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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 92 話

「……この4ヶ所だ」


「なるほど……」


 エルヴィーノが広げた地図を見て、とある個所を指して呟く頭と呼ばれていた男。

 その個所を見て、エルヴィーノは頷く。


「ここがお前らの仲間の位置か……」


 頭が指した場所。

 それはエルヴィーノが呟いたように、彼らの仲間がいる場所のことだ。


「くそっ! まさか隷属魔法まで使いこなすなんて……」


 秘匿しなければならない情報。

 それを話してしまったことに、頭は悔し気に呟く。

 頭を捕縛したエルヴィーノは、さっそく隷属魔法を発動し、仲間の情報を聞き出した。

 帝国の第一皇子の右腕となる者たちによって、このカンリーン王国の人間が何人も帰らぬ人となった。

 その指示をした第一皇子に報いを受けさせたいところだが、さすがのエルヴィーノでも多くの護衛が付いているであろう彼を仕留めに行くのは危険だ。

 それなら、第一皇子が頼りにしているであろう組織の方を潰してやろうというのがエルヴィーノの考えた。

 そうすれば、今帝国内で起こっている内乱も第二皇子派閥が優勢になる。

 第二皇子派閥が勝利すれば、第一皇子も生きてはいられない。

 遠回しに第一皇子を潰そうという考えだ。

 そのためにも、その組織が今いる位置が知りたかった。

 頭と呼ばれていたこの男を捕まえてたのも、その情報を聞き出すためだ。

 そして、隷属魔法によって無理やり聞き出した情報に、エルヴィーノは満足げだ。


「この4組はお前たちと同じ人数か?」


「……あぁ」


 頭が指したのは4ヶ所。

 つまり、4組が行動しているということだ。

 危なげなく倒すことができたが、この頭たちのような実力者が大人数いるとすれば、エルヴィーノとしても危険な目に遭うかもしれない。

 その懸念から何人で行動しているのかを聞いたら、どうやら頭たちのように10人一組として行動しているようだ。

 第一皇子の右腕として全部で50人は、若干少ないのではないかと思うが、少数精鋭の部隊なのだろう。


「この3組はここで何をしているんだ?」


 カンリーン王国内にいるもう1組は、頭たちと同じように第二皇子の子と思われる黒髪の赤ん坊を探しているのだろう。

 それ以外に、帝国内に3組いる。

 気になったエルヴィーノは、その3組が何をしているのか頭に問いかけた。


「第二皇子派閥の中でも調略できそうな人間に接触しているのだろう」


「なるほど……」


 帝国内の内乱は、第一王子派と第二王子派に分かれている。

 第二皇子派閥と言っても一枚岩ではない。

 中には、第二皇子が勝利した方が自分にとっては都合が良いからという理由で協力している者もいる。

 そう言った人間はまだ良いが、最近になって勝馬に乗ろうと第二皇子の派閥に与するようになった者は、状況次第でどちらに代わるか分かったものではない。

 第一皇子からすると、そういった人間を調略して裏切らせ、また自分たちに有利な状況に持っていこうと考えているのだろう。

 そのために、彼ら暗部を動かしているようだ。


「まぁ、まずはカンリーン王国内にいるもう一組を始末してからだな……」


 頭たちのように、カンリーン王国内にいる第二皇子の子と思われる赤ん坊を探して捕まえている者たちがいるようだ。

 被害者をこれ以上出さないためにも、その者たちを放ったまま帝国内に行くわけにはいかない。

 そのため、エルヴィーノはもう一組の部隊の対処を先にすることに決めた。


「殺せ……」


「…………」


 もう一組が動いているのは北のシオーマの町だ。

 ツシャの町のように被害情報が広まっていないのは、単純にシオーマの町が大きいからだろう。

 隣の領地なので、この町から馬車で向かうとすれば1日かかるくらいだ。

 しかし、影転移を使えるエルヴィーノからすればこの程度の距離問題ない。

 早速シオーマの町へ向かおうかと考えていたエルヴィーノに、頭が小さく呟いた。

 その呟きに、エルヴィーノは無言で頭の方へ顔を向けた。


「どうせ情報を聞き出したら殺すつもりだったのだろ?」


「……まぁな」


 この者たちは、罪のない住民たちを捕まえては殺戮してきた。

 頭が言うように、エルヴィーノの中では最初から全員生かしておくつもりなんてなかった。

 そのため、質問に対して頷きで返した。


「お前たちは罪もない者たちを殺したんだ。盗賊みたいなクズなんだし、殺されても文句はないだろ?」


「……まぁ、そうだな……」


 頭としては盗賊と同じと言われるのは納得できないが、あながち間違いではないため、反論することなくエルヴィーノの問いに頷いた。


「さて、どうやって仕留めるか……」


 この男を殺すことは決定事項。

 あとは、どうやって殺すかが問題だ。

 今回、ツシャの町で罪なき者たちを殺しただけでなく、第一皇子の命令で帝国内でも多くの人間の命を奪ってきたであろう者たちだ。

 その頭となるこの者を、あっさりと殺すだけで済まして良いものか。

 エルヴィーノの頭の中にはそんな思いが浮かんでいた。


「そもそも、隷属魔法を解除するのも面倒だしな……」


 これから影転移をする。

 隣町とはいっても、結構な魔力を消費することになる。

 エルヴィーノからすれば問題ないレベルだが、疲労を感じることは間違いない。

 死体を残して何者かによって発見され、もしも隷属魔法を使用したことを知られたら、隷属魔法を使用できるエルヴィーノに疑いがかかるかもしれない。

 そのため、エルヴィーノは頭の始末の方法を決めた。


「仲間と共に、ここで魔物に喰われろ」


「くっ……!!」


 そう命令して、エルヴィーノはその場から転移する。

 隷属魔法が解除されていない以上、頭にそれに反する行為はできない。

 そのため、エルヴィーノが消え去ってから少しして、集まってきた魔物に死体となった仲間たちと共に、骨も残さず喰われて命を落としたのだった。



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