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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 81 話

「よ〜しよし」


「あ〜い♪」


 ツシャの町のギルドから指定された仮住まいに住み始めて5日。

 その仮住まいのソファーに座り、エルヴィーノは膝の上に乗せたオルフェオの遊び相手をする。

 エルヴィーノが作り出した数個のピンポン玉サイズの魔力が縦横無尽に動き回るのを見て、オルフェオは楽しそうに声を上げる。


「今日は特に変わらずか……」


「……そうですね」


 エルヴィーノたちがこの家に住んでいるのは、ただ普通に過ごしているわけではない。

 この町で起きている事件の解決のため、エルヴィーノたちは自分たちに接近してくる全ての人間を疑っている。

 しかし、事件の犯人と思わしき人間が接触してくる気配はまだない。

 今日も、もうすぐ3時だというのに怪しい者が近寄ってくる様子がないため、独り言のようにエルヴィーノは呟く。

 その呟きに、対面のソファーに座るセラフィーナが反応した。


「それより……、どうします?」


 犯人と思わしき人間は接近してきてはいないが、セラフィーナには気になっていることがある。

 そのことをエルヴィーノに問いかける。


「……あぁ、()か……」


 セラフィーナが言いたいことは分かる。

 外にいる人間の事だ。


「仕返しでも考えているのでしょうか?」


「さあな……」


 外にいる人間とは、このツシャの町の冒険者ギルドでエルヴィーノたちに絡んできて、セラフィーナにあっという間に気絶させられたガンドルフォのことだ。

 建物の影に隠れているつもりのようだが、エルヴィーノたちの探知能力ではまるわかりだ。

 住み始めて3日目から、何故か側でこの家の様子を窺っている。

 横柄な態度でこちらにちょっかいをかけてきて、返り討ちに遭ったことを恨みに思っているのではないか。

 その報復に、こちらの隙を窺っているのではないかとセラフィーナは考えているようだ。

 その可能性もあるが、ガンドルフォは一応Bランクの冒険者だ。

 セラフィーナとの実力差は、隙を突いただけで覆せないことくらい分かっていてもおかしくない。

 そのため、エルヴィーノとしてはその可能性は低いような気がしている。


「まぁ、あんな奴気にするな」


「そうですね」


 もしも、実力差が分からずに隙を窺っているのだとしたら、そんなバカなんて恐れるに値しない。

 理由が分からないので気にはなるが、現状放置でも問題ない。

 セラフィーナとしても同じような思いのため、エルヴィーノの言うように放置することにした。






◆◆◆◆◆


「「…………」」


 エルヴィーノたちが仮の家に住み始めて1週間目の夜。

 家の側に立つ2人組がコソコソと言葉を交わしている。


「おいっ! お前たちそこで何してんだ!?」


「「っっっ!?」」


 夜中に黒いローブを被ってコソコソしているなんて、明らかに怪しい人間だと予想できる。

 そんな2人組に対し、建物の影から出てきたガンドルフォが突然声をかけた。

 こんな夜中に人がいるとは思っていなかったのか、声を掛けられた2人組は驚きと共にガンドルフォへと視線を向ける。


「……お前の方こそ」


「……ここで何をしている?」


「うっ……」


 たしかに、今の自分たちは怪しいかもしれないが、それを言うならガンドルフォの方もだ。

 そのため、2人組は聞かれた問いをそのまま返した。

 そう聞かれたらどう返していいのか分からず、ガンドルフォは戸惑いの声を上げた。


「う、うるせえ! 怪しい奴らめ!!」


「チッ!」


「このバカが!」


 答えに窮したガンドルフォは、背中に背負っていた大剣を抜き、怪しい2人組に対して斬りかかる。

 そんなガンドルフォを迎え撃つように、2人組も腰に差していた剣を抜き放った。


「ヌンッ!!」


「「っ!!」」


 体躯に任せたガンドルフォの大剣による横薙ぎ攻撃。

 そのパワーから受け止めることも危険と判断した2人組は、後方に飛び退くことで回避する。


「チッ!!」


 大剣による自信のある攻撃。

 それをあっさり躱された。

 それだけでこの2人組の実力の高さを感じ取り、ガンドルフォは思わず舌打ちをする。


「力任せのバカが!」


「くらえ!」


 後退した2人組は攻撃後の隙を狙い、火魔法を放つ。


「ぐっ!」


 2人組の放った魔法は、速度重視のもので威力的には低い。

 しかし、当たれば当然痛みを生じる。

 自身に迫る攻撃のうち片方は躱したが、もう片方の魔法がガンドルフォの二の腕の部分に浅く当たった。


「くたばれ!」


「デカブツ!」


「っっっ!?」


 魔法を放ったと同時に、2人組は一気に距離を詰めてきた。

 そして、手に持つ剣で突きを放ってきた。

 それに対し、攻撃を受けた痛みにガンドルフォの反応が僅かに遅れる。


「夜中にうるさいよ!」


「「がっ!?」」


「なっ!?」


 2人組の剣がガンドルフォの体に突き刺さる。

 その寸前に、どこからともなくエルヴィーノが姿を現す。

 それと同時に、エルヴィーノは2人組の腹に拳を打ち込んだ。

 目にも止まらぬ移動と攻撃に、ガンドルフォは驚きの声を上げるしかなかった。


「な、何で?」


「家からそれほど離れていない場所で争ってりゃ気付くっての……」


 草木も眠るような真夜中の時間帯だ。

 もう寝ていると思った監視対象が現れたことに、ガンドルフォは戸惑いつつ疑問の声を呟く。

 それに対し、エルヴィーノの方からすると、どうしてこの距離で気付かれないと思ったのかが不思議だ。


「お前にも色々聞きたいが、とりあえずこいつらをギルドに連れて行くのを手伝え」


「あ、あぁ……」


 家の間で何やら話していたこの2人組のことも気になるが、この数日、自分たちの家の近くで様子を窺っていたガンドルフォについても聞きたいことがある。

 この場でも良いのだが、この2人組を運ぶのを手伝わせてギルドで聞くことにした。



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