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〜after story 4〜


緊張しているのもあるだろうが、それがひなたらしくないような気がして、大同はその後ろ姿をいつまでも目で追った。


そして、訝しげな思いの大同を置いて始まったショー。若手である『ヒナ』の出番は、三番目。

モデルが歩き出す。


(もう直ぐだ、頑張れ、ひなちゃん)


心で祈るように思う。

そして、『ヒナ』の出番。


ひなたがステージ上へと踊り出た。その姿を見て、大同の胸に熱いものがせり上がってきた。


ようやく克服したと思った乳がんが、再発したと知った時。大同の世界は見事に崩れ去った。

この世界の。

終わりだと。

そうまで思った。ひなた本人でない、自分でさえ。


けれどひなたは、そんなどん底の世界から立ち直り、そして今。このステージに立っている。


「愛してる、愛してるよ、ひなちゃん」


口をついて出る、言葉。ひなたは大同にとって、唯一無二の存在で。

チャラくてナンパだった自分。適当に女と遊び、本当の恋愛というものを知らずに生きてきた。そんな中身のない、薄っぺらい人生を送ってきた自分を、変えてくれた人。


そのひなたが、この崩れ去った世界でも、精一杯に生きようとしてくれている。


目頭が熱くなった。熱いものがこみ上げてきた。大同の目に涙が溜まり、そして一筋流れていった。


(ひなちゃん、頑張れっっ)


そして、大同がその涙を手の甲で拭おうとした、その時。


ぐら、と。

ひなたの身体が左右に揺れた。倒れそうになり、バランスを取ろうと手を伸ばす。その拍子に膝ががくっと前へと折れた。


「あっっ!」

「きゃあっ」


客席から悲鳴に似た声が上がった。

大同も思わず立ち上がり、ステージに近づき、ひなたを見た。


「ひなちゃんっっ」


ひなたが顔を歪めている。足が不自然に曲がっているのを見て、そしてひなたが痛みを我慢している顔を見ると、大同の身体は自然に動いた。


✳︎✳︎✳︎


「……い、痛っっ」


ぐら、と傾く身体を支えるため、ぐっと足を踏ん張ると、かかとに激痛が走り、ひなたは顔を歪ませた。


客席からは、驚きの声が上がったのを耳で聞いていたし、あーあマジか、やっちゃったなあという観客の空気感を、ひなたは全身で感じ取っていた。


失敗した。

直ぐにもそう思った。


けれどただ恥ずかしいというよりも、匠さんをガッカリさせた、それが悲しかった。


慌ててパンプスを履き直す。けれど、かかとにかなりの痛みがあり、なかなか履くことができなかった。

じわっと目尻に涙が滲んだ。


もう一度、パンプスに無理にでも足をねじ入れようとした。


「ひなちゃん」

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