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商人の町・バナンゼル

前回は、お料理回でした

結構続いてるので、まだ見てない人は3つ前くらいから見てくれた方がわかりやすいかも


もっと言えば最初からだけど

「ご主人様、そろそろ馬車へ戻られた方が」

「そうだな。みんな!馬車へ戻るぞ!」


 そう言われて、俺たちは再び乗り込む。

 窓際に来れた。

 正面にはお姉ちゃん、左の母さんにその奥に兄さん。

 母さんの向かいの少し左には父さんが座っている。


「すみません、馬車はどこにとめたらよいですか?」

「ああそれなら、門を入って左奥に進んだところに停留所がありますので、そちらで」

「ありがとうございます。では失礼」


 敬礼する2人。

 その顔にはどこかほっとした印象を感じる。


 動き出す馬車。

 門を超えた後、はっきりと変わった。


 全く揺れない。

 視界から過ぎていく建物、人々。

 何人かは俺たちを見つめている。


 すごい……俺はほんとに町に来たんだ。


「ねぇねぇハベル!どこから行く!?」

「んとね、おれは……お肉食べたい!」

「いいわね行きましょ!」


 両手を掴んで上下に振ってくる。

 首に来る。首に来るんだ。


「あらあら、元気ね2人とも」

「「うん!」」


 奥では、何やら兄さんと父さんが……

 真面目、いや暗い顔。


「まずいな、あと20日か……」

「そうですね」

「お父様、20日ってなんのこと?」

「王都までだ」


「えぇ!!そんなにかかるの!?」


 手で口を覆うお姉ちゃん。


 そんなにかかるんだ……

 明後日くらいに着くのかなって思ってたのに。

 でも、馬を無理させてまでは早く着きたくない。


「20日ねえ……私たちは大丈夫だけれど、タエとグリーナの体力が心配よねぇ……」


「ん~……しかしな……」

 顎に手を置いて足を組むお父さん。

 みんなが黙り込み、町の声と馬車の木の車輪だけが耳に入り込む。

 入り込んでは抜けていき、また別の音が耳に入る。


「我慢するしかないのかしらねぇ……」

「そうだな。こればっかりは」


 気の沈む声が中に残る。


「私たちなら我慢できるわよ!ねっハベル!」


 外の灯りのように、馬車の中をパッと照らす笑顔で俺に向く。


「うん!おれも!」


 みんな頑張ってるんだ。

 ちょっとの我慢くらいできるようにならないと。


「……」

 少しだけ微笑んで上を向く兄さん。


 丁度そんな時に、馬車が止まった。


「ご主人様ー停留所に着きましたよ!」

少し張ったグリーナさんの声。


「よし、降りるぞ」


 扉が開いて、降りていく。


 俺は先に降りたお姉ちゃんの手を掴みながら降りた。


「さあ、まずは宿を探すか」


 それよりもお腹が空いた。

 何か食べたい。


「ハベルお腹空いた?」

「うん」

「お父様ハベルお腹空いたってー!」

「そうだな……夕食付けられればつけるか」


 俺たちは大きな通りにまっすぐの道を進んでいく。

 真ん中は馬車が通るから、歩いちゃダメなはず。

 出ないようにしないと。



───そんなこんな歩いていたら、通りに出た。

 眩しいくらいの人、人、人。

 これでもきっと、王都はもっとすごいんだろう。


 見回すだけでも、沢山のお店が見える。

 その中で、ひときわ目立つ大きな建物。


「とうさん、あれ何?」

「どれだ?」


 そういって指さす方に顔を向ける。


 それはまるで型にとられたように真四角で、他のどの建物よりも縦に長い。

 ぽつぽつとくりぬかれたような凹みには透明な窓がついていて、1階の透き通った先には襟の整った人たちがせっせと動いている。

 少しダサくまで見えるけど……どことなく奇麗な、不思議な雰囲気を放っていて、吸い寄せられるように目が離せない。


「ホテルだな。少し高いが……あそこにするか?」

「そうねえ、他の宿も人多いでしょうしいいんじゃないかしら」


 ぼそぼそと呟きながら、持ち前の財布を確認する父さん。

 お金がぶつかり合う音がしばらく続いた後、頷いた。


「よし、今日はあそこに泊まっていこう」

「やったー!ホテルよハベル!」

「お姉ちゃん、ホテルってどんなところなの?」

「ホテルはね、すごくいいとこよ!」


 すごくいいとこ……すごくいいところ。

 わかった。諦めよう。


「やったー!すごくいいとこだ!」


 俺は、手を繋ぎながらホテルへ足を躍らせていった。




「すみません、今現在ですねVIPルームしか空いておらず……」

 バツの悪そうにそういう制服の人。


「そ、そうか……どうしたものか」


 俺たちの顔色を窺うように1人1人ゆっくり見つめる。


「俺は野宿でも構いませんよ」

「私も、メイドですので」

「私も大丈夫です!」

 さりげなくそう言い放った兄さんとメイドさん達。


 その言葉が、母さんの顔を赤色に染めた。


「ダメよ!これは旅行も兼ねてるの、皆で笑顔で居なくちゃ!それに女の子が外に泊まってちゃ危ないでしょ!」

 人差し指を突き出して、声を荒げる。


「そ、そうですか……」


 顔を後ろに退く兄さん。


「で、ですが私たちはメイドですし……」

「それに、大抵の輩なら全然問題ないですよ」


「そーゆー話じゃないの!泊まりなさい!すいません、1番大きい部屋をお願いします!」


 そのままの剣幕で受付に向いた。


「そ、そうですか。それでしたら……」


 苦笑いのまま紙を指で探る様になぞる。


「10人部屋と8人部屋がありますが、どうされますか?」

「10人で!」「え!?」


 母さんのその言葉に、呆気にとられたようにあほらしい声を上げた父さん。

 そのまま、財布の中をチラッと覗く。

「そ、そうですね……大銀貨2枚と銀貨5枚です」

 俺らの身なりを見回した後、躊躇うようにゆっくり言った。


 大きくため息をつき、銀色の大きいお金3つを取り出して優しく置く。

 目を丸くした後、素早く手に取り小さな銀のお金を5枚父さんの手に渡した。


「お釣りの、銀貨5枚です。お荷物お持ちしますが、どうされますか?」


 さっきとはずいぶん変わって、お手本みたいな笑顔を僕たちに向ける男の人。

 口を開こうとする父さんを、兄さんが割って入った。


「いや、それなら俺のに入れてあるので、大丈夫です」

「そうでございますか。では、案内しますので、少々お待ちください」


 小走りで奥へと消えていった。


 空間収納(アイテムボックス)、家を出る前に兄さんが俺たちの荷物を預かってくれた。

 魔法で作られた特別な空間に物をしまう、魔法技術(まほうぎじゅつ)のひとつ……だっけ。

 勉強したのは先月だから、まだちょっと怪しいみたいだ。

 詳しい仕組みなんか覚えられる気がしない。


 でも、皆の荷物を預かるなんて大変じゃないのかな。


「アラム、空間収納(アイテムボックス)に入れて本当に大丈夫だったのか?旅の道中の荷物もあるだろう?」

「はい、まだ余裕もあるくらいです」

「なら構わないのだけど……無理しないでね?」

「もちろんです」


 なんとなく、兄さんはすごい変わった気がする。

 背丈とかはもちろん、それよりもなかというか。

 どこが変わったのか…はよくわかんないけど、なんかすごく大人になったっていうか……


「お待たせしました」


 なんて思ってたら、少し息を切らしてさっきの人が戻ってきた。

 お手本みたいな笑顔は変わらず、さっきよりも背筋を伸ばしている。


「それでは、ご案内させていただきます」

 軽く頭を下げると、そのまま進んでいく。

 その後ろをついていくと、何か上に数字、横に矢印がかかれたところに止まった。


 その矢印に軽く触れると、黄緑に光って数字が次々と光っては消える。


 そして1の文字が光ったと思ったら、目の前の切れ目が横に開いた。


「「「おー」」」


 兄さん以外の声が低く重なる。

 その先は、まるで小さな箱のような部屋。

 その壁についた鏡越しに、口の空いた俺たちが映り込んでいる。


 ゆったりした足取りで制服の人が入ると、微かに揺れて中へと手で招く。


 中に入ると一緒に扉が閉まって、右に映った数字を軽く押した。


“15”の文字が光ってから、下から押し上げられるような感じが俺の体を襲った───と思ったら、すぐに消えた。


「ハベル、エレベーターよエレベーター!」

「えれべーたー……」


 握っている手が前後に揺れる。


「すごいわよねえ、ほんとにどうなってるのかしら」

「まさかマシンガルの技術がここまで普及してるとは……」

 感心したようにつぶやく母さんと兄さん。

 兄さんはまた難しそうな顔をしている。

 こういうところは昔っから変わらないな。


 そして、えれべーたーは次第に遅くなる。

 ふわりとした感じの後、すっかり止まって壁が二つに割れる。


 廊下。赤のじゅうたんが敷かれていて、暗くも明るくもない丁度落ち着くくらいの灯りたちが灯っている。

 そこを少し足早に歩いて、“1512”の文字が黄金(こがね)に輝く看板の前で止まった。


 目の前にはノブにまで彫刻がされた扉。

 何とも言えない威圧感。それが胸をときめかせている。


 制服の人は、ポケットから鍵を取り出してノブの鍵穴に刺して捻り、扉を開けた。


「こちらが、今夜止まって頂くVIPルームになります。こちらオートロックとなっておりますので外に出られる際はこちらの鍵をお持ちください」

 そういって、さっきの鍵が父さんの手に渡る。


「案内感謝する」

「何かございましたら、部屋にございます電話か受付までお願いします」


 お辞儀をしてそのままどこかに消えていった。


 部屋は白に囲まれた廊下が続いていて、その奥と左右に二つづつ扉がついている。


 俺たちはそのまま奥へと進んでいく。

 すると───


「ああぁぁ……」

広々とした部屋、外の景色がそのまま見えるガラスの壁。


 声を漏らした、引き出してきたのはその景色。


 まるで、満天の星たちを移したみたいに輝いているさっきまでいた世界。

 それをコップみたいに囲っている壁の向こうまですっかり見える。


 口が開いて閉まらない。


 薄く映り込んでいるお姉ちゃんも、満天の星たちを見て同じ顔をしていた。



◇◇◇



 星々。

 人々がそう呼ぶのは、遠く彼方に光り輝く恒星である。

 輝き、夢を映すかのようにただそこにあり続ける。


 しかし、暗闇は深く広い。

 中には、光ることのない星も存在する。


「あ、あれは……」


 すぐそばにあるはずなのに、闇に紛れる星々。

 それらを、光もしないもの彼たちを人々は目にすることはできない。


「あの、ガキどもは……」


 目にすることはない。


「今度こそ……切り殺してやるからな」


……はずだった。


続く!

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