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プロローグ
少しレトロな感覚を匂わせるセピア色の喫茶店。
そこには老若男女問わず悩み、迷う者が訪れる場所。
中では綺麗な栗色の髪を後ろで一つに纏め
メイドとウエイトレスの中間のような服を着た娘がテーブルを拭いていた。
店の中は娘ともう一人、銀色の髪を持つ物腰の柔らかい青年がカウンターの中で
茶器を丁寧に磨いていた。
「マスター、今日は誰も来ませんね」
テーブルを拭き終えた娘が顔を上げ軽く息をつく。
マスターと呼ばれた男はゆっくりと穏やかな笑みを浮かべた。
「唯さん、そっちのテーブルまだ拭き終わってませんよね?」
唯、と呼ばれた娘は顔色を変えてそそくさとマスターに示されたテーブルへ向かう。
「…あと少ししたら一人いらっしゃいますので早く掃除を終えて
お出迎えの準備をしてくださいね」
マスターがこう言った時は必ず客がやってくる。
今まで外れた事がないのを唯は知っているので了承の返事を小さく呟き
掃除を素早く済ませる。
マスターは唯の働きを見てよりいっそう笑みを深めた。
唯が全てを終えてドアの前に立った瞬間、扉が開き来客を告げるベルが鳴った。
「ようこそ、crossへ」




