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第九十四話「未来への咆哮」



蟹尽くし───もとい、特訓は二日程続いた。

お陰でレパートリーの蟹料理は大体堪能出来たけど、流石に飽きてきたよね。


『貴様の相手はこの俺だ、《挑発》!』


そして現在、三回目のバルバロッサ戦だ。

第一波のゴブリン達と騎士団がぶつかり乱戦になっている。前回解った事だが、ゴブリンの動きはゲームに準じているようで、この時点でバルバロッサと取巻きのチャンピオンは勿論、第二波の上位種も動いて来ないらしい。

それならばと今回は順番に殲滅していく方針だ。


「ほう………ゴブリン共も良い動きをしているな」


呟いたのは騎士団を率いているフォード卿。四十代の厳つい四角顔で、如何にも偉そうな騎士様っぽいキャラだが、乱戦の中一際目立つゴブリン傭兵団に感心している様子。

騎士団の中では討伐任務などを受け持つ隊の隊長さんだそうだ。偉そうじゃなくて偉い人だ。


「ですが………大丈夫なのでしょうか?」

「使えるなら、ボンクラ騎士共よりマシだろう?」


困惑気味な顔の副官は女性騎士のフリーダさん。男装の麗人っぽいお姉様。まあ、普通の反応だよね。いきなりゴブリンが味方ですって言っても信じられないだろう。


騎士団も善戦している。前回はたかがゴブリンと侮ったのか功績を上げようと騎士団の中でも「お飾り」と冒険者に揶揄される王宮を守る守護騎士団が出てきたが、今回は実戦部隊である討伐隊が中心。

近郊の村などの要請とかで魔物討伐とかに出る騎士団の中でも実戦経験のある人達。こういった依頼は冒険者ギルドに回される事が多いので、騎士団の中でも微妙な立場だと聞いていたけど、意外とやるじゃない。


「あのゴブリン達と仲介し、鍛えたと言うのは君だな。クロフォード家に面白い令嬢がいると聞いてはいたが」

「鍛えたと言うのは、ちょっと違いますけど」


第一波はほぼ殲滅。第二波の上位種が動き出す。

私や高ランクの〈紅蓮花〉、それからアネットさんとメルディは予備戦力として待機している。

シャルちゃんと三人組は前線に出ているけどね。


フォード卿の言葉に私はそう答えるが、実際大した事はしてないしね。



各所でゴブリン達との戦いが続く。経験の浅い騎士や冒険者の中に負傷して後方に下がって来る者が出始める。《神聖魔法》など回復スキルが使える数人は大忙しだ。


彼等は先ず軽傷の者から治療をしていく。

「命を大事に」と言う方針なら重傷者や緊急性の高い者から色分けする所謂トリアージと言う方法も勿論浸透しているが、ここは戦場の真只中。前線に復帰させるのが最優先───と言う想定で治療が行われている。前線が崩れればもっと負傷者が出るだろう。大を生かす為に小の犠牲は仕方ない。悲しいけど、これって戦争なのよねーって奴か。


「でも現時点でこの状態なら回復役はもう少し欲しいかも……」

「新米共に経験を積ませてやりたいが、編成の見直しは必要そうだな」


私の呟きにフォード卿が首肯く。

資金や物資の都合上、動員数は限られている。所謂編成コストって奴だね。育てたいキャラは入れたいけどクリア出来無ければ意味は無い。


「見たところ前衛に余裕はあるから、一個小隊程を回復要員と後衛にして………もしくは剣より槍兵の割合を増やせば……」


ゴブリン達は主に剣や斧、棍棒などを装備している。リーチの長い槍なんかなら被弾は少なくなるかも?武器相性とかも重要よね。


「もう一押しだ!ゴブリン隊と冒険者は左右に、騎士団が正面、蹴散らすぞ!」


思案している内に中盤戦は大詰め。敵ゴブリン達が減ってきた所で作戦は包囲殲滅に。

うん、ここまでは大きな問題は無いかな。


「ここからが問題ね」

「例の範囲攻撃は厄介ですよね……あのゴブリンロードがカトレアちゃんの代わりって大丈夫なの?」


表情を引き締めるアネットさんと心配気なカンナさん。


「強いですよ、彼」

「ふむ。並みのゴブリンでは無さそうだが……」


バルバロッサ本体はクロガネ達が中心に布陣。騎士団と冒険者達は遠距離攻撃を主体に、隙を見て一撃離脱で削り切る作戦だ。

反対されると思ったが、騎士団の上層部が逆に推してきた。前回負傷者が多数出た事とゴブリンなら被害が出ても痛くない、露払いに使ってやろう──そんな思惑っぽいけど、実積を作ればこっちのものだ。


「うちのPTと戦って勝敗が付かなかったくらいですかね」

「カトレアちゃん達と引分けって、危険度8くらいかな……?」

「それバルバロッサよりヤバくない?」


前回は戦端の一角を任されてただけだったみたいだし、クロガネ達の戦闘力は知られて無いか。

なんか後ろで言われてるけど───ああ、なんかシャルちゃんが無双シリーズみたいに戦ってるなー。他の高ランクがこの場に居るので、あの辺りだけ派手に見えるね。

ともかく、第二波も終了。



『さて、まともにやり合うのはエルグラの「祭り」以来か。うちの連中の為にも気合い入れて行くぜ!』


そして、バルバロッサの正面に立ったクロガネが《挑発》して今回のメインイベントが始まった。

結局防御力アップ系のスキルは覚えられなかったが、《加速装置》《慣性制御》の速度系で回避盾としてのスペックはある。

大振りの攻撃をヌルリとかわし、反撃。いやホント、昔の謎の挙動をするアクションゲーみたいな動きよね。


反撃に合わせゴブリン精鋭の三人が飛び掛かり、騎士団と冒険者達がそれに続く。


立場や身分、種族さえも違う者が共通の敵と戦う。

それはこの国の未来を象徴するような戦いだった。


お読み下さりありがとうございます。

蛇足気味になりました(>_<)

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