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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 99 話

「……まさか、こんなに速く片付くなんて……」


 数時間前に5人を捕まえてきたばかりだというのに、またも同じ人数を捕まえてきたエルヴィーノを見て、シオーマの町のギルド所長サブリーナは思わず呟いた。

 最近行方不明になる人間が増えたように思っていたが、まさかこんな短期間で片が付くなんて思いもよらなかったためだ。

 それを1人であっさりやり遂げたエルヴィーノに、驚くと共に感心しているようにも見える。


「敵がバラけてくれて助かったんだ」


「いや、バラけてくれたって……」


 捕まっていた家族を逃がそうと考えたエルヴィーノは、敵の拠点の中に侵入する必要がある。

 そのため、拠点の外でワザと音を立て、敵の5人を拠点の外に誘導するに成功した。

 その間に捕まっていた家族をこのギルド内に転移させ、安全を確保した後に再度拠点近くに戻ってきた。

 すると、誘拐してきた家族がいなくなっていることを察した敵の5人は、四方に分かれて捜索を開始した。

 数時間前に捕まえた5人同様、今回捕まえてきた者たちもかなりの戦闘能力の持ち主だ。

 戦闘能力の高いサブリーナなら、戦わずとも何となく分かる。

 バラけたからと言っても、そんな5人を捕まえてきて簡単そうに言うエルヴィーノに、サブリーナは若干呆れた表情で呟いた。


「装備なんかから、こいつら帝国の人間だろ?」


「あぁ……」


 エルヴィーノが捕まえてきた10人。

 その者たちが使用していた剣や防具などを見て、サブリーナが問いかける。

 大して差はないように見えるが、微妙な違いで気付いたのだろう。

 その問いに、エルヴィーノは頷きつつ返答する。


「そうか、それが分かって帝国に文句言おうにも、今は内乱状態だからな……」


「残念だがな……」


 カンリーン王国内で誘拐事件を起こしていた2組の集団。

 明らかに何者かから命を受けて行動していたように思える。

 そのことを帝国側に突き付けたくても、今は内乱状態で交渉できる状況ではない。

 そうなると、命を落とした被害者家族や関係者が浮かばれない。

 そう重い、悔しそうに呟いたサブリーナの言葉に、エルヴィーノも同意した。


「さて、あんたへの報酬だけど……」


「骨折り損のくたびれ儲けってことになるな……」


 帝国に文句を言って、少しでも賠償金を手に入れることができるなら良いのだが、現状でそれは難しい。

 そうなると、ギルドからすると充分な報酬を支払うことはできない。

 そのことを言おうとしたサブリーナの言葉を聞き終わる前に、エルヴィーノは仕方なさげに呟く。

 元々期待していなかったため、そこまで残念そうではない。


「報酬は被害者家族にでも分け与えてくれ。とはいっても、被害者数が多かったら大した助けになるか分からないがな」


 Bランクに抑えているが、冒険者としては結構な金額を稼いでいるため、今回のことで資金を得られなくても問題ない。

 それよりも、少しでも被害者家族の助けにでも助けになればと、エルヴィーノは報酬を辞退した。

 しかし、この犯人たちがどれほどの人間を手にかけているか分からない。

 その人数によっては報酬を分けたところで大した意味を成さないかもしれないため、エルヴィーノは溜め息交じりに呟く。


「大丈夫だよ。こいつらほどの実力の持ち主なら、犯罪奴隷にでもすればかなりの額になる。その代金の大半をギルドから支払うつもりだから気にしなくていい」


「フッ! それなら捕まえた甲斐があるな」


 エルヴィーノがあまり手加減しなかったため、10人はかなりの重症になっている。

 しかし、死んでいないのだから、怪我が治れば犯罪奴隷として売ることができる。

 この10人は、冒険者ならAランクに分類されるような実力の持ち主たちだ。

 それだけの実力があれば、奴隷としてかなりの金額で売ることができるだろう。

 エルヴィーノへ支払うはずだった報酬とその金額も合わせれば、多少人数が多くても被疑者家族に充分な援助ができるはずだ。

 事件を解決できたからと言って、被害者家族に何の救いもないのはエルヴィーノとしてもスッキリしないところだった。

 そのため、サブリーナの言葉を受けて、エルヴィーノは嬉しそうに呟いた。


「じゃあ、こいつらのことを頼む。この国に潜入している仲間はいないはずだから、始末に来る奴もいないとは思うが」


「……あぁ、分かった」


 命令を出した帝国の第一皇子からすれば、任務を失敗てむざむざと捕まったこいつらを口封じしようと始末したいと考えるはずだが、今は内乱中で手が出せない。

 そのため、このギルドに侵入しようとする者はいないはずだ。

 ツシャの町で奴隷化して聞き出した情報からも、この国に侵入している仲間はいないことは分かっている。

 そのことを告げ、エルヴィーノは後のことをサブリーナに任せることにした。

 サブリーナからすると、「どうやってその情報を得たんだ?」と聞きたいところだが、帝国絡みで余計なことを知ったら面倒なことに巻き込まれるかもしれない。

 そんな勘でも働いたのか、サブリーナは詳しく聞かないことにした。






「さてと、これでようやく安心して帝国に潜入できるな……」


 今回の誘拐犯たちのような奴らがいては、オルフェオに危機が及ぶ可能性がある。

 それを排除することができたエルヴィーノは、ギルドの建物から出てすぐに帝国への侵入を開始することにした。



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