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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
76/103

第 76 話

「失礼!」


「どうも!」


 シカーボのギルド所長であるトリスターノから用があると言われ、エルヴィーノはセラフィーナと従魔たちと共に冒険者ギルドに向かった。

 ギルドに到着して受付の者に挨拶をすると、いつものように所長室に案内された。

 ノックをして返事を確認したエルヴィーノはセラフィーナを伴い、所長室へと入った。


「よう、来たか……」


「あぁ」


 エルヴィーノたちのことを確認したトリスターノは、手で合図をするように彼らをソファーに促す。

 そして、目にしていたと思われる書類を机の上に置き、自身もソファーの所へと向かい、腰を下ろした。


「っで? 早速だが今日呼ばれた理由は?」


 ここ(所長室)に呼ばれるのは、大抵がこのギルドにとって困った依頼のあった時だ。

 なので、今回も何か面倒な依頼をしてくるのだと考えていたエルヴィーノは、前置きを省くようにしてトリスターノに問いかけた。


「あぁ……」


「なんだ? いつものように面倒事だろ?」


 問いかけられたトリスターノは、言い出しにくそうに顔をしかめる。

 いつもならすんなり依頼してくるというのに珍しく言い淀むため、エルヴィーノは訝し気に再度問いかけた。


「確かに面倒かもな……」


「内容次第では断るぞ。うちにはオルがいるんでな」


 どんな内容なのかは分からないが、言い淀むトリスターノの表情から察すると、やはり面倒な依頼のようだ。

 ギルド所長からの指名依頼なので、達成すれば相応の収入が見込める。

 そのため、いつもならそこまで内容にこだわらないのだが、最近はオルフェオ中心の生活に変化している。

 なので、エルヴィーノとしては内容次第では断るつもりなことを、トリスターノに前もって伝えた。


「最後まで聞けよ! もしかしたらその子に関係あるかもしれないんだ」


「っ!? それを先に言えよ」


 オルフェオが来てから数か月。

 まるで、エルヴィーノとセラフィーナを親だと思っているかのように、親を求めるように大泣きすることはない。

 エルヴィーノとしては嬉しい部分もあるが、やはり子供は両親の手によって育てられる方が良いと思える。

 もちろん、オルフェオを自分の家の前に置いていった理由次第ではあるが……。

 何にしても、まずはオルフェオの両親を探しだしてからだ。

 そのため、エルヴィーノはオルフェオに少しでも関わりのあるかもしれないなら他を依頼を無視して取り組むつもりだ。

 なので、エルヴィーノはトリスターノの次の言葉に対して前のめりになった。

 

「っで?」


「……ツシャの町で黒髪の人間が行方不明になっている事件が頻発しているらしい」


「んっ? ツシャ?」


 どんな依頼なのかとエルヴィーノが短い言葉で問いかけると、トリスターノは今回の依頼に関する情報を話し始めた。

 そして、エルヴィーノはその情報に最初に引っかかった。

 少し前にも行ったツシャの町の名前が出たからだ。


「……もしかして、またハンソー王国がらみか?」


「その可能性もあり得るな……」


 少し前に冒険者が誘拐される事件があった。

 それは、ハンソー王国のベーニンヤ伯爵が、奴隷兵として内戦に利用するために誘拐していたというものだった。

 それを知ったエルヴィーノが、戦地手前で奴隷化されていた冒険者たち全員を奪い去り、ベーニンヤ伯爵に二度と同じようなことができないように釘を刺してきた。

 奴隷兵を失った状態で戦地入りするしかなくなったベーニンヤ伯爵は、活躍どころか仲間の足を引っ張ることになり、敵に討たれたという情報が入ってきている。

 主人と設定されていたベーニンヤ伯爵が死んだことで、奴隷化されていた冒険者たちの隷属魔法が解け、自分たちの国や町にそれぞれ戻って行ったと、シカーボの町に戻って来たパーティー名【月の光】リーダーのカトゥッロから聞いている。

 ベーニンヤ伯爵が死んだことで、第一王子派閥の別の貴族が領主になったという話だが、今度はその貴族がこのカンリーン王国に何かちょっかいをかけてきたのではないかとエルヴィーノは考えた。

 トリスターノとしても同じ考えをしていたらしく、エルヴィーノの言葉に頷いた。


「黒髪か……、見られてはいないはずだが……」


 ベーニンヤ伯爵を自分の奴隷化することによって、冒険者たちの誘拐を二度とできないようにすることに成功したエルヴィーノ。

 その時、ベーニンヤ伯爵の護衛や兵たちに姿を見られたのだろうか。

 しかし、その時のことを思い出しても、気づかれるようなヘマをした覚えがない。

 そのため、黒髪の人間を狙う原因が自分ではないだろうと判断した。


「男女関係ないところを見ると、犯人の攫う条件は黒髪の人間みたいだな」


「まさに俺とセラが囮になるのにピッタリの条件だな」


「すまんがその通りだ」


 トリスターノが言い出しにくかったのは、これが原因だったようだようだ。

 言い方が悪いが、条件が揃っているエルヴィーノたちを囮にして犯人を捕まえたいと考えたからだ。


「オルに関係あるっていうのは?」


「全員子育て中ってところだ」


「……ちょっと薄いな」


 エルヴィーノが言っているようにオルフェオのことがあるため、トリスターノとしてもなるべく危険なことに巻き込まないようにしようと考えていた。

 それなのに今回依頼することにしたのは、オルフェオに関連があるかもしれないからだ。

 どんな関連があるのかを問いかけられ、トリスターノが返答する。

 犯人の狙いは子育て中の黒髪の人間らしい。

 それだけでオルフェオと関連あるかもしれないというのは、ちょっと無理やりな気がしたエルヴィーノは、思わずツッコむ。


「まぁ、行ってみるか……」


「そうですね」


 時間が経てば経つほどオルフェオに関連する情報は減ってくるため、少しでも関連がありそうなら手を出すしかない。

 そのため、エルヴィーノはセラフィーナたちと共にトリスターノの依頼を受けることにしたのだった。



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