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3/7

あるあるな展開ですねー

「つまり、闇属性の魔法を宿した女がクリス様のお側に侍るなんて間違ってるのよ」


「…はぁ」


「とはいえ貴女の技術が欲しいのも事実。だから貴女がクリス様の妃となることは認めます」


「…どうも?」


「けれど、その後わたくしが第二妃として…側妃として嫁ぎます。貴女はどうぞ国のために尽くしなさい。わたくしはクリス様のために尽くして、子を成しクリス様を幸せにしますわ」


押しの強い女だなぁ、とアザレアは心の中でため息をつく。


どうも同盟国の公爵令嬢でクリザンテーモの幼馴染らしいその女は、彼に嫁ぐ気満々らしい。


だが、それもいいかもしれないとアザレアは思う。


このままいくと、クリザンテーモに恋してしまいそうだからだ。


あの男はアザレアに真っ直ぐすぎる愛を捧げてくるから、ころっと落ちてしまいそうだった。


「…いいんじゃないでしょうか」


「え」


「私は仕事に生きて、クリザンテーモ殿下を支えるのはカレンドゥラ様。うん、バランス良いのでは?」


うんうん頷くアザレアに、カレンドゥラは瞬きをする。


「あら…?クリス様に愛されて調子に乗ってると聞いていたんですけれど、案外と聞き分けの良い…?」


「それよりカレンドゥラ様。よろしければこちらを」


「え?」


カレンドゥラはアザレアにいきなり装飾品をプレゼントされ戸惑う。


「な、なんですのこれ」


「たった今闇魔法で生み出した装飾品です。もちろん私のデザインですよ」


「!?」


それはどこからどう見ても完璧なピンクダイヤモンドを使ったセンスの良いブレスレットで。


「あ、貴女こんなものまで創造できますのっ?」


「はい。まあまあ、付けてみてください」


言われるがままにカレンドゥラはブレスレットを身につける。


可愛い。


そして質がとてもとてもいい。


「やっぱり似合う!カレンドゥラ様は(押しの強い女なのが欠点だけど)すごく可愛いから」


「…まあ」


カレンドゥラはアザレアに対して、聞いていた傲慢な闇魔法使いの女とは違い、素直で可愛いと思い直す。


「ふむ。ま、まあ…貴女なら、クリス様のお側に侍るのも認めてあげても良いですわよ」


「はい?」


「こ、これも…クリス様の従妹へのプレゼントとしてはまあまあ及第点ですしっ」


カレンドゥラはアザレアであれば本当の意味でクリスの妃となるのも悪くないと思ったらしく、素直ではない言葉を紡ぐ。


なんならアザレアが嫁いできた際には影から守り、自分が第二妃になる必要もないかなとさえ思い始めていた。


一方で、カレンドゥラと形だけでも仲良くしておこうと思ったため媚びを売りに行ったアザレアはカレンドゥラのちょろさに逆に心配になる。


そこに。


「こら、カレンドゥラ!!!」


「く、クリス様っ」


「アザレアに喧嘩を売ったら叱るぞとあれほど…あれ、険悪なムードではないね?」


「え、ええ。アザレア様が聞いていたのと違ってとても良い方でしたから」


「聞いていたのと違って?」


カレンドゥラからアザレアの祖国での評価を聞き、クリザンテーモは頭を抱えた。


「なんだそれ…噂を流したの誰だよ…」


「クリス様、わたくし、恐れ多くもわたくしのお従姉様となられるアザレア様の悪口を言ったものを片っ端から不敬罪にしようかしら」


「それはやり過ぎ。だがまあ、潰せるだけ潰してあげなよ」


「ええ。あと、アザレア様の良いお話をたくさん流してきますわ」


この素敵なプレゼントを使って、とカレンドゥラがブレスレットを見せつける。


カレンドゥラがなぜ上機嫌なのか瞬時に理解して、アザレアは案外世渡りが上手いなとクリザンテーモは笑った。


「そうかそうか。まあ、そういうことなら応援するよ。叱るのも無しにしてあげる」


「ふふ、クリス様大好きっ。あ、もちろんアザレア様も大好きでしてよ?」


「ええ…」


最初の押しの強さはなんだったんだ…と思うアザレア。


だがまあ、一悶着起きる前に解決してしまったらしい。


良かったんだか悪かったんだか、とアザレアはちょっと困ったように笑いながら結婚後の味方が増えたのは良かったかぁと思い直す。


「あ、でもクリス様。浮気はしてはいけませんわよ」


「するわけないでしょ」


「アザレア様は、わたくしが第二妃になると言っても動じなかったので浮気しても嫉妬してもらえませんわ」


「…おや」


アザレアはクリザンテーモの笑顔を見て冷や汗をかく。カレンドゥラは良いことをした、と思ったようで満足げだ。


「まあ第二妃なんて迎える気は全く無いんだけど…ちょっと、お話し合いしようか。カレンドゥラはもう帰るんだよ」


「ええ、お邪魔しましたわ」


帰るカレンドゥラは最後にリュカに一瞬だけ視線を送る。


優しげに女たらしスマイルを送るリュカに、カレンドゥラは赤面して目を逸らして帰っていった。


あー、身分違いの恋は辛かろうなぁとアザレアは微笑ましく思う。


そして目の前の男に現実に引き戻されて懇々と説教をされ、オレの愛を自覚させるという言い訳のもとたくさんの頬への口づけを受けることとなった。


終わる頃にはアザレアの心臓と脳内は限界だったが、いつも助けてくれるリュカは「今回ばかりはお嬢様が悪いですねー」と笑顔で見守るだけだった。

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