新たな理解者、4人の苦悩
前回は、披露宴が終わったとこでしたね。
今回はまた続きからです。よろしくお願いします!
あと、よかったら感想書いてください!
ほんとに欲しいです!ここを直したほうがいいとかそういうのもほんとに待ってます!
「はあ?! ハベルが魔法ぅ!?」
荒々しい声がサルト、休憩室の窓を揺らす。 そこにいるのはサルトとカナン、そして声の主シャック。
「ああ」
サルトの返事に頭を抱える。
「なんだ、教えるにしたら早すぎるだろ、ダフネ嬢でもアラム坊でも早いぞ。どっちも4歳で教えたんだったか?」
「ああ、それぞれの誕生日の次の日からな」
「なんでだよ」
「興味持ったから教えたんだ」
肩をすくめ、あきれたように手を額に添えるシャック。
「ったく……で、なんでハベルにも? さすがに早すぎるだろ」
「シャック、それがね? 実は教えてないのよ、誰も」
カナンの言葉にシャックの口がポカンと開く。
「……は?」
「俺たちにもほんとにわからないんだ」
しばらく腕を組み天井を見つめ、再びサルトに向き直ると━━━
「アラム坊とダフネ嬢にも言ったのか?」
「いや、さすがに言っていないが、ハベルの世話係のタエっていうメイドがいるんだが……」
「ああ、分かるぞ
「彼女には言った。大人の関係者である程度分かってから言うべきだと思ってな」
少し前のめりになるシャック。
「で、俺にも協力しろと? ったく人使いが荒いんだか信頼されてるんだか」
「まあどっちもかな」
「あなた、もう少しシャックさんに優しくしてあげてもいいんじゃないかしら?」
心配げな瞳を静止させ━━━
「いやいいんだカナンさん。まあそんなことは置いといて、俺は別にいいと思うぞ」
「というと?」
サルトは組んでいた足をほどく。
「俺たちがしっかり見守ってりゃ何も問題ないんじゃねえか? 大事なガキなんだろ?」
サルトとカナンの目が開き、光が入り込む。
「そう……だな。これからは少し時間を作れるよう、頑張るか。ありがとうシャック」
「ほんとに、いつもお世話になってるわシャックさん。今日の準備も任せちゃって、言ってくれたら手伝ったのにぃ」
2人は立ち上がると、シャックの方へと歩を進める。
「いやいいんだ、俺が言い出したんだし。俺も力になるから、なんかあったら頼めよ」
「ああ、これからもよろしく頼む」
サルトとシャックは固い握手を結んだ。
━━━━━━あれから約半年たった今日…
「お兄様!」
ダフネはアラムの部屋のドアを勢いよく開ける。
「!!」
驚いた勢いで机に膝をぶつけた。
「いっ!! ふー……なんだダフネ」
深呼吸するも少し声が震えている。
「あ、ごごめんなさい!」
慌てたように口を覆う。
「いやまあ……でなんのようなんだ」
「そうよ!再来週、なにがあるかわかる?!」
パッと咲いたような顔になるダフネ。
「アラムの誕生日だろ?」
「お、覚えてたのね……」
顔の花が雨が降ったようにしおれる。
「いやまあそりゃな、弟だしな」
その顔は少し自慢げだ。
「じゃあ、プレゼントどうするか決めてるの?」
ダフネはアラムのベッドまで跳んで、一回転したのち座る。
「考えたんだがな、プレゼントってのは相手との絆を繋ぐ、または絆を表すものだろ?そこ━━━━━━」
「細かいことはいいから!」
アラムの肩がガクッと落ち━━━
「だから、要するにだな……お前と俺で一緒のものを渡そうと思うんだ」
「私と……お兄様で?」
「ああ、でもそれを何にするか……」
親指と人差し指であごをつまむ。
「んー……あ!空魔石なんてのはどう?!」
人差し指をピンと突き立てるダフネ。
「空魔石か……」
「それを首飾りにするの!」
目を輝かせるダフネ。 対しアラムは━━━
「それ、かなり高くなるぞ?魔石の硬さは、ものによってはオリハルコンにも優ると言われてるんだぞ」
「でも……」
しょんぼりとするダフネに何度も目くばせし、ゆっくりと口を開く。
「ま、まあせっかくお前が出したんだ…一応お父様たちと話してみる」
「ありがとうお兄様!!」
━━━また、同じ悩みを抱える者は少なくはなかった……
「どうすれば……」
仕事も多いサルトは、書斎で積もる書類に囲まれながら思い悩んでいた。
書斎の扉がコンコンと鳴る。
「仕事中失礼します、ご主人様」
カラカラとメイドがひいてきた白いカートには、ふたつのポットとカップが置かれている。
「ああ、かまわん。何の用だ?」
「はい。奥様からご主人様がお仕事に集中できていないとお聞きしましたので、お飲み物をお持ちしました。紅茶とコーヒー、どちらにされますか?」
「じゃあ紅茶で頼む」
「はい、少々お待ちください」
片方のポットから紅茶が注がれる。
「ああ、ありがとう」
サルトの左上に紅茶を置いたメイドは、そそくさと出口へ向かう。
「あ、少し待ってくれ」
その足をサルトが呼び止めた。
「はい、なんでしょうか」
サルトの方に振り向き直る。
「その……えっとだな、子どもは何を貰ったら喜ぶと思う?」
「はい、サルト様への誕生日プレゼントですね」
「ああ、メイド長のお前なら何か案も出ると思うんだが」
少し困ったような顔を見せるメイド。
「こういうものは、渡す本人が考えるのがいちばんよろしいかと思うのですが」
「まあそれはそうなんだが……なにかないか?」
肘をつき、両手を握る。
「そうですねえ、お子様方との時間というのは━━━」
「……」
そっぽを向くサルト。
メイドは頬に手を当て━━━
「厳しそうですねえ、できるならされてるでしょうし」
「ほんとにな……」
向き直るや否や下にうつむく。
「まあ狩りに出られるところは少しばかり改善の余地があるようには思われますが」
「うぐっ!!」
ビクッと体が跳ね上がる。
「んー、強いて言えば……ご主人らしくて、食べ物や飲み物のようななくなるものではなく、持ち運びのしやすいようなもの……ですかねえ」
少しの沈黙が流れ━━━
「なるほど……ありがとう、助かった。もう下がっていいぞ」
「はい、では失礼します」
メイドは廊下へ出るとそっと扉を閉める。
(俺らしくて、なくならないもの……あっ!!)
━━━そしてもう1人……
(ああ、どうしよう……)
「どうしたのタエ」
「あ、メイド長。お勤めご苦労様です」
メイド長に深く頭を下げる。
降り注ぐ日差しがタエのうなじを照らす。
「そんなにかたくならなくてもいいのに。まあいいわ、なにかお困り?」
「ええ、実は……」
━━━時は遡り2週間前。それは晩御飯も終えた8時頃の出来事。
「あ、そうだ。タエ、ちょっといいかしら?」
優しい声がタエを呼び止める。
「はい奥様、なんでございましょう」
「ごめんねえ、洗い物中に」
「いえ、かまいませんよ」
タエは洗っていた皿を置き、手を拭くとカナンの方に向く。
「じつは、ちょうど来月にハベルの誕生日があってね?そのプレゼントをタエにもお願いしたいの」
思いもしない言葉でタエの目が大きく開かれる。
「え、私がですか!?ここはメイド長とかに……」
「あなた世話係でしょ?ハベルにとっては生活の支えになるあなたが渡さずして誰も渡せないわ。メイドたちの代表としてあなたは適任だと思うの」
タエはつばを飲み込む。
そしてゆっくり目をつぶり、頭を下げ━━━
「……承知しました。このタエ、全身全霊をもって選ばせていただきます」
「あら、プレゼントなんだからもっと肩の力を抜いて?」
カナンは優しく微笑みかけるが、なおタエの表情は固い。
「はい……」
━━━━「ということがありまして……」
「あなたも……」
あきれたように言うメイド長。
「?」
「いえ気にしないで。あなたはどんなものを渡したいの?」
「どんなもの…んー……」
頬に手を当て、考える。 その表情は少し暗い。
「まあ、2週間あるんだし、ゆっくり決めたら?」
「ですが…準備もあるかも知れませんし……」
慰めのような言葉も、あえなくはじかれてしまう。
「タエ?もし渡したい物がないなら、あなたがお世話するハベル様にどう育ってほしいか、そう言う思いを込めた物を渡すのもいいと思うわよ」
タエの目が明るくなる。
「どのような子に育って欲しいか……メイド長、ありがとうございます」
「参考になると嬉しいわ、それじゃお仕事頑張ろうね」
「はい、頑張ります」
━━━その日、晩御飯の時間……
「お父様、お願いがあります!」「お父様お願いがあるの!」
2つの声が重なる。
「め、珍しいな2人揃って」
その光景にサルトは少し戸惑っているようだ。
「再来週のハベルの誕生日プレゼントなんですが」
「私たち、一緒のもの渡そうと思うの!」
二人の言葉にサルトの表情が緩む。
「いいじゃないか。それで、何を渡すんだ?」
「はい、それが…く、空魔石を……」
もごもごと話すアラム。
「ああ、空魔石か」
あっさりした返答。
「いいんですか!」
「まあ、誕生日プレゼントぐらいいいんじゃないか?」
「あの、それだけではなく…これはダフネからなのですが……」
「ダフネ、なにかあるのか?」
「むぐっ! ひょっとまっ……」
ダフネが左手を突き出し、右手で胸を叩いてごくりと飲み込む。そして━━━
「ん、そうお父様! 空魔石をね、ネックレスみたいにしたいの!」
「なるほど…首掛けか……」
サルトは顎をつまみ、黙り込む。
「おねがいお父様!」
手を顔の前で合わせる。
「わかっ…た、まあ宛がないわけじゃないしな」
二人の顔がパっとかがやく。
「ほ、ほんと!? ありがとうお父様!」
「ありがとうございます!」
「ふふっ」
カナンが優しく笑った。
━━━晩御飯も終わり、夜も深く12時頃。少し冷え込む中、1人外に出て、ある場所へ向かう。
そこはストレア家の敷地内でありながら、知るものは限られた場所。
ノックの音が暗夜に鳴り響く。
「すまんちょっといいか」
木目が目立つドアに話すサルト。
「サルトか、ちょっと待ってろ」
奥から煙のように渋い声が聞こえる。
ガチャガチャと物音が鳴った後、コツコツと歩く音がサルトに近づき、扉が開いた。
「なんだ、こんな時間に。まあいつものことだが」
顔は夜の暗さに包まれ、よく見えない。
「ああ、少し頼みがあってな━━━」
第7話、お読みいただきありがとうございます
もしかしたらほんとに好きで続けて読んでくれてる物好きな読者さんもいらっしゃるかもしれません。
ほんとにいつもありがとうございます!更新ペースは他のと比べて遅めですが、自分自身が楽しんで書くのが1番だと思いますので、ご了承いただけたら幸いです!
第8話も、めちゃ頑張るのでよろしくお願いします!
あ、改稿しました!(6/20)