬼ヶ島までは?」

「私の愛馬なら2日くらいだと思う。」

「向こうを見る限り、バイクはないが馬はある、か」

レッカは谷底を見下ろしながら考え込む

「双葉さん、ありがとうございました。契約はここまでここからは僕だけで行きます」

そして考えた結果、自分ひとりで峡谷を降りて向こうに行くことを決めた。

谷底は絶えず激流となっているが、リミッターを解除すれば多少下流に流されるが、渡るのは不可能ではないだろう、それに渡ってしまえば、90度を越えている場所やひっかかりの少ない場所があるが、重装備での雨天時のボルタリング経験のあるレッカにしてみれば、問題があるようには見受けられない。渡りさえすれば、

双葉はレッカの様子を見て何を考えているのか察したのか、バイクに腰掛け手招きをする。

「レッカ……ちょっとこっちに……」

少年ではなく、レッカという名前で呼びつけた。

「はい、なんですか?」

「正座、」

「はい?」

「いいから正座。」

「はい、いったいなんなんですぶわっ!危ないじゃないですか!」

レッカが正座すると、双葉の長い脚が垂直に上がり、そのままレッカの頭の上に振り下ろされる。レッカはそれを紙一重でよけるが、それは双葉にとっては予想外、かかとの骨が岩に当たり、振動が全身を駆け巡る。

「避けるな、バカ!!ったーー!マジもうありえない!」

「いや、避けるでしょ!とより大丈夫ですか。」

「大丈夫じゃない!もう、説教してやろうかと思ったのに何言うか忘れたじゃない!ちょっとマジありえないんですけど」

「なんかいつもとキャラ違いますよ。上から目線どうしたんですが」

「うるさいー、ちょっとマジで痛いんだから!」

結局レッカは、『そう簡単に私たちの関係が終わってしまうものなのか』という怒りと、『無茶だ無謀だ、必死なのは分かるが、君が死んではなんにもならない、自分のこともちゃんと考えろ』という心配。本来言いたかったであろう、その二つはそこそこに、話の9割は不条理な自爆による愚痴に始まり、どれだけ痛かったかの感嘆詞のみの説明。何一つ納得できない、双葉の理想の彼氏感や、双葉、女性を代表して男について語る意味不明な愚痴にまで発展し、ひたすらそれを言われ続けた。しかも、話終わったあとレッカはめんどくさそうにそれで終わりですか言ってしまったがため、双葉の怒りにさらに火を注ぐ事となった


次話2月14日12時

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