表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/84

予想通りの噂


いつもなら、女性の手はたっぷり時間をかけて握るようにしているが、ひなたの手前、今日は直ぐに手を離して、引っ込めた。

人差し指を立てて、自分を指す。おどけて言った。


「え、俺のこと知ってる? もしかして、俺ってば有名人?」

「知ってますよー。もちろん有名ですよー」


滝田と鮫島も、モエの側でニヤニヤと笑っている。


「……変な噂じゃないといいけど」


ちらっと、ひなたを見る。するとひなたの視線とかち合った。


「はは、」


ドキッと胸が鳴ったのを、薄ら笑いでごまかす。変な噂話を耳に入れたくない、そう思ったのに、若者たちの話はどんどん先を急ぐように進んでいく。


「ナンパでチャラいって」

「すっごいモテるって」

「恋人が一人だった試しがないって」


三人三様に、はやし立てる。ちょっと待て、と大同は心の中で焦った。


「いやいやいやいや、そういうんじゃないから。恋人は常に一人だし、そんなの事実じゃねえし」

「取っ替え引っ替えってやつでしょ?」

「昨日の友は今夜の恋人って名言、凄えなって」

「……そんなこと言ってねえって。それより、君たち仕事しようよ」


あはは、と笑いながら、各々がようやく手を動かし始めた。三人が奥の部屋に入っていく姿を見て、大同はほっと胸を撫でおろした。


「なあ、ひなちゃん」


三人を追って部屋へと向かおうとしたひなたに声を掛け、その足を止める。ひなたはちらと後ろを振り返って大同を見つめた。いつもと変わらない無表情が、大同の心を射抜く。


「……えっと、」


手で頭を掻く。


「あのな、今の話、本当じゃないから信じないで」


(うわ、俺、なに弁明してんだ、)


羞恥の気持ちが湧き上がる。ひなたは、キョトンとした顔を浮かべて言った。


「信じるも何も……予想通り過ぎて。そうなんですかってだけですけど」


冷たく言い放ってから、ひらりと踵を返して、奥へと入っていった。


「ちょ、ちょっと待って」


情けない声。あーあ、と髪をガシガシとかき混ぜる。

大同は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてから、ひなたの後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ