第02話: 『もう一つの選択肢』
2話 もう一つの選択肢
「貴方様には、もう一つの選択肢がございます」
天使のその言葉に、俺は思わず息をのんだ。
もう一つの選択肢――?
戸惑いと期待が入り混じる中、天使はゆっくりと告げる。
「その選択肢とは……剣と魔法のファンタジー世界への転生でございます」
剣と魔法のファンタジー世界。
俗に言う──異世界転生というやつだろう。
ぼんやりと考え事をしていると、目の前の天使は首をかしげながら、柔らかい声で尋ねてきた。
「選択肢はどうなさいますか?」
俺は腕を組み、ほんの数秒だけ考え込んだ。
そして口を開く。
「……三つ目の選択肢。剣と魔法のファンタジー世界への転生でお願いします」
その答えを聞いた瞬間、天使の翅がぱっと光を放つ。
「かしこまりました。それでは、これより転生の手続きを開始いたしますね」
彼女はどこか楽しげに微笑み、眩しい光が俺を包み込んでいった──。
気がつくと、俺は宇宙のように広大な空間へと移動していた。
星々が瞬き、足元には何もない──それなのに不思議と落ちる感覚はない。
目の前には、先ほどの天使が微笑みながら佇んでいた。
「それでは、手続きを開始いたします」
澄んだ声が広大な空間に響く。
「まず、貴方様には異世界転生ボーナスとして──スキルポイントを100万ポイント付与いたします」
「……100万?」
思わず聞き返してしまった。相場なんてわからないが、ケタ違いなのは直感で理解できた。どう考えても、これは神の手違いに対する“お詫び”に違いない。
「こちらのポイントで、転生時の姿や能力を設定していただきます」
天使は、まるで事務手続きを説明するようにさらりと言う。
俺は深呼吸してから、彼女に尋ねた。
「設定を開始してもいいか?」
天使は静かに首を縦に振り、再び微笑む。
「──はい。それでは、設定を開始いたします」
次の瞬間、目の前に眩い光のパネルが浮かび上がった。