幕間その2 そろそろ、家族の呼び方を決める時期
前回に続き、幕間です。
よろしくお願いします!
今日も色々終えて晩ご飯。
俺はグラタンを口に入れていた。
「ん~!」
食べる前に覚ましてくれたから食べやすくて、とてもおいしい。
「おいしいね~ハベル~!」
返事をするみたいにこっちを向いて話す隣のダフネ。
「うん!」
「私のもいる?」
「ううんだいじょうぶ!」
そんなダフネの皿は、俺よりずっと食べ進んでいる。
「あっそうそう」
カナンが思い出したように口を開く。
「そろそろハベルも、私たちの呼び方とか、悩む時期よね~」
「たしかにな、そろそろそういう時期か」
確かに、俺はみんなのことをなんて呼んでたっけ。
なんとなくでやっていたけど、こうなって考えると、何にするか迷う。
「アラムは何がいい?」
「俺は……まあなんでもいいです。無難に“兄さん”でいいんじゃないですか?」
そう言いながら、俺の方をちらちらと見る。
(あら、そう呼んでほしいのかしらっ)
なにやらカナンがにまっと笑っている。
「まあ素直じゃないわねぇ~」
「いや別にそういうわけじゃ……ただ、年上にさん付けっていうのを覚えやすいようにというか……」
カナンに指摘され、戸惑ってるようだ。
意外と見たことないかもしれない。
「もうお兄様、そう呼んでほしいならそう言ったらいいのに!」
「だ、だからそういうわけじゃない!というか、メイド含め全員さん付けにしたらどうだ?年上の呼び方を学ばせるためにも」
「たしかにな……俺はいいぞ、お父さんでも」
「私も……それでいいわね。勉強にもなるなら」
球が転がるみたいに、決まっていく。
しかし、ダフネは納得できていないみたいだ。
席をバッと立ち上がって───
「私はやだ!もっとかわいいのがいい!お母様も、それでいいの?!」
「そうねぇ……お母さんっていうのも、かわいらしくてよくなぁい?」
「そ、それもそうだけど……」
悔しそうな顔。負け気味みたいだ。
「じゃあダフネは、なんて呼ばれたいんだ?」
サルトの一言で、ダフネの表情がまた変わる。
席にドサッと座り、頭を抱えだした。
「えっと、えっと……」
しばらくの後、俺の方を向く。
そして───
「ハベル、姉ねって呼んでみて?」
「ねぇね?」
「んくー!」
そこが痛いのか、胸を抑える。
「じゃ、じゃあ…お姉ちゃんって言ってみて」
「おねえちゃん」
「あー!」
次は頭を押さえだした。
「ちょ、ちょっと考えさせて!」
急いでるように言った。
そして、ぶつぶつと唱えだす。
「(破壊力だけででいえばねぇねだけど、反抗期とかで姉貴になっちゃうかも……ここはお姉ちゃんにした方が……おねえちゃんもいいし……お姉ちゃんで行くべきね、よしっ!)
お姉ちゃんで!」
決めたみたいだ。
グラタンを頬張る。
少しだけぬるくなってしまったけど、全然おいしい。
「よし、じゃあダフネ以外さん付けでいいな」
「やったー!ハベル、お姉ちゃんってもいっかい!」
「おねーちゃん!」
「アァーー!!」
喜んでるみたいで嬉しいけど、少し怖い。
お父さんもお母さんも兄さんもグラタンを食べているけど、お姉ちゃんだけこっちを見てて食べたいのに食べずらい。
そして───
「まあ、俺を呼ぶことはもうそんなにないだろうけどな」
兄さんのそんな一言が、空気をガラッと変えた。
「……ダフネ、座って食べなさい」
冷たい声、暗い顔。
お父さんがこんな声を出したのは初めてだ。
「……」
お母さんも何も言わない。
俯いたままスプーンを動かすだけ。
「……わかった」
お姉ちゃんも急に静かになって、座り次第食べ始めた。
きっと、皆と同じ気持ちなんだろう。
俺だけ。俺一人だけが何もわからずにキョロキョロしている。
必死に考える。
しかし答えは出ない。
あきらめて俺は、少し冷めたグラタンを食べ始めるのだった。




