ハベルの誕生日
投稿遅れました!すみません!
前話はたしか、この誕生日会に向けてのお話でしたね。
今回はその誕生日会の話です。
空いた期間で内容を覚えられてない方、そもそも読んでない方は前話から、なんなら1話から読んでいただけるともっと楽しめるかと思います!
よろしくお願いします!
━━━あれから2週間が経ち、今日で━━━
「「「「誕生日おめでとう!」」」」「「「おめでとうございます!」」」
俺が生まれて1年。
みんながこっちを向いて笑っていて、うれしい。
目の前の食べ物たちからいい匂いがたくさんしてくる。
どうやら、口元が汚れてきたようだ。
「あらぁ美味しそうねぇ!!」
いつもより高い声のカナンに━━━
「ステーキに、海鮮系に、サラダチキン!」
机に顔を近づけ、まじまじと見ているダフネ。
そして━━━
「見たことないものもあるな。これはなんだ?」
何やらいろいろ聞いてる様子のアラム。
俺もここから動けないから、うらやましい。
「はい、それは卵焼きと申しまして、今回は中に出汁を入れただし巻き玉子です」
タエが少し胸を張って、答えている。
「へーそうなんだ、あ、これってあれじゃない?」
「トンカツ…たしかワコク料理のひとつだったか」
「これ美味しいのよね〜」
3人の先にあるのは、何かゴツゴツしたお肉のようなもの。
こんなもの、見たことがない。
「お兄様…料理にも詳しいのね……」
「まあ有名所はな、行ってみたいのもあるが」
どうやら、2人も待ちきれない様子。
「じゃあみんな、冷める前に頂くわよ?」
━━━その合図で、皆が次々と料理に手をつけていく。
俺もタエがついでくれた小さなお皿で、パクパクと手を付けている。
いつもよりいろんな味があって、おいしい。
「あら、だし巻き玉子美味しいわね、ハベルも食べやすそうだわ」
カナンが食べている黄色いものから、薄茶色の何かが溢れている。
この中では地味だが、とてもおいしそう。
「このトンカツもすごいサクサクしてる!」
ダフネの口がテカテカしている。
口周りのポロポロもおいしそう。
「お父様このステーキいつもと違いますね、どこで買ったんですか?」
「まあ遠くでな。買ったというか、狩ったというか」
「へー」
興味深そうに聞くアラムと、自信ありげに答えるサルト。
その先の肉は、いつもより大きくて厚い。
━━━俺もあれほど賑やかだったテーブルも、すっかり、皿だけの殺風景になっていた。
そんな頃。
「じゃあそろそろ、アレだすわよ?」
そう言ってカナンは奥のキッチンに向かう。
「奥様私が!」
「いやいいわよこれくらいやらせて」
帰ってきたカナンの手には━━━
「ケーキだ!」
大きくて、なんだか白いもの。
ふんわりとした感じで、嗅いだことがなくて、おもしろい匂いだ。
「そうよー、高かったんだからあ」
そう言いながら、8個にきれいに切り分けているカナン。
「いちごも沢山ある!」
キラキラした目のダフネ。
その目の先、真っ白な土台は、上に乗る赤い演者たちを際立たせている。
「アラムはチョコの方が好きだもんね」
「いえ、無理しなくても大丈夫です」
どこか残念そうなアラム。
そんな顔を見たカナンは、また奥に入っていく。
「だから……」
カナンはまた奥へ入ると━━━
「チョコも用意したわよ!」
カナンが、持ってきたそれは、茶色い姿が目に入るが、紫の丸がきれいさで整えている、さっきの白いやつとは少し違うもののようだ。
アラムのために持ってきたのか、笑顔を隠しきれない様子。
「おいしー!」
「ありがとうございます! でもいいんですか、こんなに?」
口を汚しながら、バクバクと食べているダフネに、心配そうな顔で少しずつ食べているアラム。
「いいんだ、ダフネとアラムの笑顔だけでお釣りが来るぐらいだ」
「そうよ〜、子供は気にせず目の前のものを食べるだけでいいのよ」
そんなアラムに応えるように、2人は笑顔を向ける。
やさしくて、透き通った笑顔だ。
「あ、ハベルはどっちが好きなんだろ?」
「じゃあ順番に━━━」
ダフネ、アラムの順でそれぞれの好きな方を俺に差し出す。
「よし」
「じゃあ」
「「どっち食べる?」」
両者ケーキを刺したフォークを差し出し、俺が食べるのを待っている。
そして、俺は━━━
「あっ両方食べちゃった!」
「ま、まあどっちも好きなんだろ、おなじくらい」
そんなこんなでケーキも食べ終わった。
なんというか、とても甘くて、食べても食べても欲しくなる味だった。
「よし、じゃあハベルのプレゼント、みんな持ってる?」
そういいながら、パンッと手を叩くカナン。
「じゃあ、まずは私から」
そういってカナンが取り出したのは一冊の本。
「そ、それは……」
「魔導書……ですか」
「か、カナンそれは……」
なんというか、あまりよくないのだろうか。
みんなは、イマイチといった感じらしい。
「いや、まぁ言いたいことはわかるのよ? でもこの子達、多分気づいてたわよ?」
ダフネとアラムに目を配る。
「お、お母様たちもだったのね……」
「で、ですが……」
2人は、悪いことがばれたような顔。
「さすがに早すぎるのでは……」
「あのね、多くの人を受け入れて助ける、そんな子にハベルは育って欲しいの。でも助ける時に自分を傷つけて欲しくない、そのためには力が必要なの。わかるわよね?だから、早めに教えるに損は無いと思う、もちろん今すぐじゃないわよ?ハベルが魔法に興味を持ちやすいように今渡す、それが私がハベルにできる最大限だと思って、この魔導書を渡すわ。 まあとにかく!はい、ハベル、誕生日おめでとう!」
そういって、俺の前にその本をポンと置く。
ずしりとした感じで、なんだか見てて落ち着かない。
そのプレゼントを機に、一同に拍手が鳴る。
「じゃあ、次は私たちね!」
「お父様、お願いしたものは……」
次は、ダフネとアラムのようだ。
「ああ、ちょっと待ってろ」
サルトはそのまま部屋を出て外へ。
少し経って、玄関が開いたと思ったら、なんだか音が、ガシャガシャと。
食堂に入ってきたサルトは、2つの石を持っている。
「ほら、これだ」
その石を、バンッと前に突き出す。
「おお……」
「思ったより小さいわね、なんのやつなの?」
ペタペタと触るダフネに、まじまじと見つめているアラム。
「ドラゴンのだ。小さいのは結構加工したからだな」
「……」
なぜだか、アラムも、周りのメイドも、口をポカンと開けている。
それより、不思議な色だ。
少し濁っているような、薄く白いような。
だが、吸い込まれるみたいで、とてもきれいだ。
「いやー少々手こずったな。たまにはやっておかないとな、こういうの」
「他の部位は?」
何か腑に落ちないような声のアラム。
「何かと出費が多いからな、売った。あまり残ってないかもな」
「へぇ……これ、そんな貴重な……」
ダフネは、何やらあかりにかざしたりしている。
なにかみえるのだろうか。
「まあ、このサイズにするのもあったんだか、なにより付与した魔法がな。まあ俺も分からなかったから細かいところは省くが、魔力が魔石の限界を超えても入るようになってる」
「す、すご……そう?」
話についていけないダフネを差し置くように、サルトは話を続ける。
「あと、これ今ふたつだが……ほら」
サルトはふたつの石をあわせると、カチッと1つになった。
「まあ詳しくは俺にもわからんから置いておくが、本来ひとつの魔石に1人の魔力しか入れるのは不可能だが、この魔石は元々は2つだ。だからここには、アラムとダフネ、2人の魔力を込められる、らしい」
「「おお!!」」
「だから……」
その石を、ペッと二つに分け━━━
「このふたつは、ハベルが大きくなるまでお前たちが大事に持っておいてくれ」
「はい!」
「まかせてよお父様!」
「ああそうだ、穴はこの横についているからな」
ダフネがサルトの指の先を見ると、2つの魔石に小さな穴が貫かれているのが見える。
「これね、ありがとうお父様!」
その石を持って、ひらひらと踊っている。
「はい!じゃあ最後は、あなた?」
カナンが手を合わせながらこの場を仕切るように口を開く。
「ああ、少し待ってくれ」
サルトは廊下に向かう扉を開け、何かを取った。
それは縦長の箱のようであり、よく見ると蓋がされているようだ。
「俺が渡すのはこれだ!」
サルトが蓋を横に開ける。
「これは……剣ですか?」
その中には、キラリと光る銀色に、先はシュンと、とんがっているものが横たわっていた。
「さすがに、まだハベルには早いんじゃない?」
心配そうなカナン。
「俺もそれはわかっている。ただ、ハベルの部屋に置いておくことで目標として剣術の成長に役立つんじゃないかと思うんだ。もちろんハベルの背丈にあった剣にするための策もある。それはハベルが大きくなってから本人に伝えるつもりだ」
何を言っているのかよくわからないが、アラムが興味深そうにうなづいている。
「この剣はな、ミスリルの刃に液状にしたオリハルコンを塗ったでな。さっき言った空魔石を作って余った資金は、全てここにつぎ込んだ」
「よ、よく分からないわね」
つまらなそうにあくびをするダフネ。
「俺はあの時からハベルはとんでもない才能を秘めてると信じてる。だからこの子が大きく羽ばたくために一切手を抜きたくなかった。もちろんダフネ、アラムお前達にも期待してるんだぞ?」
「はい、ありがとうございます」
「ほんと!?ありがとう!」
急にきたのか、少しびっくりしているようだ。
「ああ!」
(それにしても、空魔石といいこの剣といい……あいつには借りができたな…。今度甘いものでもやるか)
そしてまた、カナンが手を叩いて━━━
「みんなのプレゼントができたところで、いいわね?せーの」
「「「ハベル誕生日おめでとう!!!」」」
かがやくように、まぶしくて、この時間気が付いたら終わっていた。
そんなくらいにたのしくて、おいしくて、うれしくて。
今日という日が、今までで一番いい日だろう。
7話、読んでいただきありがとうございます!
僕の話にちょっとした節目的な回となりました。
では、これからもよろしくお願いします!
もしよければ、感想・ご指摘ございましたら、是非!
じゃっ!