#26:迷いを断ち切る殺意
【本日もよろしくお願いいたします!】
本日の投稿は、この#26からスタートです!どうぞよろしくお願いいたします!
朝の一言:「今日は寒そうです....それに反して、ストックは少しだけ温かくなってきました(笑)。今日も今日とて頑張りますっ!」
アリスが部屋を去り、ルークの一室は水を打ったように静まり返っていた。
アリスのあんなに気弱な姿を、ルークは初めて目にしたような気がした。
同情はしない。そう決めていたはずなのに、なんだが、自分のしていることがひどく傲慢で、愚かなことのように思えてくる。
(これでいいはずだ.....俺の目的は、リーシャを救うこと....何より、原作では俺は死ぬ運命....アリスに構っている余裕はないはずだ....)
ルークは幾度となく自分にそう言い聞かせてきた。
しかし、それと同時に、最近、”目的”がブレてきたように感じていた。
前世で、”護りたい”と思える者はいなかった。
家門は嫌いだったし、自分自身のことも嫌いだった。
本当の自分がやりたいこともわからずに、ただ家の意向に従い、生きてきた。
アリス、ブルドグ、シンシア、グッド、ロゼリア、そしてリーシャ。
この世界に転生してからは、少し、楽しかった。
好きなように、好きなことができた。
罵詈雑言を吐かれたり、粗末な食事を食べたり、そんな”些細な”嫌なことはあった。
けれど、自分のために、自分のやりたいことのために、生きることができていることがとても楽しかった。
いつしか、いろんな人と出会い、愛のありがたみを、心を置ける心地よさを、向けられる態度やかけられる言葉の端々に感じるようになっていた。
演技をしていた。そんな自分には、眩しいほどの温かさが返ってきた。
リーシャがそんなに大切なのか?リーシャが「推し」だから護りたいのか?今世は、自分のために生きればよいのではないか?
そんな思いが、最近は、特に頭をかすめるようになった。
パチン。ルークは自分の頬を軽くたたく。
答えは出なかった。
けれど、救いたいと思った人を救う。それでいい。そう、言い聞かせた。
東の通用門。
そこは王宮への食料や資材を運び込むための入り口であり、深夜には最も警備が薄くなる場所だった。
ファビウス家の老執事、ディランは、暗がりに潜みながら、必死に荒い呼吸を整えていた。
「……はぁ、はぁ……。ダリオス様……。どうか、御力をお貸しください。この『証拠』さえベンダル陛下にお届けすれば……グランジニアス家は終わりです……」
ディランの懐には、グランジニアス家の不正を暴くための録音データの入った魔石が隠されていた。
この東の通用門をくぐった今、あとは王宮に向かうだけだ....そう思った矢先だった。
「……その『証拠』、中身は確認しましたか? 」
背後から、鼓膜に直接響くような、冷徹な声がした。
ディランは、電流が走ったような衝撃を覚えた。
眼前には月光に照らされて、「無能」のルークが立っていた。
「……な、な……っ。貴様…なぜ…ここに!?」
ディランが最も驚いたのは、眼前には「無能」という言葉などおよそ似つかわしくない、圧倒的な”化け物”が立っているように見えたからである。
「どうして……どうして貴様がここに……! いや、貴様は、永遠に部屋で震えている『無能』なはず……!」
「無能、ですか。……ええ、そうかもしれませんね。貴方のような、主人の死も理解できない老いぼれを、今日まで生かしておいたのですから。それは俺が『無能』なせいだったのかもしれませんね....」
ルークが一歩、踏み出す。
その一歩で、周囲の空気が、鉄の塊のように重く、ディランにのしかかる。
「ひ、ひぃっ……! 来るな! 化け物めッ!」
ディランは腰から隠し持っていた短剣を抜き、ルークの胸元へと突き出した。
長年、ファビウス家の影として戦ってきたディランの一撃は、常人であれば回避不能の鋭さを持っていた。
パキィィィン。 硬質な音が、夜の静寂を切り裂いた。
ディランは何をされたのか、わからなかった。ただ、自分の短剣は、ルークが触れた瞬間に木っ端微塵に砕け散っていた。
「……何、を……。一体、何をしたのだ……!?」
「そう、驚くことはありませんよ.....これが、貴方が『無能』と蔑み、踏みにじってきた者の……本性だったというだけですから.....」
「……あ、ああ……。……グランジニアスの、悪魔……。貴様……。オールデン家の刺客は貴様なのか……!」
「……ええ。俺が殺しました。救いたい者がいたもので……まあ、運が悪かった....それだけの話です...さようなら...」
ルークは、自身の短剣をディランの喉元めがけてはらった。
「ゴフッ.....」
ディランは目を見開き、そのまま崩れ落ちていく。
ルークはディランの懐から魔石を取り出し、指先一つで粉々に粉砕した。
「……一人。次は北ですね」
北門へと向かうルークの足取りは、散歩でもしているかのように軽やかだった。
北門の警備はとても固かった。
それもそのはず、北門は、最も王宮に近かった。
少なくとも、一人で無事に突破するのは不可能なように思えた。
そこで、プルーはディランに援護を求めに、東門へと向かっていたのだ。
プルーは、暗殺ギルド出身で、ファビウス家では、若き精鋭などと言われて、将来の「影の鴉」を背負う中心人物の一人として、原作ゲームには登場する。
実際、物語の中盤では、「影の鴉」の副リーダーになっている。
プルーは、ルークとディランの戦いを影から見ていた。
「……おいおい、マジかよ。ディランの爺さんが一瞬で消えやがった」
ディランは強かった。それこそ、今の自分では全く歯が立たないほどに。
ルークはディランとの戦いを終えると、北門あるいは西門の方へと向かっていった。
つまり、東門は、今は、無防備だった。
王宮までは少し遠いが、不可能な距離ではない、プルーはそう思った。
しかし、何を思ったのか、ルークはこの東門に戻ってきた。
プルーは物陰からルークの姿を捉え、舌打ちした。
(こうなりゃ、先手必勝だ!)
彼は状況を瞬時に判断し、正面突破ではなく、毒矢による遠距離狙撃を選択した。
彼の使う毒は、龍の血から精製されたとても強力な麻痺毒だった。
掠るだけで、象さえも瞬く間に動けなくなる代物だった。
プルーは慎重に呼吸を整え、引き金を引いた。
無音で放たれた三本の矢が、ルークの頭部、心臓、腹部へと完璧な軌道で吸い込まれていく。
「……仕留めた」
プルーが確信したその瞬間、ルークはその場から消えていた。
「……?どうなってやがる...?」
「毒、ですか。……随分と古風な戦い方をするのですね」
声は、プルーの真後ろから聞こえた。
プルーは反射的に背後へナイフを突き出したが、そのナイフはヒュンと虚しい音を響かせて空を切った。
プルーは、突然、猛烈な痛みを覚えた。
肩をやられていた。
「騒がないでくださいね....王宮の皆さんが起きてしまいますから」
プルーは地面に叩き伏せられた。
怖い。そんな感情を初めて抱いた。
プルーは恐怖に顔を歪め、口を微かに震わせていた。
「お、前……。ルーク・グランジニアスじゃねえ……。あいつは、もっと……弱くて、みすぼらしい……。こんな、こんな化け物じゃ……!」
「……弱くて、みすぼらしい。……ええ、それが世間における俺の定義でした。……ですが、それは俺が『そう見せていた』だけだということに、死ぬ前に気づけたのは幸運でしたね...」
ルークは、不敵に笑った。
プルーは、その瞳の中に、残酷なまでの覚悟と自身の絶対的な運命を悟った。
「ひ、ひいいい……! 助けてくれ! 頼む! 何でもする! 命令されただけなんだ!」
「助けてほしい? ……オールデン家は、そう叫ぶことさえ許されなかったというのに? ……貴方たちのようなゴミが、命乞いをするなど、虫が良すぎるというものですよ....」
ルークの短剣がプルーの首を通り過ぎる。
プルーはガクッとうなだれた。
「さて、南門に向かいますか....」
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ルーク無双第二弾!!
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今の二言:「若干、ルークを書いていて、ルークつぇぇより、こぇぇと思ってしまったりもしました(笑)。 もう少し、サラッと書く予定だったんですけど、アリスのことを優先したりと、少しルークの目的に"迷い"が出ている感じにしたくて、迷いを断ち切るためにあえて"冷酷感"を出した方がいいかなと思ってこっちにしました....」
今日は、時間は未定ですが、あと何話か、投稿する予定です!
本日もお付き合いいただければ、幸いです!




