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デート






僕は知ってしまった


君の病気を






「千歳」



呼ばれて振り返る彼女の顔が何故か新鮮に思えた。制服姿にも慣れてきたが、そろそろ冬休みだ。



「勇也。テストどうだった?」


「まぁ、悪くはない」



元々頭は悪くない勇也は今回もそこまで悪い結果は出さなかったらしい。



「ねぇ、私ねやってみたいことがあるの!」


「あ?何だ?」



付き合い出してからの千歳は更に可愛くなったと思った。いや、可愛いというより綺麗と思うほど整った笑みをする。



「クリスマスデート」


「で…」



デートという聞き慣れない言葉に勇也は顔を赤くした。やはり千歳はその顔を可愛いと叫んで茶化す。



「だめ…?」



上目遣い&甘い声音。どこでそんなものを覚えたのか、と内心呆れながらもその攻撃を食らう。くらくらする頭を理性で持ち堪えて、答えた。



「十二月二十四日。だな」


「いいの!?」



喜んだ顔がまた可愛い。と勇也は思った。

千歳の頬に優しく触れてできる限り静かな声音で言った。



「だけど、代わりに…もらうけど」



視線は千歳の唇。何を言いたいのかすぐに理解できた。初めてのデートで何もしないでいるほど彼は大人ではない。

今度は千歳が顔を赤くして身を引いた。



「え、エッチ」


「おい!それはねぇだろ!」


「変態!」


「ほぉ?好きな奴にキスしたいと思って何が悪い!」



きっぱりと言われたことが衝撃だったのか、今度は全身が赤くなる。そういえばはっきりと好きと言ったことなかったな、と今ごろ思い出す。



「ば…馬鹿」


「それとも今もらっても俺はいいけど?」


「い、いや!やるならクリスマスがいい!」


「なら決まり!」



しまったというように口を押さえる彼女に不敵に笑んだ。

そしてクリスマスの日に待ち合わせをして、その日は別れた。






十二月二十四日、クリスマスイヴ。二人は街中の広場で待ち合わせをする。時間より少し遅れて来たのは千歳。いつもとは違う私服の彼女。



「ごめん!」


「走るなよ。身体に悪いだろ」



気にしていない様子に安心したのか、彼女の顔はすぐに笑顔になる。勇也は手袋も何もつけてない彼女の手を握る。



「ほら、行こうぜ」


「え…あ、うん」



指がからまる。恋人繋ぎだと千歳は心の中で呟いた。

一方勇也は白くてひらひらとした天使のようなワンピース姿の千歳にくらくらだ。



「ねぇ…」


「ん?」



いくつか言っていた所を回り、二人は休憩とお昼のためにファミレスに入った。そこで、出された水を飲む勇也に千歳はぽつりと。



「今日…遅くまでいようね」


「────っ、ごほ、ぐ、げほ」



今日は初めてのデート。そのせいか千歳の様子がおかしい。ここまで素直な台詞を吐くことは今までになかった。



「勇也?」


「ごめん。ちょっときた…」



もちろん水の方のきたではなく、予想しなかった彼女の言葉にきたのだ。



「もしかして、またエッチなこと考えてる?」


「んなわけないだろ!てか、またってなんだ!またって!」


「この前も…。き、き、き、」


「言えないなら切り出すな!だから、好きな女に触れたいと思って何がいけないんだよ!」


「こ、こんな所で変なこと言わないでよ!」



やっと彼女らしい反応に勇也は意地悪く笑う。



「忘れてるだろ?俺、意地悪なんだぜ」


「そうね。最初シカトこいた人だもんね」



言い合って笑う。最初から変わらない二人の関係。

告白しなかっただけで、二人は恋人と変わらない。



「次は?」


「ツリー見たい」


「じゃぁ、あそこだな」



勇也は手を差し出した。千歳はその手を見つめて、握るのではなく腕に絡み付いた。



「なっ!」


「この方があったかいんだもん!」



身体を固くする彼に気付いて千歳は微笑む。

街の奥の奥。そこにこの日のために飾られている大きなクリスマスツリーがある。。二人はそれに向かって歩く。



「もうすぐで陽が沈むね」


「あそこのツリーは暗いと綺麗だぜ」


「本当?楽しみ」






初めてのデート


初めてのクリスマス


病院でも学校でもないこの場所で


僕らはやっと二人だけで歩いている






「綺麗」



辺りはすっかり暗くなって、回りには二人と同じ恋人同士がツリーを見つめる。



「千歳」


「え…?」



千歳を優しく抱き寄せた勇也は静かに呟いた。



「愛してる」


「……馬鹿」



頬を染めながらも彼女は勇也を拒まずに優しく触れるだけのキスをした。

妙に熱くなった身体はこの寒い中でも冷めず、見つめ合ったまま唇を離す。



「勇………也」



膝から力が抜ける。倒れる彼女を咄嗟に支えて勇也は地に膝をついた。

胸を押さえて苦しそうにする彼女。勇也は思わず叫んだ。



「千歳!何だ!?どうした?」


「────っ、ゆ………や。で…」



息も出来ないほど苦しむ彼女が視線を送るのは自分の携帯。



「病院だな!待ってろ!」



片手で力強く彼女を抱き抱えたまま、勇也はすぐさま病院に電話をして、千歳は救急車で運ばれた。

幸い、早く医者に診てもらったため発作はすぐに治まった。






「ごめんね、心配かけて」


「…………で?」



ゆっくりと低い声音で聞いた。今まで聞こうとしなかった彼女の病名。だけど、こんな苦しみ方を見たらもう聞かないわけにはいかない。彼はこれから彼女の一番身近な人物となるのだから。



「………俺はもう部外者じゃねぇぞ?」


「うん、わかってる…。私ね」






君は初めて僕に告げた


自分の病気は


先天性心臓病だと







七話目です。やっと彼女の病名が明らかになりました。これから少し無茶な病気設定をしますが、どうか心を広くしてみて頂きたいです。できる限り現実と同じ設定でいきますが。

次は病気について二人が語り合います。ここまで読んでくれている皆さんに感謝して早めに更新したいと思っております。

もし、よかったら感想及び評価お待ちしています。


三亜野雪子

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