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最弱デメリットパーティー、奮闘する!  作者: 彩りの招き猫
冒険者の街 エリーズ
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第四話 護衛とのひととき

「‥‥暑いな。近いからって馬車をレンタルしなかったのは失敗だったか」


 現在俺達一行はギラギラと太陽が照りつける中、徒歩で草原を移動していた。

 まったく、いくら護衛がいるからってケチるのは良くないな。

 この国の道は整備されておらずいつモンスターと遭遇してもおかしくは無い。もしかすればすぐに力を借りることになるかもしれない。


 ‥‥まあ、今はそんな事より、


「僕がいつそんな事をしたって?大体君の実力不足を人のせいにするのは良くないんじゃないか?」


「ん、あの変なことが無ければイブは依頼クリア出来てたの!」


「ま、まあまあ…落ち着いて下さい!流石に死んだら私でも回復出来ませんから……」


 先程からなにやらイブとシドウハクヤが言い争っている模様。そしてそれをどうにか止めようとエルスが奮闘している。

 こいつらうるせえな。


 けど余裕がある事は良い事だな。うん。


「お前ら、余裕あるのは良いがモンスターが出たら頼むからな?」


 このまま油断されても困るので一応注意はしておく。


「任せたまえ!君達の世界は僕が守ってみせるさ!頬にビンタの跡を残した依頼主!」


「君達の世界って、随分他人事だな。お前の世界でもあるだろシドウハクヤ?あとビンタされたのは納得いかない」


 貧乳はホントだろ。


「ハクヤでいいさ。この世界の住人からしたら僕の名前は長いようだからね。そして何か勘違いをしているようだから教えてあげよう。僕はこの世界の住人じゃない」


「は?」


 突然ハクヤが寝ぼけた事を言い出した。

 こいつは一体何を言ってるんだろうか。この世界の住人じゃない?そんなの勇者でもあるまいし。

 

「僕がその勇者だからだよ」


「おい、ナチュラルに人の心を読むんじゃねえよ」

 

「口から漏れていたが‥‥」


「え…」


 どうやら知らず知らずのうちに考えていたことが口から漏れていたみたいだ。それは少し悪いこと言っちまったな。‥‥謝るか。


「別に謝らなくてもいいさ。僕は寛大な心を持っている勇者だからね」


「やっぱ心読んでるじゃねえかッ!少しでも謝ろうとした俺がバカだったわッ!」


 キレ散らかす俺だがおかげで一つ分かったことがある。先程ギルドでクソ猫が言っていた事はこの事らしい。恐らくこいつは人をおちょくるタイプだ。

 自分を勇者だとか言いやがって、勇者があんなギルドにいてどうすんだっての‥‥。


 勇者とは国家の宝に等しいため、王城近くの迷宮で兵に囲まれながら鍛えていると聞いたことがある。


 そんな勇者様が……な?


 ‥‥そういや最近ではこの国より東にあるアルマリーゼ帝国で勇者が召喚されたって聞いたな。こいつもその流行に乗った奴の一人なのかもしれない。


「まあ、次の町まで頼むよ」


「次の街までとは言わずその先の山すら越えようじゃないか」


 俺はお前の頭の方が心配だよ。


 俺は会話を諦め、歩くスピードを少し早めるのだった。

 





 町を出て2時間、ようやく遠目に次の町エルンブルグが見えてきた。しかし見えただけであって決して近いわけではない。歩けばあと一時間はかかるだろう。

 ならば、


「この辺で一旦休憩するか。お前ら、一旦ここで休憩するから、また30分後に出発で頼むよ」


「分かったの!」


「了解したよ依頼主」


 ふむ、どうやら言う事を聞かないって訳ではないみたいだな。安心だ。俺はゆっくりと草むらの上に腰を下ろす。

 そしてその直後、


「あ!なら私、お弁当作ってあるので一緒に食べませんか?」


 俺が携帯食を取り出したのを見てエルスが誘ってくる。

 ‥‥確かに携帯食より手作りの弁当のほうが栄養もあるし貰えるならばありがたいところだが、集合時に準備で遅れたと言っていたがこの事だったのだろうか?


「ふむ、実は僕も弁当は持参している。依頼主が望むのならば僕のも特別に一口だけなら」


「いらない」


「性別での差別は良くないと思うよ」


「いらない」


 俺はどこから出したかも分からない弁当箱とにらめっこし、自問自答を始めたハクヤを横目にエルスの作った弁当を広げ食べ始める。

 いつの間にか膝にイブが乗っかっていたが別に困った事でも無い。子供に懐かれるのは嫌いではでは無いからな。

 むしろ好きまである。


「よーしイブ、これも食え」


「あーんなの」


 正直餌付けしてるだけで心が癒やされる。


「‥‥えっと、お二人は気にされてないようなんですがハクヤさんがブツブツとうるさいですけど」


「あっちの崖から落として来たら静かになるの」


 もはや幼女が言って良い言葉ではない。


「‥‥落とすのも程々にな」


「ワタルさんって意外と畜生ですよね」


 若干エルスに引かれている気もするが俺は弁当を食べ進める。そんな中、イブがふと疑問に思ったのか口を開いた。

 

「ん、なんでおにーさんはなんで旅をしてるの?」


「俺?」


 イブがコクコクと頷く。可愛い。


「あー‥‥。まぁ、いろいろあるんだよ。父さんが失踪して子供の頃は大変だったからな。気分転換と言うか」


 少し答えにくい質問だ。


「へえ、大変だったんですね。それならどうして旅を選んだんですか?」


「そうだな‥義務教育を終えて自由になろうって考えた結果がこれだよ」


 ざっくりとした言い方にはなるが嘘はついていない。


「大変なの…」


 何かを察したのかイブがしょんぼりと肩を落とし、申し訳なさそうな顔をする。


「別にいいんだよ。昔の事はもう気にしてないからな」


「なら――」


 その時だった。何かに狙われているようなゾワゾワとした違和感を背中に感じるまるで。何かの集団に見られているような……


「おや?モンスターがやって来たようだね」


 先程まで意気消沈してたハクヤが近づいてくる。どうやらメンタルは強いらしい。


 しかしモンスターか。護衛がいるから安全とはいえ、俺は戦えない。はっきり言ってお荷物だ。あいつらに任せるしかないのは少し歯がゆいが命の為だ、離れてるとしよう。

 荷物を抱え、5歩ほど後ろに下がる。

 ‥‥ハクヤ達と目が合った。


 おい、お前らも下がってんじゃねえよ。


「来ます!」


 苦言を呈したいところだったがエルスの声と共に草むらからゾロゾロと10匹程のオオカミ型モンスターが現れる。


「多いな‥いけるか?」


「余裕なの」


 お!


「どんな怪我をしても死なない限り私が回復します!」

 

 よし!


「たかが10匹如きで大丈夫かい?僕一人で20匹ほど殺してあげよう」 


 計算が合わねえよ。


 少し不安もあるが当人達は随分自信満々。  

 なら見せて貰おうか!お前らの力を!!!


 かくして、オオカミ達との初戦闘が始まった。

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