表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 1 章
67/104

第 67 話

『まぁ、ハンソー王国に入る事なんて簡単なんだけどな……』


 移動を開始したエルヴィーノだったが、1時間もしないうちにハンソー王国内に侵入することに成功した。

 というのも、エルヴィーノは、自分たちが住んでいるカンリーン王国の周辺国どころか、世界の色々な場所へ足を運んだことがある。

 そのため、転移魔法の使えるエルヴィーノなら、現在は内乱中で難しい国でも気付かれることなく入国することなど苦にならない。

 ハンソー王国も、昔は冒険者の仕事で何度も足を運んだこともあるため、転移すれば一発だ。


『あとは、伯爵がベーニンヤ領のどこにいるかだな……』


 カンリーン王国の冒険者を攫い、奴隷兵として戦争に利用する。

 そんなことを二度とさせないためにも、誘拐を指示したベーニンヤ伯爵にはお灸をすえてやらねば気が済まない。

 そのためにハンソー王国のベーニンヤ領に入ったエルヴィーノだったが、その伯爵がどこにいるのか分からない。


『まぁ、まずは領都だろう……』


 ベーニンヤ伯爵の居場所となれば、邸のある領都のジカアだろう。

 そう考えたエルヴィーノは、ジカアに向けて移動を開始した。





◆◆◆◆◆


「えっ? 伯爵様?」


「あぁ……」


 エルヴィーノの移動は順調に進み、日が暮れ始める前にはベーニンヤの領都ジカアに到着した。

 早々に宿屋を手配したエルヴィーノは、日が暮れるのを待って町へ出て情報収集を始めた。

 情報収集と言ったら酒場。

 色々な職業の者たちが、酔っぱらって口を滑らせたりすることが多いからだ。

 店に入ったカウンターに座り、エルヴィーノは店主らしき男性にベーニンヤ伯爵のことを問いかけた。


「たしか、第二王子派閥との戦いのために、兵を連れて進軍を開始したって話だ」


「そうか……」


 どうやら、ここに来るのが一足遅かった。

 ベーニンヤ伯爵は軍を率いて、戦場に向かってしまったようだ。


「俺は田舎出身なんでな。どっちが優勢なんだ?」


 現在ハンソー王国で起こっている内乱は、第一王子と第二王子のどちらが王位を継ぐのかを決める戦いだ。

 国内の人間なら誰もが知っている戦い。

 普通に質問したら店員に違和感を覚えられるため、エルヴィーノは最新情報の入ってこない田舎から来たのだということにした。


「今のところ五分五分……、いや、ベーニンヤ伯爵の活躍で第一王子の方が優勢かもな……」


「へぇ~……」


 問いかけられた店主の説明だと、ハンソー王国の第一王子派閥は西、第二王子派閥は東に分かれており、その勢力的にはほぼ互角だが、僅かに第一王子派の優勢という話だ。

 その優勢に働いている要因が、ここベーニンヤ伯爵の軍勢による初戦の活躍があったからだそうだ。


「言いたくないが、第一王子が王位に就くのはな……」


 エルヴィーノの知識だと、内乱が起きた理由は突然の王の崩御によるものだと思っていたが、店主の話だと少し違うようだ。

 元々、王には第一王子しか子供がいないと思われていた。

 しかし、庶子いることが判明。

 しかも、王がその庶子を王位継承権のある王子と認定したのだ。

 庶子を王位継承権のある王子に認定するなんて信じられないようなことなのだが、そうしたことには理由があった。

 それは、第一王子が原因だ。

 一人っ子として育てられたためか、第一王子は、気に入った女性は手当たり次第に手を出す、気に入らない態度に思えれば誰彼構わず不敬罪とするような傲慢な性格に育ってしまった。

 そんな彼に王位を任せるのは不安だと思い、王は庶子を継承権のある王子に認定した。

 王としては、第一王子の性格が改善されることを期待しての認定だったのだが、皮肉なことに、それによって貴族が二分することになってしまった。

 第一王子とは違い、王子と認定されるまで平民の暮らしをしていた第二王子は、国民のことを考えて行動できる人間だった。

 そのことに共感した貴族たちは、第二王子こそが次期王にふさわしいと思うようになっていった。

 そんな時に、王が突然の病によって崩御したため、内乱が起きることになってしまったそうだ。


「しかし、ここの伯爵様によって優勢に向かっているのだろ? この町の人間としては喜ばしいのではないか?」


「喜べるもんか……」


 五分五分の状態から、ベーニンヤ伯爵のお陰で、第一王子派は優勢に傾きつつある。

 その伯爵が領主をしている町の人間からすれば誇らしいと思うのではないかと思

って問いかけたエルヴィーノに対し、店主は渋い表情をしつつ小声で返答した。


「多くの冒険者たちが連れていかれて、多くの者が迷惑を被っているんだ」


 戦争において、兵の数は重要だ。

 少しでも多くの兵を求め、ベーニンヤ伯爵は冒険者も軍に引き入れたようだ。

 冒険者を連れていかれたことによって、手に入る魔物の肉が激減したため、多くの店が商品不足で迷惑を受けることになった。

 それによって物価が上昇しつつあり、領民も困惑している状況だ。

 それもこれも、ベーニンヤ伯爵が冒険者たちを軍に引き入れたことが原因だ。

 内乱で活躍しているようだが、それによってベーニンヤ伯爵は領民に好まれていないようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ