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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 87 話

「う~……」


「……何だ? 連れていけないぞ」


 家から出ようとするエルヴィーノに、セラフィーナに抱かれたオルフェオが不満気な声を上げる。

 どうやら、自分がしばらくの間家を留守にすることになると思って、抗議しているかのようだ。

 しかし、これから行う荒事に、赤ん坊のオルフェオを連れて行くわけにはいかない。

 そのため、エルヴィーノはオルフェオの抗議を却下するように告げた。


「ここでセラと一緒に留守番していてくれ」


「……う~!」


 諭すように話しつつ、エルヴィーノはオルフェオの頭を撫でる。

 それによって少しは気持ちが落ち着いたのか、オルフェオは渋々といった様子で了承の返事をした。


「じゃあ行ってくる」


「はい。行ってらっしゃい!」


「う~!」


 本当ならセラフィーナもついて行きたいところだが、オルフェオの世話をしてもらうために留守番をしてもらうことになっている。

 あまり長いこと居ると、セラフィーナまで駄々をこねるかもしれない。

 そうならないよう、オルフェオを宥めることに成功したエルヴィーノは、すぐに家を出る。

 その背中をセラフィーナとオルフェオは手を振って見送った。






「まずは……」


 家を出たエルヴィーノは、ツシャの町近くの森の中へを進入する。

 そして、ある場所へと到着すると木の陰に隠れて様子を眺めた。


「あれだな……」


 オルフェオの側にはセラフィーナと彼女の従魔のリベルタがいる。

 とは言っても、いくらセラフィーナに実力があるとしても、敵が多ければオルフェオを守り切れるか分からない。

 そのため、帝国第一王子の暗部組織を潰しに帝国内に潜入する前に、ツシャの町で誘拐をおこなっている者たちを駆除しておくべきだ。

 捕まえた2人組を奴隷化して仕入れた情報から、ツシャの町近くの森の中に拠点を作っているという話だったが、2人が言っていた場所には確かに存在していた。

 草などでカモフラージュしているようだが、木造の小屋らしきものが2つほど建てられている。

 それを発見したエルヴィーノは木の陰に隠れたまま探知を使い、建物内部の人数を探ることにした。


「6人か……、2人ほど足らないな」


 捕まえた2人組から聞き出した情報だと、10人で国境を越え、この場所に拠点を作り、ツシャの町に潜入していたという話だった。

 しかし、建物の中にいるのは6人。

 捕まえた2人を足しても、残り2人足りない。


「全員集まるまで待つか……」


 さっさと建物内に乗りこんで全員捕まえてしまいたいところだが、もしも6人を捕まえあとして、残りの2人が逃げてしまったとしたら面倒だ。

 そのため、悩ましいところだが、エルヴィーノは全員が集まるまで待つことにした。

 

「っ!?」


 残りの2人を待つことに決めたエルヴィーノ。

 その背後から突如殺気を感じ、振り返ることもなく横へと飛び退く。

 その数舜後、エルヴィーノのいた場所に剣が振り下ろされていた。


「今のを躱すか……」


 剣を振り下ろした30代後半に見える容姿をした男。

 顔には出ていないが、今の攻撃を躱されたことに戸惑っているような言葉を小さく呟いた。


「気を付けろよ。ダン」


「えぇ、気配の消し方からして只者じゃないですからね。頭」


 エルヴィーノに剣を向けたまま構えている男の背後に、40代前半と思わしき1人の男が姿を現し、30代後半の男に指示を出した。

 どうやら、立場的に上下関係があるらしく、頭と呼ばれた40代の男の方が上で、ダンと呼ばれた30代の男の方が下のようだ。


「……どうやら、気付かれていたか……」


 残りの2人。

 彼らは、捕まえた2人を加えた他の8人よりも実力が一つ抜けているのだろう。

 エルヴィーノの探知に反応してすぐさま気配を消して姿を隠し、小屋の近くに身を隠していたエルヴィーノを見つけて襲い掛かってきたようだ。


「……なかなかの気配の消し方だ。しかし、まだ甘いな……」


 気配を消し、背後を取られるまで気付けなかった。

 しかし、攻撃をしようとした瞬間に殺気が漏れていた。

 それを察知していたため、エルヴィーノとしては先ほどの攻撃を躱すことは難しくない事だった。

 その考えから、エルヴィーノはダンと呼ばれた男に上から目線で語りかけた。


「……そいつは、どうも!」


 エルヴィーノの態度が気に障ったのか、ダンはこめかみに青筋を立てて襲い掛かってきた。


「ハッ!!」


「っと!」


 高速の突進から突き。

 速度も威力もかなりのものだ。

 しかし、その攻撃をエルヴィーノは腰から抜いた剣で受け止めた。


「ハァッ!!」


「…………」


 突きを止められただけで攻撃の手を止めないダン。

 色々な角度から剣を振り、エルヴィーノに向かって剣を振り回してきた。

 その攻撃を、エルヴィーノは無言でステップを踏んで躱した。


「フンッ!!」


「…………」


 少し雑なダンの連続攻撃の中に、突如として鋭い攻撃が放たれる。

 その攻撃を、エルヴィーノはバックステップをすることで回避する。


「シッ!!」


「っ!!」


 エルヴィーノのバックステップを読んでいたように、先程ダンに頭と呼ばれていた男が剣を振り下ろしてきた。

 右後方の死角からの攻撃に対し、エルヴィーノは目を見開いた。



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