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第九十三話「クロガネ君育成計画」



「そんな訳で、今日から特訓です」


マドカ・アサヒナが来るまではバルバロッサを倒し続けなければいけない。何か方法があれば良いんだけど、世界に実装されたイベントを終わらせる方法なんて思い付かない。そんな事が出来るのは運営だけだ。


なんらかが原因で再沸きしてる可能性もあるのだが、バルバロッサの沸きポイントと思われる森の中は調べられたが、これと言って不審な物は発見されなかったようだ。

一応、この可能性が無いとは言えないので捜索と残党が残って居ないかの確認なんかは続いている。


『………行きなり連れて来られたと思ったら』

「毛ガニだー!」


やって来たのは件の浜辺だ。

晩夏は毛ガニのシーズン。まあ蟹って一年中漁場を変えて捕れる物なんだけどね。うん、浜辺にいるのは違う気がするし初夏にはシオマネキっぽいアーマークラブが居たんだけど。生態系はどうなってるんだろう?

現在は見ての通り、でっかい毛ガニがそこかしこにいる。大きさはアーマークラブより気持ち小さいかも?


『王都近郊はあんまり強いMOBが居ないのよ。修行に最適な心と時空の部屋とかあれば良いんだけどねー』

『いや、蟹が食いたいだけだろ』


………毛ガニ美味しいよね。


『ついでに美味しい物が食べれるならやり甲斐もあるでしょ?』


バルバロッサ対策。

マドカさんがなんとか出来るとしても、彼女が来るまで倒し続けなければいけない。でも私達はそろそろクロフォードに戻りたいし、アネットさん達だっていつまでも引き留めて置けない。

そこで目を付けたのがクロガネだ。彼が盾役をこなせれば、後は騎士団と冒険者が火力(人数)を揃えれば安定して討伐出来る、筈。


『あんたの所、特産物とか無いしゴブリン傭兵団として売り出せば地位確立と収入になると思うのよ。下手に手を出せば痛い目を見るし、戦力として有用ですってアピールしとけば?』

『成る程。俺達の強さを見せつけておくのは必要だな。人間同士の戦争なんかには興味無いが、この国は無縁っぽいしな』


大陸は群雄割拠な戦国時代らしい。辺境のこの国が巻き込まれる事は無さそうで騎士団もお飾りみたいな感じ───実際、バルバロッサに対応出来て無いしね。そこでクロガネ達が、今回活躍すれば戦力として当てに出来るんじゃ?……なんて考えてくれたら良いなぁーと思ったのだ。

脅威と捉えられるかもしれないが、簡単にはいかないぞって所を見せておけば、討伐しようという動きも鈍るだろう。


そんな訳で、クロガネを森から引っ張り出してきたのだが。一応森は出入り禁止なので深めのフードが付いたローブで偽装中だ。

とりあえず私が実演して《挑発》を覚えてもらう。後は出来たら防御系のスキルとか生えてくれたら完璧だけどなー。


「カトレアちゃん、《剣魔法》を教えて欲しいの」

「俺とアーク、シャルちゃんは連携かな」

「集団戦の立ちまわりなんかは、まだまだですから研究したいですね」


うちの仲間達も大きな戦闘で足りない部分が見えたのかヤル気満々な様子。

特にシシリーは手数の少ないのが気になるようだ。

《剣魔法》で矢に魔力を乗せられれば、威力アップに繋がるし、もしもの近接戦でも使えるよね。


まあ、何にせよ実践あるのみ。


『行くぜ《挑発》!…………って、いっぱい来やがったー!!』


地響きを上げて毛ガニがやって来る。あいつ、見える範囲全部を対象に入れたのか………?


「よし、今日は蟹尽くしだー!」

「やっぱり………」



夕暮れが近付き、浜から少し離れた所でキャンプとなった。街まで二時間くらいだけど、クロガネは流石に連れて行けないしね。


今日の成果は毛ガニ───ヘアークラブ(そのままかよ)二十四杯。これもギルドで討伐依頼があったので納品するけど、新鮮な所を頂きたい。

足を落としてお腹を開ける。蟹味噌いっぱいだー。


「うーん、やっぱり御味噌汁かなぁ。洗いも良いんだけど………」

「夏場は蟹に限らずおすすめはしないかなー。過熱すれば大丈夫だけど、お腹を壊すかも」


おおう、漁師の娘さんが居たんだっけ。夏は腸炎ビブリオとか危ないし、蟹は水からじゃなくて沸騰したお湯から茹でるとか聞いた事はあるかも。

シシリーの助言に、本日は蟹汁、ボイルと焼きは定番だし、メインに蟹炒飯!

とりあえず解体は男性陣にお任せして、女性陣はご飯の準備。ボイルはシャルちゃんとシシリーにお願いして、私は御味噌汁から。


「毛ガニと言ったら蟹味噌よねー」


まずは昆布で出汁を取る。味噌を入れる。ネギを刻んで入れて、カニミソと足………は大きすぎるので、取り出した身を入れる。

後は弱火で煮るだけの簡単漁師飯って奴ね。蟹を堪能するにはシンプル・イズ・ベストの一品!


炒飯も簡単に。まずはスクランブルエッグを作って、椎茸とネギを炒める。それから蟹の身。蟹の良い香りがしてきたらバターと最初の卵を投入。ご飯は《空間収納》に残り物を。蟹が焦げないように気を付けて中火で素早く炒め、塩コショウと醤油で味付け。

それから盛付けしたらイリゴマと海苔を散らせて完成だ~。


「「「「「いただきまーす」」」」」


準備が出来たら冷めないうちに。

まずは蟹汁。濃厚なカニミソのコク、アクセントのネギが蟹を引き立て、一仕事終えて疲れた身体に染みますわー。


『やべー、こんなん食ってたら前の飯は食えなくなりそうだ……』

『うん……まあ、それは分かるわ』


流石にゴブリンみたいに生肉とか調理すらしてないような食生活ではなかったけど、以前は自給自足出来ない調味料とかに苦労したからなー。

人間との交流でクロガネ達の食生活が豊かになると良いね。


「蟹の相手には慣れてきたけど、スキルは全然だなぁ……」

「ま、簡単にはいかないさ。俺達も試行錯誤だ」


焼き蟹は食べながら。鉄板で程よく焼けた所を各自に配る。ポン酢醤油で頂けば、ふっくらした身は蕩ける美味しさ。

茹でた方も甲乙着けがたい。まあ殻のまま茹でれないので、美味しさは逃げてしまうかもだけど。塩加減は海水と同程度の三%~四%が良い。


「蟹は捕るのは一年、茹で十年と言う。何でも修行あるのみなのよ」

「良いこと言ってる気がするけど、蟹とスキル覚えるのはちょっと違うと思う」


………まあ。

今後の為にも戦力アップをしないとだけど、この世界じゃ高レベルのダンジョンでパワーレベリングとか無いので地道に頑張りましょうというお話。

お読み下さりありがとうございます。

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