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メイド長特製・鳥の照り焼きサンド!

今日もよろすく!

「……ふう」


 私はメイド長。

 ご主人様たちは、現在旅行……ないしお出かけ中。

 つまり───


(暇!)


 書類の手伝いもない。

 部屋の掃除も、週に1回やればよい方だろう。


 そう、することと言えば本家の奥に構えたメイド寮で、優雅に紅茶をすすることくらい。


「……」


 果てしなく広がる森。

 それらを囲む雄大な山脈。


 もう15年くらい住んでいるけれど、素晴らしい景色だ。


 そして、いつになく静か。

 鍔ぜり合いの音も、誰かが壁に激突する音もしない。

 魔法の稽古の時のダフネ様のでっっっかいの欠片、普通見ることないくらいでかい氷柱が飛んでくることもない。


 平和だ。すごく平和。


「……私も、もうすぐ30かぁ」


 とりあえず、窓でも拭きに行こう。





 結局、30分でほとんど拭き終えてしまった。

 残ったのはこの窓だけ。


 何か、いつもはできないことしたいな。


「あれ?メイド長?」


 階段から、ライラがこっちを覗いている。


「あらライラ。おはよう」

「はい、おはようございます」


 この屋敷の留守を任された私たち。

 ライラも、怠けず来てたみたいだ。


「見張りに来たの?」

「はい。どうせ暇ですし、油断はできません」


 そう、男爵とて貴族。それに色々あるけど男爵の中じゃ割かし有名。

 警戒して損はないはず。


 とはいえ、真昼間から来るわけもなし。

 何か一緒に暇を潰したいけれど……


「そういえば、もうお昼ね。お腹空いてない?」

「空いてます!」


 食い気味の返答に、私の指がこわばった。

 もしかして、作ってほしいということなのか。


「そう。じゃあお昼にしましょうか。冷蔵庫の中次第だけれど」

「え、いいんですか!?ありがとうございます!」


 中々に母性をくすぐってくる。

 そうとなれば、食堂へ行ってしまおう。


───(ささ、冷蔵庫の中は───)


 結構少なくなってる。

 とはいえ、鶏ももが2枚。


 工業国家マシンガルの魔石式冷蔵庫。

 買ってよかった。


「あっこれもうすぐ切れるじゃない」

 レモン果汁とニンニクおろしの賞味期限、10日後だ。

 食パンも、多分そろそろ使った方が良いはず。

 今日である程度使わないと。


 そして野菜室は───


 玉ねぎが1玉と、ニンジンとジャガイモ、そしてキャベツとレタス……

 今日は玉ねぎにしよう。


「ライラー?」

 テーブルの方に声を張る。

 足音もなしに近づいて、不思議そうにこっちを見つめる。


「なんですか?」

「料理なんだけど、鶏の照り焼きでいいかしら?」

「はい!」

「苦手なものとかなぁい?大丈夫?」

「全然大丈夫です!」

「そう。ありがと、席についてていいわよ」


 尻尾を立たせながら席へと帰る。

 さっさと済ませないと。


 まず玉ねぎをチャチャチャッと切って……


「いてててて……」


 よし。

 小さめのボウルに一旦入れて───


 じゃあ鶏肉の余分な皮切って、ボウルに入れよう。

 で、触って軟骨あるか……


「あっ」

 取り除いて、サイコロに切ってしまおう。


「チャチャチャっと」


 さっきの皮も食べやすくきって、全部同じボウルへ。

 じゃあコショウと料理酒、砂糖入れて……あと片栗粉も2杯だけ。

 そして、混ぜ混ぜ……


「まあ、こんなもんで」


 ひとまず置いておいて、この間に食パン焼こう。

 フライパンに1枚ずついれて、焼き目つけて……


「よし」


 4枚焼けば十分だろう。

 全部半分に切ってっと。


 次は玉ねぎ。

 さっきのに油敷いて、ちょっと待ってから……


「えいっ」


 いい音。

 そしたら塩振って、ちゃっちゃと2振りしたら放置。


「あれ?玉ねぎ混ぜないんですか?」

「うわっ!」


 足音が全くないんだから。

 でも───


「そうね、こっちのが水分早く出て時短なのよ。まあ心配でごちゃごちゃしちゃう気持ちもわかるんだけどね」


 玉ねぎは、絶えず焼き音を立てながら少しずつ薄くなっていく。


「ホントだ、もう透明に……」

「でしょ?」


 ここいらで、そろそろ鶏肉を入れよう。


「よいしょっと!」


 少し重みのあるボウルを、フライパンの方へとゆする。

 ピンク色をした肉塊は、小さな山を作って、焼き音を大きくした。


 その山を崩すように広げていく。

 きっとさっきの料理酒で冷えたんだろう。

 フライパンから音がしなくなった。


 ちょっとだけ火を強めて……また放置。

 この間にタレも作ろう。


 随分前に作ったっきりだから、詳しく覚えてないけどたしか……


「2枚分だから、醤油4みりん4酒4砂糖2レモン2だっけ……多分そうよね、じゃあ───ぽぽぽいぽいっと」


 あの時は確か、お米と一緒だったし卵もあったはず。

 冷蔵庫見た時卵はなかったし……


「あっそうだわ!ガーリックにすればいいのよ」

 ともあれば、ニンニク2/3にショウガ1/2も入れよう。


「ぽぽいっと」


 焼き始めて大体3分ってところか。そろそろ、お肉もいい頃合いのはず。


 大きめの肉を裏返す。

 少し薄めのきつね色。

 この後コロコロするし丁度いいはず。


 ともあればへらを持って全部を混ぜ混ぜ。

 全体的に白くなるようにして……


 そしたらタレを一気に───


「そいやっ」


 適当に絡ませて……

 沸騰してきた。

 なら3分くらい焼いてっと。


 そろそろか。

 味見。


「……うん、焼けてる」


 完成。

 火を止めて、後はパンに乗せるだけ。


 とはいえ、食べるにしてはちょっと重いかもしれない。


(適当にレタスでも乗せようから)


 そしたらばちぎって乗せてその上に鶏肉をできるだけ敷き詰めて、タレをちょっとかけて挟めば───


「ライラー?できたわよ」 


 私は、それを乗せた皿を持ってテーブルへと向かう。


 置いたと同時に顔を覗く。

 目を輝かせながらよだれを垂らす。


「あの、食べていいんですか?」

「ええ、好きに食べなさい」

「いただきます!」


 二つの肉球で掴み、鋭い歯でパンをえぐる。


 食欲をそそるパンとレタスの音。


「おいしーです!」

「そう、よかった」


 これが、母の気持ちなのね。

 なんだか、とてもいい気分。



◇◇◇



 大きく構えている木の門。

 今は閉じてるけど、こういうのって昼は開いてるんだっけ。


 こっちの馬を警戒するように、門番らしき2人が武器に手をかけている。

 バレないよう、手を軽く添えるように。

 目尻にしわの目立つ人と、鋭くこっちを睨む若者。


 気にしないかのように近づいて、タエとグリーナが門番の2人と話を始めた。


「こんな時間に何者だ」

「私たちは、リチア村から参った、ストレア男爵のメイドです。中にいらすのは、そのストレア家当主のサルト様、奥様のカナン様、御子息のアラム様、ダフネ様、ハベル様です」

「ストレア家……ご存じですか?」


 振り返って、年上の方に問いかける。


「兵士なら一度は聞く名だ。まあそれが()()()()な」

「なるほど……おい、中の者を確認させてもらう」

「かしこまりました。ご主人様───」

「いい。こっちから出向く。いくぞ」


「はい」「「はーい!」」「ええ」


 俺たちは順番に降りていく。


「ハベル!はい!」


 差し出された手を掴んで、危なげなく床に立った。


「ありがとうお姉ちゃん!」

「いいのよハベル~~」

「見ないうちに一層甘くなったな……」


 兄さんが何かこっちを見てる。

 うらやましいのかな。


「ふむ……貴様は身なりは良いが、そこの小さいのは……なんだその格好は。パジャマか?」

「(おいやめろ!)」


 若い方に耳打ちしている。

 すると、2人が後ろを向いて話しだして……


「(あれは本物のストレア家だ!悪いことは言わん!やめとけ!)」

「(で、でも言っても男爵ですよ?何を恐れることが───)」


 年寄りの方がどんどん縮こまっていく。

 まるで、こっちを向くのを怖がっているみたいに。


「(だから、やばいんだって!!“鬼人のグリオ”とか“軍雄グリオ”とか、1度は聞いたことあるだろ!)」

「(えっまさか……)」

「(そうだよあの当主がその息子!それに現当主だって、Sランクの冒険者だぞ!下手なことは言わんから、謝っとけ!)」


 2人は、ゆっくりとこっちを向いて───体を折りたたむように頭と手を地面につけた。


「「すすみませんでしたー!」」


「い、いや……」

「え、ええ」


 ものすごくあたふたしている父さんと母さん。


「こんな時間に来るこっちが悪いんだ。どうか頭を上げてくれ」

「そうよ?別にいいんですよ。こっちこそすみません」

「そんな……寛大なお言葉!」

「門を開けろー!」


 上からチラッと人が見えたかとおもうと、ゆっくりと開いていく。


「通行料は?」

「えと、7名様なので……大銅貨7枚です」

「はい、丁度です」

(まあまあするわね……)


「「それでは、商人の町、バナンゼルへようこそ!」


 豪快な音と一緒に見えてきたのは……


 たくさんの明かりに照らされた、町の景色。


「「うわあぁぁ……」」


 リチア村とは全然違う、人々の格好、明かり、町並みに俺とお姉ちゃんは言葉を失った。


補足


鶏の照り焼きですけど、これはガチでうまいです。

ニンニクとショウガ版でしたけど、これとは別にそれを抜いたやつもあります。

どっちのがうまいとかはないけど、ない版は卵(生か温玉)ないとちょっと酸っぱいかも

(レモンはなんか、キリートレモンの奴です、スーパーにあります。そんで、酸っぱいのちょい苦手なら1とか1.5とかでも全然うめえし、僕もたまにそうします)


表記は全部大さじです

1枚の場合は量半分にしてね(大さじ1=小さじ3)


なんで玉ねぎに塩振るの?とか

なんでゆすらない方が早く透明になるの?とかは理由あるけど長くなるので気にせずマネして、気になったらコメントしてください


あと、次の料理回の予定とか、これをレギュラーみたいにするとかそういうつもりは一切ないのでご安心を

じゃあ、次の更新は再来週かもです!

ありがとうございました!



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