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最弱デメリットパーティー、奮闘する!  作者: 彩りの招き猫
冒険者の街 エリーズ
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第八話 首刈り鬼ごっこ

「くっそおおおおおおお!!!!死んでたまるかよおおお!!!」


「バフかけますか?効果が切れたら動けなくなりますけどかけましょうか!」


「急に不穏なスキルの存在ほのめかしで来るんじゃねえよ!絶対にかけんじゃねえぞ!」


「なのなの!」


 なんてことだろう。自称勇者を掴み空を飛ぶ鳥を追いかける冒険者が3名。驚くべき事に一人は幼女を肩車、もう一人はシスターであるのにも関わらず大股でダッシュ。


 ‥‥俺達のことです。


「おいッ!離されて来てるぞ!」


「だ、大丈夫です!見てください!ハクヤさんが魔法を使おうとしてます!」


「おいおい、空中だぞ!着地は!?」


「ハクヤさんがそんな事を考えてる訳ないに決まってるじゃないですか!」


「‥‥それもそうだな」


「多分勇者は落下死しないとか思ってるの」


 皆、考える事は同じらしい。しかし困ったな。ハクヤがもし、空中であのデカ鳥を撃墜すれば一緒にハクヤまで落ちてくる事になる。


「いやだが……待てよ?そういえばハクヤはオールマジシャンなんだから風魔法で降りてくりゃいいよな?」


「それはそうですけど…しかしハクヤさんにそんな事思い付くこと出来ますかね?」


「そうだな‥‥。せめてこの事を伝えられればいいんだが」


 伝えようにも距離が離れていて声が聞こえるはずもない。出来るとしてもジェスチャーが精一杯だ。


「バカっぽいがやるしかねえか」


「なにするの?」


 イブが頭の王冠をコンコンと突きながら聞いてくる。正直、呪いの王冠なんだからあまり触らない方が良い気がするのだが……。


「ああ、協力してくれ!今からジェスチャーで風魔法の存在を気付かせる!」


「わ、分かりました!風魔法ですね!頑張ります!」


「イブもやるの!」


 ジェスチャー同盟を結託した俺達は個々でハクヤに向かって走りながらもジェスチャーで風魔法の存在を伝えようとする。


「お、ハクヤが何かに気付いたようだぞ!」


 ハクヤがこちらを向いて任せろと言わんばかりに決めポーズをしてくる。

 お前は捕まってるんだからそんな事してる場合じゃねえよ。


「手のひらにつむじ風を起こしてます!どうにか伝わったみたいですね!」


「ひとまずは大丈夫そうか…」


 これでようやく安心できるな。物分りが良くて助かった。


「あ、風魔法で鳥の首を落としました」


「は?」 


 急展開やめろ。


「続いて泣き叫びながら落ちて来てます」


「ばかあああああああああ!!!!!!」


 風魔法で鳥を殺れって意味じゃねえよ!


「バフ!さっきのバフを!あと筋力増加!」


「いいんですか!?」


 この際仕方がない。


「見捨てるわけにもいかねえだろ!」


 その言葉を聞いたエルスは微かに笑みを浮かべ俺へ向け手を伸ばす。


「骨は拾います!ハイリスクアップ!」


 ちくしょう‥‥。


「嫌な名前だなあああああああ!!!!」


 俺は叫びながらもハクヤの下辺りまで全力で駆け出す。そして、ハクヤが僅か10メートルほど上に見えたところでやっと気付いた。



「どこ落ちて来るか分かんねえじゃん」




「うわあああああああああああ!!!」


 大粒の涙と共にハクヤが落ちて来るがどの辺に落ちて来るがよく分からない。魔物との距離を把握するような冒険者と違って俺は貧弱な旅人である。

 そりゃあんな高くから落ちて来られたら何処で待っていればいいかなんて分かる訳ねえよな。


「クソッ!どうにでもなれッ!」



 ――――ゴンッ―――――!



 次の瞬間俺の目の前は真っ暗になった。






 


 次に目が覚めたのは知らないベッドの上。窓から差し込む日差しでなかなか目を開くことができないが、


「‥‥‥生きてる、か」


 目が覚め、ふと違和感を感じ自分の体を見てみれば、チュンッチュンッ!と一匹の緑色の小鳥が俺の腹で鳴いている。続けて、もう一匹がやって来てクルクルと周り、元いた小鳥にブレイクダンスでアピールをし始めた。

 そういえば小さい頃、父さんが言ってた気がする。小鳥はブレイクダンスでプロポーズするって。


 ‥‥死体に集まる鳥と真逆に考えれば良い気分ではあるな。


「クソッ…寝てただけか…」


 重い顔を上げる。2匹の鳥は窓から何処かへ飛んで行ってしまったが俺は気にしない。

 しかしまあ、どうやら俺はついさっきまで寝ていたようだ。


「ここは一体―――」


「起きたの!」


 辺りの把握が出来たところでイブがトコトコと部屋に入って来た。集合してからずっと裸足なのが気になるが可愛らしいので別にいいだろう。


「イブか。すまん、ここは一体どこなんだ?」


「ハクヤがおにーさんにぶつかって気絶させちゃったからエルンブルグまで運んで来たの!」


 ‥‥まあ、そうだろうな。やっぱり慣れないことはするもんじゃない。今回は運も味方した。


「そうだ、ハクヤは無事か?」

 

「‥‥今は無事なの」


「何だその含みのある言葉は」


 気不味そうにするイブだが、飴を与えたら意外とあっさり話してくれた。

 イブの説明は子供らしいっちゃ子供らしいのだが擬音多めで分かりにくかったが簡単に説明するとこうだ。


①ハクヤ落ちる。

   ↓

②俺にぶつかる。

   ↓

③呪いの王冠がハクヤに突き刺さる。

   ↓

④俺は手足が変な方向にまがっていたと。


 ‥‥まあ、あんな高さから落ちてきたんだからそりゃそうなるよな。


「命があるだけ感謝ってとこか。よしイブ、ふたりのとこに連れて行ってくれ」


「お任せなの!‥‥あ!起きたときに渡そうと思ってたのがあるの!」


 イブが思い出したかのようにポケットから金色のりんごを取り出した。


「パワーアップルか。珍しいな、どうしたんだこれ?」


 パワーアップルは見た目はりんごに魔力がこもり、金色になったものだ。魔力がこもったせいか、毒性が生まれたので食べる事は出来なくなったが最近では魔力剣の素材などに使われる貴重な果実となっている。

 そう簡単に手に入るものじゃないが……。


「昔、パパに沢山貰ったの。いっぱい迷惑かけちゃったからあげるの!」


「あ、ああ‥そうか、ありがとうな」


 パワーアップルを娘に沢山渡す父親とは一体どんな親なのだろうか?資産家の娘だったりしてな。

 

 新たな疑問が生まれるがこの時の俺は特に気にせず、ふたりのもとへ案内してくれるイブについていくのだった。

 

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