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忘れなかった1年と、再会

今週もよろしく!


 あれから11カ月の間。

 お姉ちゃんはどんどんと強くなっていった。

 剣術も、魔法も……


 そして、4月に入った日の朝。


 門が開く音が、耳に入った。


 玄関をノック。

 誰だろう……


(もしかして!)


 俺だけじゃない。

 全員が玄関へと向かう。


 扉を開けた母さん。

 その先には───


「お父様、お母様、ただいま戻りました」

「あ、アラム……」「ああ」

「おかえり!」「おかえり」


 嬉しそうに口を抑えて、涙を流す母さん。

 満足げに笑っている父さん。


「兄さーん!」「お兄様―!」「坊っちゃまー!」


 3人で、すっかり大きくなった兄さん目がけて飛び込む。


 一瞬も忘れなかった。ずっと会いたくて。

 でも、頭の中にしかいなくて……


 込み上げる。込み上げる。

 今抱き着いている俺たちは、きっと同じ顔をしている。


 それだけじゃない。

 後ろで兄さんを見つめるメイドさんたちも、鼻を擦っているカミールさんも。

 みんな、同じ気持ちなんだろう。


「色々、話したいことがあります。だから───」

 3人で顔を見上げる。


「だからその、一度どいてくれないか?」


 困った顔。でも半分嬉しそう。


「すすすすみませんでしたー!」

 勢いよくグリーナさんが頭を下げた。



 ところ変わって食堂。

 いつになく豪華なご飯を前に、俺は兄さんだけを見つめている。


「積もる話もあるだろう。さあ、ゆっくり食べながら話そう」

 嬉しそうに頬張りながら話している。


「ありがとうございます。といっても、何から話せばいいかわからないのですが」

「アラム?なんでもいいのよ。あっまずはじめにはどこに行ったの?私そこから聞きたいわ」

「そうですね、はじめは確か───」


───そこから、いろんな話を聞いた。

 兄さん、初めは恥ずかしそうに話していたけどだんだん嬉しそうになっていって……

 俺たちは、出てくる話に驚く一方だった。


 1年。

1年でここまでしたなんて、きっと頑張ったんだろう。


そして───


「ところで、冒険者ランクはどうしたんだ?もうSランクにはなったのか?」

「あ、ああそれですが……」


 覚悟を決めたような顔。

 ゆっくりと口を開いて、話し始めた。


「実は、ピーシア魔法学園に通おうと思っているのです」

「まあ、そうだろうな」

「え?」


 兄さんが珍しく、素っ頓狂な顔をしている。

 きっと、もっと驚くと思っていたんだろう。


「そういうと思ったわあ……」

「で、それがどう関わるんだ?」

「はい。お父様はお分かりだと思うのですが、Sランクになるとその国で謁見式をしなければならないのです。その時に自分のことも明かされることになるので、魔法学園に行くときに響いてしまうかと思いまして……」

「なるほどな。それでやめたと」

「はい。それで、お父様」


 再び顔を戻し、向き直る。


「どうか、ピーシア魔法学園に通うことを許していただけませんか」


 父さんと母さんは、互いに目を合わせ合う。

 頷き、向き直った。


「ああ、構わんぞ」「嫌よ」


「「え?」」


 母さんの顔は……いたって真面目。

 それに2人は、(たま)を抜かれたように呆然としている。。


「か、カナンいいじゃないか。どうしてダメなんだ?」

「そ、そうですよね……」


「金銭的に───」「だって寂しいもん」

 食い入るように答えた。


「え?寂しい?」

 オウム返しの兄さん。


「だって、アラムが行くって言ったら、ダフネも言うじゃない」

「私も行くー!」

「ね?そしたら、ハベルも言うじゃない。じゃあこの家には?誰も残らずに?寂しいー!」


 気持ちはわかるけど……なんというか……


「その、お金は───」

「お金の話はしてないもん。心の寂しさは、お金なんかじゃ埋まらないの!」

 体をジタバタと動かしながら、駄々をこねる。


 母さん、こういうのする人だっけ。


「まあ落ち着いて」

「落ち着けないわ!だって落ち着いたら───」



 しばらくの話し合いの後、忙しいとき以外小まめに手紙を寄越すという所で話がまとまったみたいだ。

 母さんは長い休みの時は帰る、を条件にしたそうだったけど、国が違うし移動にとてつもない時間がかかるので渋々断念されてしまった。


 そして今と言ったら……


「それで、学園へ入る前にしたいことがありまして」

「なんだ?なんでも言ってみなさい」「……」

「受験用の教材を買うのと、“適性の儀”を受けに王都に行きたいのです」

「あー」


 適性の儀……なんだっけ。


「いいと思うが、委員会に手紙を送ってからになるがいいか?」

「はい。ありがとうございます!」


 兄さんのお皿から、食材が消えている。


 あんなに話してたのに、いつの間に食べたんだろう。


「それで、この後どうするんだ?久々に剣でも見るぞ」

「いえ、カミールさんにも挨拶したら勉強をしようと思います」

「そうか」


 兄さんが旅立ったあれからのこと。

 そして、これからのこと。


 色々話し合ったこの食堂も、皿の上のように次第に幕を閉じていった。



◇◇◇



 そして───


「カミールさん。いいですか」


 俺は、この古びた扉を鳴らす。


「おう入れよ」


 ドアノブに手をかけ、開く。


 横に伸びたささくれの先には、やっぱりあの人。

 髭も生えず、背も小さい。

 しかしどことなく大人な雰囲気を醸している。


 散らばっているように見えて多くのものが整えられて置かれている、窮屈さ。

 金属を打ちつける、甲高い音色。

 俺を包むような、少しだけの熱気。

 嗚呼、すべてが懐かしい。


「どうした?積もる話でもしてくれんのか?」

「それもありますけど、聞きたいことがありまして」


 槌を台に置き、こちらへと振り向く。


「おうそれより、こっちが先に聞いてもいいか?」

「はい」

「旅中よ、“あれ”どうしてたんだ?」

「ああ……」


 指しているであろうものを握りしめる。


「ずっと持っていましたよ。何せ、一番大事なものですから」

「そうか……なんつーか、ダフネもダフネだけどよ、お前も相当だな。そんで、話ってなんだ?」

「はい」


 俺は、それを次元から取り出す。

 両手で支えているのに、かなり重い。


「これなんですけど───」

「おまっ!それは!」


日曜まで毎日投稿されると思います!


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