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ハベル、生まれる

はじめまして。この話はほんとにゆっくり進みますので、雰囲気を感じ取りやすいように工夫していきます。こういった行為は初めてで普段読書もしませんのでおかしな点がございましたらご指摘いただけると幸いです。

 初めて見た空は、木の色をしていた。

 目の前には大きな人がこっちを見てニコッとしている。


「奥様!見てください、元気な男の子ですよ!」

 少し離れたところにいる女性がこっちに近づく。


 ゆっくりと持ち上げられ、寝そべる人に渡される。


「ええそうね。ふふ、私似かしらね」

 いいにおいがする。

 ポカポカするような、そんなにおい。

 

「それで、お名前はどうされるのですか?」

「言ってなかったけど、もうずっと前から決めてたの。それはね━━━」


 遮るみたいに扉が開く。

 ドキッと中から何か、飛び出そうになった。


「カナン!」

 開く音に負けないくらい大きな声。


「あらあなた、おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

 抱いてる人より大きく、低い声。

 でもどこか落ち着くような。


「ご主人様、おかえりなさいませ」

 きれいに頭を下げる。


「ああ」


 それに間もなく、奥から二つの影が近づく。

 ここにいる人たちよりかなり小さい。


「お母様!産まれたって本当!?」

 甲高い声。


「ええ、この子よ」

 聞いてないみたいに駆け寄って、荒々しく抱き上げる。

 後ろの方がズキズキと嫌な感じ。


「やったー!弟がずっと欲しかったの!」

「おいダフネ!そんなことしたらこの子体に響くだろ!」


 奥の方から大きな声が。

 たのもしいような、すこしこわいような。


「いいじゃないお兄様ぁ…」

 さっきの人から優しく取り上げ、もといたベッドに戻してくれた。


「あらあらアラム、そんなに大きな声出したらこの子がびっくりしちゃうでしょ?」

「あ!すみません……」

 しょんぼりした顔。

 すこし胸がきゅっとなる。


「それでお母様、この子の名前はどうするの?」

 大きくて優しい顔の人と声が似ている。

 少し高いというか、俺に近い感じはあるけど。


「ええ、みんなをびっくりさせるために内緒にしてたけど、実はもうお父さんと決めてたの」

「えー!お母様もお父様もずるいよ!」

 ドンドンと音を立てるその子。

 頭に響いてちょっとだけつらい。


「ダフネ、そりゃ産んだのはお父様とお母様なんだから、当然だろう」

「それはそうだけど…」


 この部屋が少し、重くなったような気が。


 しかし、それを断ち切るように━━━


「こらアラム、女の子には優しくしないとダメよ?」

「な、なんでですかお母様」

「それはね、アラムが大人になった時に面倒なことにならないようにするためよ。まあ、兄妹だからそんなことにはならないだろうけど」

 ゆっくりと言っているけど、どこか力強い。

 でもやさしい感じは抜けていない声。


 そして、先程まで黙っていた父が口を開いた。


「カ、カナン?子供のうちからそんなこと覚えさせなくても…」

 でも、さっきとは違って弱々しい。


「あらあなた?こういうのは早めに覚えておくに限るわ、困ってからじゃ遅いもの」

「で、でも……」

 また重くなった空気を切り裂いたのはメイドだった。


「奥様、ご主人様。子供に親の言い争いを見せるのは教育上、宜しくないかと」

 淡々としている。

 すこしこわいぐらい。


「な、ならこうしよう!アラム、相手が男の子だろうが女の子だろうが、人には優しくするんだぞ?なぜかは分かるな?」

「は、はい!もちろんです。自分がそうされたいことをするべきだとこの前お父様から教わりました!」

「よし、お父さんとの約束だぞ?」

「はい!」


 あたたかい空気に戻ったようだ。

 そう思うと、自然と口が上がってしまう。


 すると、俺をみていたダフネが口を開いた。


「ねえお母様!今この子、ちょっと笑ったよ!」


 皆が俺を見つめる。

 みんなが近づいてきて少し暑いけど、嫌じゃない。


「ふふ、きっと優しい子になるわね」

「ところでお母様、この子はなんて言うの!早く教えて!」

「そうですよ、早く教えてください!」


 グングンと近寄るような声。


「ええそれはね、あなた?」

「ああ、この子がみなを受け入れ、助ける優しくてつよい子になるように、ある花の名前から取ったんだ。この子の名前は━━━━━」


「「ハベル!!」」



 俺が生まれてから、3ヶ月がたった。今は昼下がり。


「…!!」

 出された離乳食の熱さに、体が飛び跳ねる。

 そして勝手に溢れる涙と声。


「ハベル坊っちゃま!すみません、ふーふーしますね」


 再び味わうとちょうどいい温かさで、とてもおいしい。


 そんな中、アラムが口を開く。


「ハベル、こんなので泣いてたらストレア家は務まらないぞ!」

 いつもの大きな声。

 もちろん嫌ではない。


「お兄様知らないの?子供が泣くのが仕事なのよ?」

 からかうように言うダフネ。


「そうよアラム。それにあなたもまだ6歳なんだから、そういうことは気にしなくていいの」

「ですが……」

 がっかりと肩を落とす。

 悲しさに包まれた小さな顔。


 カナンは落ち込むアラムをなだめるように続けた。


「それにね?お父さんとお母さんは、みんながすきに笑って好きに泣ける、そんな街にしていこうと思ってるの。そこにはアラムも、ハベルもダフネもお父さんもお母さんも入ってるの。だから、ハベルにも優しくしてくれるかしら?」


 なにか納得したような表情のアラム。


「はい!」

「ふふ、分かってくれて嬉しいわ」


 いつもの、ポカポカした空気。

 俺はこれが好きだ。


━━━そして離乳食を食べ終え、部屋に戻ってベビーベッドに寝かされた俺は、なんとか寝まいとふんばっている。両脇で、なにやらメイドとカナンが話をしているようだ。


「ありがとうタエ、でも少し休みなさい?」

 カナンが優しく問いただす。


 そんなタエの目の下は、すこし黒ずんでいる。

 少し、心配だ。


「ですが私はバベル坊っちゃまの世話係として━━━」

「私にも、この子のお母さんとしての仕事をさせて欲しいの。それにあなたもストレア家の大事な家族だと思ってるわ。だから、ね?」

 優しそうな顔。

 でもカナンも少し疲れているような気が。


「奥様……承知しました。ではお願いします」

 メイドのタエは部屋を後にした。

 その背中は、どこか寂しそう。


「まったく、あの子少し真面目すぎるのよねー、ねえハベルー?」

 カナンが俺の頭をなでる。

 なんだか中から溶けていくような、そんなぬくもり。


 そんな気持ちになりながら、俺の目はどんどんと黒に変わっていった。



━━━目が覚めた時には、いつものベッドで寝ている。

 だけど、周りはどこまでも白い。


 不思議と、見たことがないはずなのに、どこかで見たような気持ち。


 奥の方をよく見ると、知らないものがたくさん置かれていて、それらをおもちゃのように叩き、振り回す者がいた。


 その人は、男か女かわからない中性的な顔立ちに左あごのホクロとライトブルーの瞳が目を引き、女性にしては短い白髪は、ここから生まれたかのように透き通っていた。


「ん?」

 彼が、俺の方に近づいてくる。


「あ、もう来たんだ。やっぱ赤ちゃんってのは可愛いねえ〜」

 俺を撫でる手の感触は柔らかいのに、奥の方に芯のような硬さがある、そんな感じ。


「ん〜でも、僕もまだそっち見れんし…まあ、パスぐらいは繋いでもいいかな?ごめんね、ちょっと痛いかも」


 彼の手から俺の中に何かが流れ込んでくる。

 それは異質で、重くも感じるがとても頼もしい、よくわからないというのが一番合ってる気も。


「じゃあ君の、えっとたしか…ハベルだっけ?」

 名前を呼ばれた俺は、返事をするように手を伸ばす。


「お、合ってるっぽいねえさすが僕!まあいいや、ハベルの分も貰うね」

 俺の中から何かが彼に流れ込むような感覚がする。

 抜け落ちるみたいな、そんな感覚。


「ごめんね、僕のはもしかしたらちょっと変な感じするかもだけど起きたら無くなってると思うよ」


 彼が告げるのを機に、俺はまた眠気に誘われる。

 なんとなく、また会える、そんな気がした。


「あ、ちょうど時間か。じゃあ僕が君に干渉できるまでもうちょっとかかりそうだから、そしたら次はこっちから呼ぶね。その時は多分君も話せるくらいになってると思うから、よろしくね━━━━━━」


これからもこういう雰囲気で進めていくので、これからよろしくお願いします。

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