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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
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第 79 話

「君たちがトリスターノの言っていた冒険者か?」


「あぁ……」


 ここのギルドの職員と思われる男性に問いかけられ、エルヴィーノが頷きと共に返答する。


「ここの所長さんかい?」


「副所長のダーリオだ」


 トリスターノを知っている上に呼び捨てにしているというところから、ギルドの中でも上の役職に付いている人間なのだと理解できる。

 もしかしたら所長なのかと思いエルヴィーノが問いかけると、男性ことダーリオは自身の役職と共に名乗った。


「なるほど……」


 ダーリオの役職を役職を聞いて、エルヴィーノは納得の声を上げる。

 というのも、ダーリオの体つきを見た時、戦闘はそれほど得意では無さそうに見えたからだ。

 時には荒くれ者も相手にしなければならないギルドの所長となると、戦闘能力が必要となるものだ

 しかし、必ずしも必要という訳ではない。

 この世界のギルドは、魔物を相手にする冒険者たちを管轄するだけでなく、商業関係の仕事も担っている。

 そのため、ギルドの中には商業関連に造詣のある者もおり、そういった者が所長になるケースも存在する。

 その場合、荒くれ者の対応をするために戦闘能力の高い者を副所長にする傾向にある。

 そして、戦闘能力が高い所長が、商業関係に造詣のある者を副所長に据えるという逆のケースも存在している。

 このツシャの町だと、後者のパターンのようだ。

 ちなみに、シカーボの町のギルド所長のトリスターノは、勉強したことで戦闘面だけでなく商業関係の能力も高いため、今の副所長は置いていない。

 しかし、隣町に住む娘夫婦と孫に会う頻度を高めるため、最近は真剣に副所長を置くことを検討しているそうだ。


「今所長は手が離せなくてな。私が所長室に案内しよう」


「分かった」


 この町で起きている事件を解決するため、それに関するできる限り詳細な情報を得たい。

 そのため、ここの所長に会いに来たのだ。

 所長が会ってくれるとくれるというのであるなら、少しくらい待つのもやぶさかではないため、エルヴィーノはダーリオに案内してもらうことにした。


「その前に……」


 案内を開始する前に、ダーリオはセラフィーナが気絶させた男に視線を向ける。


「お〜い! ガンドルフォの奴を医務室に運んで置いてくれ!」


「「「わ、わかりました!」」」


 どうやら、セラフィーナが気絶させた男はガンドルフォという名前らしい。

 長身で筋骨隆々のガンドルフォが寝っ転がっていては、仕事を求めにギルドに来た他の者たちの邪魔になる。

 そのため、ダーリオは受付内にいる男性職員たちに呼びかけ、ガンドルフォを医務室に運ぶように指示を出した。

 セラフィーナの強さに呆気にとられていた職員たちも、その指示によって我に返ったのか、すぐに担架を持ってきてガンドルフォを乗せて運んで行った。

 ガンドルフォが相当重いのか、男性3人がかりでだ。


「では、行こうか」


「あぁ」


 ガンドルフォが運ばれていくのを確認したダーリオは、改めてエルヴィーノたちを所長室に案内することにする。

 その案内に従い、エルヴィーノたちはギルドの内部へと入って行った。


「それにしても、あのガンドルフォを伸してしまうとはな。トリスターノが太鼓判を押しているだけあるよ」


「……ここでは有名な冒険者なのか?」


 所長室へと向かう途中、ダーリオは世間話として話しかける。

 セラフィーナの相手としては力不足だが、あの見た目からそれなりの実力はあるように思えた。

 しかし、聞いたこともなかった名前のため、ランクとしてはどれくらいなのかまでは分からない。

 ダーリオのその言葉から、ガンドルフォはこの町では名の知れた冒険者なのではないかと思い、エルヴィーノは問いかけた。


「Bになったばかりだな」


「……まあ、あれくらいならそんなものだな」


 自分たちと同じランクだ。

 ただ、エルヴィーノたちの場合は実力的には最高ランクのSレベルなのを、意図的にBに抑えている。

 なので、ランクが同じと言っても実力差は段違いだ。

 手加減したとはいえ、セラフィーナの蹴りを受けて気絶程度で済んでいる時点で、ガンドルフォがBランクなのは納得できた。


「ここだ」


“コンッ、コンッ、コンッ!”


「は~い!」


 話しているうちに所長室前に着いたらしく、ダーリオは立ち止まりって扉をノックする。

 すると、中から返事が聞こえたため、ダーリオを先頭にエルヴィーノたちは室内へと入った。


「すまないが、ちょっと待っててくれ。処理しないといけない書類が多くてな……」


「あぁ……」


 机の上の書類の山に埋もれて見えないが、声からして女性のようだ。

 その言葉を受け、エルヴィーノたちは近くにあるソファーに腰かけた。


「だから時間があるときに処理するように言っているじゃないですか」


「許可なんて別に副所長のダーリオでもいいじゃないか!」


「トップである所長の許可が必要なんですよ」


 2人は流れるように会話から、いつものやり取りなのだろう。

 仲がいいようだ。


「フゥ~……」


 ひと段落着いたらしく、少しして所長の女性がこちらへと向かってくる。


「待たせたな。ここの所長のビビアーナだ」


 対面のソファーに腰かけ、彼女はエルヴィーノたちに名乗った。



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