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第二話 自由と鍛冶屋

「ふっ! ふっ!」


 ぼくは「魔の力」を解放しながらも、剣を振り続ける。


「よう」

「ふっ! 師匠! また! サボり! ですか?!」

「おう。それより、精が出るな」

「はい! 強く! なりたいから!」

「そうか! じゃあ、いつも通り頼む」

「はい!」


 師匠が寝たいようなので、いつものように右手を掲げ、「暗闇魔法」を使う。


「『暗闇……魔法』!」

「……お前、左腕だけで振れるようになったのか……!」

「……はい! 実は! 片手で魔法を使うために! どちらの腕でも振れるように……!」


 ぶんぶんと剣を振るうぼく。


「そうか。魔王になるのが目標だっけか?」

「いえ! まだ! 決めてません!」


 お父さんのお仕事を継ぐのは、とりあえず修行が終わってからって決めたから、今は未定かなぁ……。


「オレは、国王になってもらおうとしてた」

「はい! ……知ってます!」


 素振りを続けていると、師匠が不満そうな顔で話しかけてくる。


「……あのさ、素振りやめてくんない!? 真面目な話するから!」

「あっ、すみません!」


 ぼくは慌てて地面に剣を置いた。


「それで、国王になってもらって、娘と結婚してもらおうかなーって」

「えっ!? まずはお付き合いしないと! というか、手も繋いでないのに急にそんな話……」

「いやウブかよ!? ……ま、いいや。カイムらしいし。ちょっと、真面目過ぎる気もするけどな」

「いや、ぼくまだ九歳ですから!」

「それもそうか。でもお前はもう、十歳の頃のオレや魔王よりも強いぞ! なんたって、オレの弟子だからな!」

「はい!」

「フレイルは元気かなぁ……」

「お父さんなら、ちゃんと育ててますよ! きっと!」

「ああ、お前を見てるとそう思うよ。あいつは変なところで真面目だからな」

「はい!」


 なんか、ちょっとだけホームシックになりそうだと思ってしまうのは、きっと「暗闇魔法」を使っているせいだろう。


「でもさ、お前は自由に生きろ。カイムが大きくなったら、きっとオレや魔王じゃ対抗できない、最強の魔導剣士になっているはずだ」

「自由に……」

「ああ。お前には、その資格がある。魔王とかオレの言うことなんて無視しちまえ! 魔王もきっと、同じことを言うはずだ」

「……実は、お父さんにも言われたことがあるんです。『お前は自由に生きろ、カイム。お前には、その資格がある。われや部下どもの言うことなんて気にするな!』って」

「そっか。……なんで?」

「えっ?」

「なんで言われたんだ?」

「えっと、師匠に憧れて、マントとか頭に輪っかを着けて、剣を持ってたら……お父さんの部下たちに……」

「ははは、そりゃあ心配になるな。オレでも止めるわ。子どもが魔王の真似してたら」

「そう、ですか……」


 やっぱりぼくって、変なのかな……?

 思わずうつむいてしまうぼく。


「でも、お前の父さんは止めなかったんだろ?」

「はい! お父さんだけは、さっき言った通り言ってくれました!」

「なら、やりたいように生きろ。オレは寝る! 素振りの邪魔したな」

「いえ、久しぶりに会話できてよかったです!」

「そっか。起きたらビシバシ行くからな!」

「はい!」


 こうして、今日もぼくは素振りを続けるのだった。


 それから、この日から師匠は素振りよりも稽古を重視するようになる。


「ふっ!」


 振り慣れているはずのぼくの剣を、師匠は軽々と受け止める。


「なんの!」


 ……そういえば、この日からだったっけ。師匠が木刀を持って稽古するようになったのは。


「ふんっ!」


 ぼくの剣が届かないギリギリの距離で、木刀を振り回す師匠。

 

「なんでぼくの剣より短いはずなのに届くんだ……!?」

「いくぞ! 次は剣で受ける練習だ!」

「は、はい!」


 カン、カンという金属音が部屋中に響く。


 師匠の剣技は独特で、

 かなり間合いがあるのに届いてしまう。

 ぼくは剣で受けるので精一杯だ。


「はっ!」

「ぐっ……!」


 師匠がじわじわと間合いを詰め、

 木刀を思いっきり振り下ろした。

 

 それをぼくは、

 力いっぱい受け止める。


「ふっ!!」


 ……すると、

 ガキンと音がして、

 ぼくの剣が折れた。

 

「いて!」

「あ、すまん! つい力が入っちまった!」

「それより、借りていた剣が折れちゃいました……! ごめんなさい……」

「いいんだよ。オレが折ったんだから」

「でも、ぼくは二年近く使ってたんで、愛着があったんですよ!」

「……はぁ、なら仕方ない。ちょっと出かけるか」

「え?」


 師匠は部屋から出ていこうとしたので、慌てて後を追うぼく。


「あの、どこへ?」

「鍛冶屋だ」

「かじや? 剣を復活させる的な……あれですか!?」

「そうだ。お前だけの剣を作ってもらうぞ!」

「はいっ!」


 鍛冶屋……! 絵本では、剣を作る場所だったけど、本当に存在したんだ!

 

 こうしてぼくは、久しぶりに城から出る。

 ぼくの心は高鳴っていた。

 なんせ、魔王城といま住んでるお城以外から、出たことがなかったからだ。


「わぁー! すごい人だかりですね!」

「それよりも、いまオレが王様だってバレたらマズいから、あんまりウロチョロすんなよ?」

「はい!」


 とは言っても、ぼくはこんなたくさんの人がいる場所は初めてだったから、少しテンションが上がってしまう。

 そして師匠は人混みに紛れ、ぼくたちは鍛冶屋へ到着した。


「よっ! 鍛冶屋の大将!」

「おう。おめぇさんが王とは、俺も年食ったなあ」

「師匠、この渋いおじさんは?」

「オレの師匠の仲間で、名前は……忘れたから、鍛冶屋の大将でいいか!」

「……オイ」

「鍛冶屋さん、お願いします!」

「この小僧、魔王のせがれなんだって?」

「おうとも! オレの後釜だ!」 

「どうも……」


 人相がちょっと怖い。

 お父さんの部下の人たちほどじゃないけど。


「ほう、いい腕っぷしだ。いい剣を作ってやるが……どんなのがいい?」

「こいつは魔導剣士になりたいらしいから、えーと……」

「なるべく相手が痛くないやつにしてください。可哀想なので」

「はっはっは、かわいい要望だな。なら、魔力強化をすればするほど、切れ味が増す剣にしてやる。どうだ?」

「おおっ! いい仕事するなぁ、頼んだぞ。大将!」

「じゃあ、王。素材に魔結晶よこせ」

「えぇー? あんなの邪魔だったから捨てちゃったよ」


 捨てちゃったのか……

 師匠って、こういうところあるよなぁ……。


「あの、魔結晶って?」

「純結晶を魔界の空気に晒したときに、初めて変化する石だ」

「……そういえば、ぼくの修行してた部屋の師匠の枕が魔結晶でしたよね! 特注のやつ!」

「ああ。ひんやりする硬いやつな! ……って、オレの枕を素材に!?」

「ダメですか?」

「はぁ……わかったよ。その代わり、出世払いな! 『ワープの呪文』!」

「……行っちゃった」

「お互い、苦労するな……」

「はぁ……」

「『ワープの呪文』! はい、大将」


 師匠は枕にしていた魔結晶を持ってきたようだ。

 それにしても、出世払いってなんだろう……?


「おお! よし、この大きさなら一晩でできるぞ!」

「よし、じゃあ帰るか! 大将、枕もついでに作っといて? じゃないと金払わないからな!」

「……相変わらず身勝手だな。わかったよ、明日の午前六時以降に来てくれ」

「おう! 『ワープの呪文』!」

「さようなら、鍛冶屋さん!」

「おうよ!」


 こうして、ワープするぼくたち。


「ふぅ、ちょっと目立ったか?」

「それより、どうして師匠は魔界にワープできないんですか!? 久しぶりに、魔王の城に遊びに行きたいです!」

「それが……敵地には行けないんだよ、この魔法。だから、数日かけて歩いて行くしかないんだよなー。魔界にワープ装置があれば別なんだけど……」

「そうですか……」


 ぼくは少しがっかりする。

 でも、万能な人はいないし、仕方ないか。

 というか剣がないのに、明日までぼくは何をしたらいいんだろう。

 そう考えていると、


「カイム。お前は訓練を積みすぎだから、しばらく休むこと! これ命令な」


 なんて言われてしまう。


「はい! 休みます!」

「それでいい。休むことで身体が回復する。回復すれば、身体も無茶に慣れていくからな!」

「つまり、休むのも訓練ってことですね!」

「そういうことだ。遊びに行ってもいいぞ?」

「いえ、本が読みたいので、お断りします」

「そうか……」


 というわけで、ぼくは書庫で「魔法学」の勉強をする。

 魔法学っていうのは、「魔法陣」を扱う学問のことだ。


「『魔法学』……適性があればできるらしいけど、読んでるだけでも楽しいなぁ」

「よう、いいか?」

「師匠!」

「『魔法学』、会得したいか?」

「いえ! ぼくの戦闘スタイルは魔導剣士ですから。魔法陣はちょっと……一応勉強はしますけど!」 

「そっか! ところで、そろそろ学校の話してもいいか? 『魔法学』の勉強してるってことは、行きたいんだろ?」

「学校は、できれば行きたいですが、ほんとにいいんですか?」

「おう。入れる予定なのは隣の国にある魔導学校だ。十三歳になったら編入してもらうつもりだから。あそこは五歳から十八歳まで入学可能だし、ちょうどいいかなって」

「はい! ぜひ、お願いします!」

「そうか。じゃあ、この話はまた今度な。それより、せっかくだし、オレもなんか読むかな!」

「『魔道具のすすめ』とか面白いですよ! 魔界でいつも読んでましたから!」

「そうか。じゃあそれでも読むか」

「はい!」

「お前って、頭もいいんだな!」

「あ、ありがとうございます!」


 こうして、剣が折れたので読書に勤しむぼくたち。

 それにしても学校かぁ……!

 ぼくは行ったこともない場所にワクワクしつつも、予習として『魔法学』を学ぶのだった。

 

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