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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 90 話

「……っ!! きっ、気を付け……」


 一瞬とはいえ呆然とする頭。

 しかし、すぐに仲間たちに警戒態勢を整えるために声を上げようとする。


「遅い!」


「ギャッ!?」


「っっっ!?」


 頭の仲間への警告が言い終わる前にエルヴィーノが動く。

 またも一番近くにいた敵に接近すると、胴を一刀のもとに斬り倒した。

 全く無駄のない動きにより、またも何もできずに仲間を倒されることになった頭は、続きの言葉を紡ぐことができなかった。


「残り4人……」


「「「「「…………っ!!」」」」」


 あっという間に3人もの人間を斬り伏せ、大量の血を撒き散らしているというのに返り血を一滴も浴びていない。

 そんなエルヴィーノの言葉に、敵の全員が息を飲み込む。


「連携して対処しろ!」


「「「「お、おうっ!」」」」


 先程の動きから、とてもではないが1対1で対応できる相手ではないため、頭は仲間に向かって指示を飛ばす。

 その指示を受けたダンをはじめとする敵たちは、エルヴィーノの攻撃を受け間違えば、動かなくなっている3人のようになる可能性が高いのだと、意を決しつつ返答した。


「…………」


「いくぞ!!」


「おうっ!!」「あぁっ!!」


 ゆっくりと歩を進め近づいてくるエルヴィーノに対し、 頭とダンを残した3人が動き出す。

 1人で相手するのが難しいなら、多数で相手にすれば良い。

 そんな思いから、3人は別々の方向からエルヴィーノに対して斬りかかった。


「ハッ!!」


“スッ!!”


「セイッ!!」


“スッ!!”


「シッ!!」


“スッ!!”


 3人の迫りくる攻撃を、エルヴィーノはまるで川を流れる水のように流麗に無言で躱す。

 そして、エルヴィーノはそのまま3人の背後へと回った。


“スッ!!”


「させるか!!」


 背後に回ったエルヴィーノは、そのまま剣を振り上げる。

 攻撃後で隙だらけの3人の背中に向かって振り下ろせば、地面に転がる死体の数が増えることは間違いないだろう。

 しかし、そうなることを阻止するようにダンが動く。


「フゥ~……」


「へ~……」


 胴目掛けて振られたダンの横薙ぎの攻撃。

 それを、エルヴィーノは大きく横っ飛びすることで回避する。

 仲間をギリギリのところで助けることに成功したダンは、安堵と緊張を解くために大きく息を吐く。

 3人とは違い、ダンは自分の動きに反応できている。

 その反応の良さに、エルヴィーノは感心したように声を上げた。


「3人でも駄目だ! 全員で行くぞ!」


「「「「了解!!」」」」


 1対1どころか、1対3でも怪しい。

 そう判断した頭は、全員で戦うべきだと判断して指示を出す。

 他の者たちも同じように思ったのだろう。

 その指示に頷きを返した。


「…………」


「「「「「ハアァ!!」」」」」


 無言で見つめるエルヴィーノに対し、5人は息を合わせて動き出す。


「「「ハッ!!」」」


「…………」


 まず3人がエルヴィーノに斬りかかる。

 先程と違い、今度は別々の方角からほぼ同時にだ。

 その攻撃を、エルヴィーノはバックステップをすることで回避する。


「フンッ!!」「シッ!!」


 エルヴィーノがバックステップすることを読んでいたのだろう。

 頭とダンが、下がってきたエルヴィーノの左右から襲い掛かった。


「フッ!!」


「っっっ!?」「ゴフッ!?」


 左右から迫りくる2人の突き。

 その突きのうち、エルヴィーノは頭の方の剣を上半身を仰け反らせることで躱し、ダンの方の剣を自身の剣で弾いて回避する。

 そして、攻撃を躱すと共に、エルヴィーノは頭の腹に右拳を打ち込んだ。


「「「頭っ!?」」」


 強烈な一撃を受け、頭は反射的に腹を抑えて俯く。

 それが、完全にエルヴィーノへの隙となる。

 そう判断したダン以外の3人が、頭を守るためにエルヴィーノに攻撃を加えようと動く。


「ニッ!!」


「「「っっっ!?」」」


 別々の角度からの同時攻撃なら、エルヴィーノでも反撃よりも回避に専念するしかないが、そうでなければ話は違う。

 頭を守るために咄嗟に動いたためだろう。

 3人の動きのタイミングは僅かにズレているため、エルヴィーノは笑みを浮かべた。

 エルヴィーノは、頭だけは生け捕りにすると言ってはいたが、それが本心とは限らない。

 捕まえた2人から、自分たちが帝国の第一皇子に関わりがある者だということは判明している。

 そのため、頭を無理して捕まえる必要などなく、皆殺しにするという可能性も考えられた。

 頭への攻撃によってその可能性が高まったために、自分たちは慌てて反応してしまった。

 その反応を生み出すためエルヴィーノの罠だったと、 エルヴィーノの笑みを見た3人は、自分たちがミスを犯したことにようやく気が付いた。


「シッ!!」


「がっ!?」「ぐっ!?」「うっ!?」


 3人の攻撃に対し、エルヴィーノは短く息を吐くと共に、それぞれにカウンターで剣を振る。

 右薙ぎ、袈裟斬り、逆袈裟と、流れるように動いたエルヴィーノの攻撃により、敵の3人は大量の血を撒き散らす。

 そして、崩れるように倒れ、3人は物言わぬ躯となった。



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