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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
95/103

第 95 話

「……何者だ?」


 深夜に黒いローブに身を包み、人の家の近くでた集まっている時点で怪しいことこの上ない。

 誘拐犯ではなくとも、何かしらの犯罪を企んでいると思わしき5人組。

 その中で、一番年齢が高いと思われる男がエルヴィーノ問いかけてくる。

 年齢が高いと言っても、ローブを深く被っているため、目の皺と声で勝手に判断した感じで40代といったところだ。


「それは知らなくても良いことだ!」


「「「「「っっっ!?」」」」」


 これまで集めた情報から、二手に分かれた誘拐犯グループ内の一組がここら辺で行動していることは予想できたが、その情報だけでこの5人が犯人と決定できない。

 怪しいだけで誘拐犯ではないかもしれないが、そんなことはどうでも良い。

 捕まえて吐かせれば済むだけの話だからだ。

 そのため、余計な問答は無視し、エルヴィーノは5人との距離を一気に詰めた。


「ヌンッ!! フンッ!!」


「おごっ!!」「ごえっ!!」


 距離を詰めたエルヴィーノは、一番近い2人の鳩尾目掛けて左右の拳を打ち込んだ。

 身構えていても反応できず、腹を撃たれた2人は気を失い、前のめりに倒れて行った。

 右拳を打ち込んだ方は血を吐いているところを見ると、ちょっと力を入れすぎていただろうか。

 明らかに内臓を痛めているだろう。

 しかし、エルヴィーノはそんなこと気にすることなく次の敵へと接近をはかる。


「き、貴様っ!!」「こいつっ!!」


「ま、待てっ!!」


 仲間をやられて怒りを覚えたのか、2人の男たちが手に持つ剣でエルヴィーノに襲い掛かろうとする。

 そんな2人を40代の男が止めようとするが、その静止も手遅れ、2人のが上段に振り上げた剣は、エルヴィーノに向かって振り下ろし始めていた。


「シッ!!」


「なっ!?」「くっ!?」


 腰に差していた短剣を抜き、両手に1本ずつ持ったエルヴィーノは、脳天へと振り下ろされた2人の剣を受け止める。

 力一杯の攻撃を難なく受け止められ、2人の男は驚きの声を上げた。


「ハッ!!」


「ごっ!!」


 攻撃を防いだエルヴィーノは、すぐさま反撃に出る。

 右足を振り上げ、片方の敵の顎を蹴り上げた。

 その攻撃で脳を揺らされ、男はフラフラとした後、崩れるように倒れて動かなくなった。

 どうやら気を失ったようだ。


「くっ!!」


 一緒に仕掛けた仲間があっさりと倒され、もう片方の男は焦りの声を漏らす。

 そして、防がれた剣を一旦引き、もう一度エルヴィーノに斬りかかった。


「フンッ!」


「っ!?」


 先程の怒りに任せた大振りの攻撃とは違い、無駄を省き速度を重視したコンパクトな攻撃。

 しかし、エルヴィーノからすればまだまだ遅い。

 袈裟斬りに放ってきた攻撃を、エルヴィーノは短剣で受け流した。


「セイッ!!」


「がっ!?」


 攻撃を綺麗に受け流されたことで隙だらけになった敵に対し、エルヴィーノはミドルキックを放つ。

 それが直撃し、敵の肋骨から“バキッ!!”という音を立つ。


「シッ!!」


「っ!!」


 蹴られた腹を抑えながら俯く敵。

 気を失っていないため、エルヴィーノは更なる攻撃を放つ。

 顎先を狙ったパンチが直撃し、敵は一瞬で意識を失って倒れた。


「……残るは、……って、おい!」


 残るはリーダー格っぽい40代の男だけだ。

 他の敵と戦っている時に参戦してこなかったことから、何かたくらみでもあるのかと思っていたが、その男がいたところへ目を向けると姿がない。

 どこに隠れたのかと思って周囲を探してみたら、こちらに背を向けて走っている男の姿が見えた。

 最初に仲間の2人があっさりとやられたところを見て、エルヴィーノと自分たちの実力の違いにすぐに気が付いたのだろう。

 そのため、他の2人が攻撃を仕掛けた時に止めにかかったのかもしれない。

 それが無理だと分かった途端、仲間を見捨てて逃走を選択したのだろう。

 もう結構な距離離れている。


「逃がすかよ!」


 戦闘中に元々かけていた身体強化。

 それを更に強化するべく魔力を高める。

 高める部位は脚力。

 脚に纏う魔力を増やしたエルヴィーノは、これまで以上の速度で走り出した。


「っっっ!? 馬鹿な!!」


 後ろを振り返った男は驚きの声を上げる。

 エルヴィーノがぐんぐん距離を詰めてきたからだ。

 

「何であんな速度が出せるんだ!?」


 自分たちは帝国でもエリートの部類に入る。

 第一皇子の懐刀的な存在の部隊だからだ。

 そんな自分たちでも、手に負えないくらいの速度で動いていた相手。

 速度特化の戦闘スタイルだと男は判断した。

 しかし、いくら速くても、これだけ距離を開けば捕まえることなんて不可能だ。

 そう考えていたのに、まさか更に速度があげられるなんて思いもしていなかった。


「コントロールできる魔力量の違いだよ!」


「なっ!?」


 全速力で必死に逃げていた男。

 しかし、その頑張りもエルヴィーノ相手には無力。

 かなりの距離離れていたというのに、あっという間に追いつかれてしまった。

 そして、先程漏らした自分の疑問に返答したエルヴィーノの姿を目にした途端、強力な一撃が腹に襲い掛かり、あっという間に目の前が真っ暗に変わったのだった。


「ふ~、一丁あがりっと……」


 逃げた男の腹に深々と拳を突き刺したエルヴィーノ。

 その攻撃で男が気を失たtのを確認して、両手の埃を払うかのように叩きつつ呟く。


「さて、気を失っているのをギルドに届けて、もう片方に向かうか……」


 周辺に探知魔法を仕掛けてみても、この5人以外に怪しい人間は存在しない。

 おそらく、この5人組が帝国の第一皇子の命で動いていた者たちだろう。

 捕まえられて一安心だが、この町で密かに誘拐をおこなっているのはもう一組いる。

 そのもう一組も捕まえるために、エルヴィーノは倒れている5人を魔力を糸のようにしたものでひとまとめにして担ぎ、ギルドへと向かって走り出した。



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