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冒険者 サルト・ストレア

前回は討伐行くぞ!で終わった9話前編でしたね

今回は9話後編、ぜひお楽しみください!


━━━「ヒヒーン!」

 甲高い声とともに馬車が急停止する。


「おおっと!すまねえがここまでしか無理だ!」

「わかった!よし、行くぞ」


 サルトが軽快に飛び降りる。


「わかった、ここまでありがとうございました」

「あいよ」


 サルトが馬車から軽快に飛び降りる。


 サルトたちは森の方を睨む。


「なあサルト!なにか感じねえか?」

「ああ、肌がひりつくような……。シャック、やはりこわいか」

「ああそりゃな。だがそれより、信じてるんだ、相棒をな」

「フッよくそんな恥ずかしいこと言えるな」

「うるせえよ」


━━━森も深く、日も当たりにくくなってきた頃━━━


「あっわり、また引っかかった」

 シャックの背負っている武器がツタに引っかかる。


「おいそれどうにかならないのか、そのでっかい斧」

「斧じゃねえバトルアックスだ!けっこうすごいやつなんだぞこれ」

「あっそ」


 シャックが辺りを見回す。


「なあ、なんかおかしくねえか?」

「……たしかに、獣一匹すら見かけないな。警戒を解くなよシャック」

「わかってる」


 それは突然だった。


 木を一本越えた先、開けた地に奴はいた。ポツンと置かれた岩の上に、待っていたが如く。


 鷹のように鋭利で大きな前足に丸太のように太く壮観な羽毛の上半身、翼は二人の体を足しても足らないほど大きい。下半身は地を駆ける獅子のようで、サルトを飲み込めそうなほどくちばしが大きく、鋭い瞳孔がサルトたちの体を痺れさせる。


「あいつが……グリフォン!」

 サルトが剣を構える。


「油断すんじゃねぞサルト!」

 シャックもバトルアックスを構える。


 二人は負けじとグリフォンを睨み返す。


「クァァアアア……グルル……」

 低く唸るような威嚇がサルトたちの警戒を一層強める。


「……来る!」

サルトが微かに腰を落とす。


「ギァアアアァオオ!!」

 きしむ金属のように鋭い鳴き声とともにサルトに向かって走り、右の爪で切り裂こうとする。


 サルトは攻撃を剣で受け止め、それと同時にシャックがグリフォンの背後に周る。


「くっっ!」


 サルトの腕が巨岩のような重さにキシキシと音を立てる。


「はあっ!!」


 爪をなんとか左に捌き、反動で下がった首にめがけて一太刀。しかし━━━


「かたっ!」


 硬い毛によって防がれる。その時━━━


「ギュァァアアイイ!!」


 グリフォンが突然苦しみだす。


「おい!下半身が弱点だ!」


 シャックの声が響く。


「わかった」


 サルトは即座に左に潜り込み、後右脚を切りつける。


(入った!だがかたい!)


「ギュオオオアァァイイ!!」


「うし!これで両足!」


 サルトたちの目に希望が浮かんだその時━━━


「!」

「まっそりゃそうするわな……」


 グリフォンは大きな翼で羽ばたき、巨体を宙に浮かす。


 さらに大きく羽ばたくと、無数の羽を飛ばす。


 サルトはかろうじて剣で捌き、避ける。


 羽は岩を削り、木々を貫いた。


「シャック!無事か!」


 シャックは横腹を削られている。


「な、なんとかな……《大地の癒し(アースヒール)》」


 シャックの横腹が元に戻る。


 間もなく上空から鳴き声が響く。


「ギュォォオオェエイイ!!」


 耳を刺すような鳴き声とともにいくつもの竜巻が発生する。


 竜巻は木々を巻き込み、みるみるうちに成長する。


「おいおい嘘だろ、サルト!」

 シャックは巨体と自力で何とか耐えている。


「くっっぐああ!!」

(これが……Aランク!!)


 サルトは耐え切れず上空に巻き上げられる。


「サルト!!」


「ギュォォオオアアア!!」


 上空のグリフォンは急下降し、そのままシャックに左の爪で襲い掛かる。


「ぐおお!」

 シャックはかろうじて武器で受け止める。


「ぅぅうおおりゃあああ!!」


 吠えながらも、降りかかるグリフォンを右に流しそのまま一回転して━━━


「ううらあああああ!!」


 勢いのまま武器を首元に振り下ろした。


 切り落とせずとも、グリフォンをふらつかせるには十分な威力。


 グリフォンの意識が揺らぐと同時に竜巻が消滅する。


「倒すのは……俺じゃなくていい……」

 シャックは小さくつぶやいた。そして、息を吸い━━━


「いけえええサルトおおお!!!」


 空に向かって叫んだ。


━━━「フッそんな大声出さなくても聞こえてる」


 サルトは剣を振り上げる。


「ふー……」


 精神を整え、そして━━━


「《猛る魂の陽炎(プラムフレイム)》」


 刃が紫色の炎に包まれる。


 サルトは重力に任せ、グリフォンの上半身の胴体めがけて振り下ろす。


 剣の刃が肉に食い込む。


「ギィィエエエオォオオ!!!」


 炎が傷口を焼く。


「はぁぁあああああ!!」


 剣の炎が勢いを増す。


「ギュェェアアアォオオ!!」


 刃が心臓に刺さる。


「はああっ!!」


 そのまま肉を、骨を断ち割った。


「はあ……はあ……」


 サルトは剣先を地面につけ、体重を預けている。


「おっと!」


 ふらついたサルトを咄嗟に支える。


「ああすまん」

「よく……やったな……サルト」

「フッお前もな」


 サルトは体勢を戻す。


「でっこれぇどうする?俺が持とうか?」

 シャックがグリフォンに親指を指して言う。


「いや、んーまあ……二人で持つか」

「それもそうだな」

「じゃあ……んーそうだな、俺がここからこっち持つから、シャックはそっち持ってくれ」

「あいよ、よしいくぞ……せーのっ」

 サルトは切れ目から上半身側を持ち、下側をシャックに持たせた。


「なあ……俺の分多くねえか?まあいいけどよ」


━━━サルトたちは帰りに来た道を戻っていた。


「おいそっちつっかかってるぞ」

「しゃあねえだろこっちの方がでけえんだから。そっちも体とれねえように気ぃつけろよ」

「おう」


 少しの沈黙が続き、シャックが口を開く。


「ところでよ、サルト」

「あ?なんだ?」

「なんでわざわざかてえ方の上半身狙ったんだ?」

「ああ、まあ……これからの相手に弱点があるとは限らんだろ?だからまあ、けじめ狙ったってところだ。あ、前木あるぞ」

「おう。なあサルト」


 サルトたちは左に避ける。


「ん?」

「グリフォン……やばかったな」

「ああ、やばかった」

「でもよ、さすがにやばすぎなかったか?」

「んーいや?あんなもんじゃないか?」

「まあ、そんなもんか」


 サルトたちは木を抜けると正面に馬車を発見する。


「お、馬車だぞシャック!」

「ほんとじゃねえか!おーい!」

 シャックが馬車に向かって手を振ると、御者も振り返す。


「うおっ!おいシャック!」

 シャックが片手を離したことでバランスを崩す。


「おっとすまねえな。まあでもあと少しだ!」

「そうだな。あー……やっとだな」

「おう……」

 サルトたちの目にようやく安心の色が映る。



━━━「よし、いくぞ」

「だからはやくしろって」

「うるせえな!」


 シャックはいつも通りに勢いよく扉を開ける。


 バンッという音とともに酒場に光が差し込み、いつもの喧騒が聞こえてくる。


「いらっしゃいませ!ようこそ冒険者ギルドへ!ご依頼なら冒険者ギルドに……ってあなたたちは!」


 受付嬢の声で、酒場の酔客がこちらを向く。


「おおサルトにシャックじゃねえか!もう死んだのかと思ってたぜ!」

「失礼だな!おい!」

「ま、うまく逃げれたならそれでいい!冒険者はそこらの兵士と違って命あっての物種!試験なんかまた愛けりゃいいからなダハハハ!」

「いや、よしサルト」

「ああ。せーのっ」


 サルトたちは、グリフォンを持ってギルドに入る。


 ギルド内が一気に湧き上がる。


「「「うおおおお!!」」」

「あいつらやりやがった!」

「わ、わたしは信じてたわよ!」


 二人はグリフォンを持って受付に向かう。


 サルトが受付嬢に尋ねる。


「これ、解体の方にまわせばいいのか?」

「しょ、少々お待ち下さい!マスター!ギルドマスター!」

 受付嬢が叫びながら裏へ向かう。


「おい起きろギルマスゥ!!」

 裏から声がする。


「「……」」

 あまりの迫力に二人は黙る。


 戻ってくると、受付嬢ともう一人━━━


「お、お前らか」

「あなたがギルドマスター殿ですか?」

「ああそうだ、その下のがそうなんだな。じゃあ右のほうまで頼む」

「はい、お願いします。ういしょっと」

「シャック手かそうか」

「いやいい」


 シャックは右の広い解体所までもっていった。


「おおこの傷は……なるほど、これは本物……ん?おい」

 ギルドマスターが受付嬢の方を向く。


「なんでしょうか?」

「これ、Aランクの昇格試験で合ってるよな?」

「はい……それがなにか?」

「こいつ……魔石持ってるが?」

「え」

 受付嬢の気が抜け、口がポカンと開く。


「「あーどうりで」」

 サルトたちが納得するように反応した。


 ギルドマスターが2回手をたたき━━━


「まあいい。話は後でするとして」



「つ、つまり……?」

「ああ、おめでとう。お前らのパーティーのAランク昇格を認める」


「「「うおおおお!!」」」


「お前らあいつらに酒もってけ!!」

「この支部数十年ぶりのAランクパーティーだ!酒代は俺が持つ、好きに飲めお前ら!」

「フゥーギルマス太っ腹ぁー!」


 酒場の喧騒は増すばかり。


「なあサルト、あいつら俺ら無視して盛り上がってねえか」

「そうだな」


 サルトたちは、ジョッキに注がれたビールを一気に飲む。


「まあいいかハハハハハ!」

「そうだなハハハ!」




━━━━━━「フッ……」

(あの後、やばいと思ったら逃げろと、長い説教を食らったんだっけか)


「懐かしいな……」


 ウイスキーの香りとともにサルトの思い出が宙に舞う。


(今や俺も三児の父で、冒険者もやめて……あんな冒険いつ以来だ?)


「たまには……やりたいな……」



 外からノックの音がする。


 階段を駆け上がる音、部屋の扉を叩く音そして━━━


「失礼します、ご主人様。シャック様がお見えです」

「ああ、今行く」


 サルトはウイスキーのボトルを閉め、立ち上がり、廊下へと出る。


 サルトの部屋には少し減ったボトルと空になったグラス、そして静けさだけが残された。


9話後編、お読みいただきありがとうございました!

前後編通していかがでしたか?

非常に長くなってしまいましたが、お楽しみいただけたら幸いです。

今話をもって、完全に僕の話の一つの節目が終了しました。

これからもこのお話を、世界を楽しんでいただけるよう努めますので、よろしくお願いします!

是非ご感想くださればうれしいです!(質問や、こここうすればいいんじゃない?とかそういうのでも構いません!)

長くなりましたが、これからも月1~2のペースでやっていこうと思うので、長い付き合いになると思いますがよろしくお願いします!

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