メイド長特製・鳥の照り焼きサンド!
今日もよろすく!
「……ふう」
私はメイド長。
ご主人様たちは、現在旅行……ないしお出かけ中。
つまり───
(暇!)
書類の手伝いもない。
部屋の掃除も、週に1回やればよい方だろう。
そう、することと言えば本家の奥に構えたメイド寮で、優雅に紅茶をすすることくらい。
「……」
果てしなく広がる森。
それらを囲む雄大な山脈。
もう15年くらい住んでいるけれど、素晴らしい景色だ。
そして、いつになく静か。
鍔ぜり合いの音も、誰かが壁に激突する音もしない。
魔法の稽古の時のダフネ様のでっっっかいの欠片、普通見ることないくらいでかい氷柱が飛んでくることもない。
平和だ。すごく平和。
「……私も、もうすぐ30かぁ」
とりあえず、窓でも拭きに行こう。
◇
結局、30分でほとんど拭き終えてしまった。
残ったのはこの窓だけ。
何か、いつもはできないことしたいな。
「あれ?メイド長?」
階段から、ライラがこっちを覗いている。
「あらライラ。おはよう」
「はい、おはようございます」
この屋敷の留守を任された私たち。
ライラも、怠けず来てたみたいだ。
「見張りに来たの?」
「はい。どうせ暇ですし、油断はできません」
そう、男爵とて貴族。それに色々あるけど男爵の中じゃ割かし有名。
警戒して損はないはず。
とはいえ、真昼間から来るわけもなし。
何か一緒に暇を潰したいけれど……
「そういえば、もうお昼ね。お腹空いてない?」
「空いてます!」
食い気味の返答に、私の指がこわばった。
もしかして、作ってほしいということなのか。
「そう。じゃあお昼にしましょうか。冷蔵庫の中次第だけれど」
「え、いいんですか!?ありがとうございます!」
中々に母性をくすぐってくる。
そうとなれば、食堂へ行ってしまおう。
───(ささ、冷蔵庫の中は───)
結構少なくなってる。
とはいえ、鶏ももが2枚。
工業国家マシンガルの魔石式冷蔵庫。
買ってよかった。
「あっこれもうすぐ切れるじゃない」
レモン果汁とニンニクおろしの賞味期限、10日後だ。
食パンも、多分そろそろ使った方が良いはず。
今日である程度使わないと。
そして野菜室は───
玉ねぎが1玉と、ニンジンとジャガイモ、そしてキャベツとレタス……
今日は玉ねぎにしよう。
「ライラー?」
テーブルの方に声を張る。
足音もなしに近づいて、不思議そうにこっちを見つめる。
「なんですか?」
「料理なんだけど、鶏の照り焼きでいいかしら?」
「はい!」
「苦手なものとかなぁい?大丈夫?」
「全然大丈夫です!」
「そう。ありがと、席についてていいわよ」
尻尾を立たせながら席へと帰る。
さっさと済ませないと。
まず玉ねぎをチャチャチャッと切って……
「いてててて……」
よし。
小さめのボウルに一旦入れて───
じゃあ鶏肉の余分な皮切って、ボウルに入れよう。
で、触って軟骨あるか……
「あっ」
取り除いて、サイコロに切ってしまおう。
「チャチャチャっと」
さっきの皮も食べやすくきって、全部同じボウルへ。
じゃあコショウと料理酒、砂糖入れて……あと片栗粉も2杯だけ。
そして、混ぜ混ぜ……
「まあ、こんなもんで」
ひとまず置いておいて、この間に食パン焼こう。
フライパンに1枚ずついれて、焼き目つけて……
「よし」
4枚焼けば十分だろう。
全部半分に切ってっと。
次は玉ねぎ。
さっきのに油敷いて、ちょっと待ってから……
「えいっ」
いい音。
そしたら塩振って、ちゃっちゃと2振りしたら放置。
「あれ?玉ねぎ混ぜないんですか?」
「うわっ!」
足音が全くないんだから。
でも───
「そうね、こっちのが水分早く出て時短なのよ。まあ心配でごちゃごちゃしちゃう気持ちもわかるんだけどね」
玉ねぎは、絶えず焼き音を立てながら少しずつ薄くなっていく。
「ホントだ、もう透明に……」
「でしょ?」
ここいらで、そろそろ鶏肉を入れよう。
「よいしょっと!」
少し重みのあるボウルを、フライパンの方へとゆする。
ピンク色をした肉塊は、小さな山を作って、焼き音を大きくした。
その山を崩すように広げていく。
きっとさっきの料理酒で冷えたんだろう。
フライパンから音がしなくなった。
ちょっとだけ火を強めて……また放置。
この間にタレも作ろう。
随分前に作ったっきりだから、詳しく覚えてないけどたしか……
「2枚分だから、醤油4みりん4酒4砂糖2レモン2だっけ……多分そうよね、じゃあ───ぽぽぽいぽいっと」
あの時は確か、お米と一緒だったし卵もあったはず。
冷蔵庫見た時卵はなかったし……
「あっそうだわ!ガーリックにすればいいのよ」
ともあれば、ニンニク2/3にショウガ1/2も入れよう。
「ぽぽいっと」
焼き始めて大体3分ってところか。そろそろ、お肉もいい頃合いのはず。
大きめの肉を裏返す。
少し薄めのきつね色。
この後コロコロするし丁度いいはず。
ともあればへらを持って全部を混ぜ混ぜ。
全体的に白くなるようにして……
そしたらタレを一気に───
「そいやっ」
適当に絡ませて……
沸騰してきた。
なら3分くらい焼いてっと。
そろそろか。
味見。
「……うん、焼けてる」
完成。
火を止めて、後はパンに乗せるだけ。
とはいえ、食べるにしてはちょっと重いかもしれない。
(適当にレタスでも乗せようから)
そしたらばちぎって乗せてその上に鶏肉をできるだけ敷き詰めて、タレをちょっとかけて挟めば───
「ライラー?できたわよ」
私は、それを乗せた皿を持ってテーブルへと向かう。
置いたと同時に顔を覗く。
目を輝かせながらよだれを垂らす。
「あの、食べていいんですか?」
「ええ、好きに食べなさい」
「いただきます!」
二つの肉球で掴み、鋭い歯でパンをえぐる。
食欲をそそるパンとレタスの音。
「おいしーです!」
「そう、よかった」
これが、母の気持ちなのね。
なんだか、とてもいい気分。
◇◇◇
大きく構えている木の門。
今は閉じてるけど、こういうのって昼は開いてるんだっけ。
こっちの馬を警戒するように、門番らしき2人が武器に手をかけている。
バレないよう、手を軽く添えるように。
目尻にしわの目立つ人と、鋭くこっちを睨む若者。
気にしないかのように近づいて、タエとグリーナが門番の2人と話を始めた。
「こんな時間に何者だ」
「私たちは、リチア村から参った、ストレア男爵のメイドです。中にいらすのは、そのストレア家当主のサルト様、奥様のカナン様、御子息のアラム様、ダフネ様、ハベル様です」
「ストレア家……ご存じですか?」
振り返って、年上の方に問いかける。
「兵士なら一度は聞く名だ。まあそれが本当ならな」
「なるほど……おい、中の者を確認させてもらう」
「かしこまりました。ご主人様───」
「いい。こっちから出向く。いくぞ」
「はい」「「はーい!」」「ええ」
俺たちは順番に降りていく。
「ハベル!はい!」
差し出された手を掴んで、危なげなく床に立った。
「ありがとうお姉ちゃん!」
「いいのよハベル~~」
「見ないうちに一層甘くなったな……」
兄さんが何かこっちを見てる。
うらやましいのかな。
「ふむ……貴様は身なりは良いが、そこの小さいのは……なんだその格好は。パジャマか?」
「(おいやめろ!)」
若い方に耳打ちしている。
すると、2人が後ろを向いて話しだして……
「(あれは本物のストレア家だ!悪いことは言わん!やめとけ!)」
「(で、でも言っても男爵ですよ?何を恐れることが───)」
年寄りの方がどんどん縮こまっていく。
まるで、こっちを向くのを怖がっているみたいに。
「(だから、やばいんだって!!“鬼人のグリオ”とか“軍雄グリオ”とか、1度は聞いたことあるだろ!)」
「(えっまさか……)」
「(そうだよあの当主がその息子!それに現当主だって、Sランクの冒険者だぞ!下手なことは言わんから、謝っとけ!)」
2人は、ゆっくりとこっちを向いて───体を折りたたむように頭と手を地面につけた。
「「すすみませんでしたー!」」
「い、いや……」
「え、ええ」
ものすごくあたふたしている父さんと母さん。
「こんな時間に来るこっちが悪いんだ。どうか頭を上げてくれ」
「そうよ?別にいいんですよ。こっちこそすみません」
「そんな……寛大なお言葉!」
「門を開けろー!」
上からチラッと人が見えたかとおもうと、ゆっくりと開いていく。
「通行料は?」
「えと、7名様なので……大銅貨7枚です」
「はい、丁度です」
(まあまあするわね……)
「「それでは、商人の町、バナンゼルへようこそ!」
豪快な音と一緒に見えてきたのは……
たくさんの明かりに照らされた、町の景色。
「「うわあぁぁ……」」
リチア村とは全然違う、人々の格好、明かり、町並みに俺とお姉ちゃんは言葉を失った。
補足
鶏の照り焼きですけど、これはガチでうまいです。
ニンニクとショウガ版でしたけど、これとは別にそれを抜いたやつもあります。
どっちのがうまいとかはないけど、ない版は卵(生か温玉)ないとちょっと酸っぱいかも
(レモンはなんか、キリートレモンの奴です、スーパーにあります。そんで、酸っぱいのちょい苦手なら1とか1.5とかでも全然うめえし、僕もたまにそうします)
表記は全部大さじです
1枚の場合は量半分にしてね(大さじ1=小さじ3)
なんで玉ねぎに塩振るの?とか
なんでゆすらない方が早く透明になるの?とかは理由あるけど長くなるので気にせずマネして、気になったらコメントしてください
あと、次の料理回の予定とか、これをレギュラーみたいにするとかそういうつもりは一切ないのでご安心を
じゃあ、次の更新は再来週かもです!
ありがとうございました!




