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第八十九話「その時歴史は動いた」



『なんと言うか、出るタイミングってあるだろう?』

『うん、カッコ悪いわ』

『仕方ねぇだろ!あのバルバロッサだぞ!俺の屍を越えて逝け!と言われた、あの!』


あー、クロガネはあのイベント戦経験者か。レベリング目的とは言え、トラウマレベルだったらしいからなー。


『それをタンクが無傷で倒すなんて思わねえよ…………しかし、あれは問題だぞ。リポップしたらどうするんだ』

『うん、それも考えてた。最悪、毎週やらないといけないって事だけど………』

『…………そいつは勘弁して欲しいな。バルバロッサ、ドロップなんかあったか?』

『銀貨十枚………』

『ぶははは、相変わらずに経験だけかよ。レア泥あるレイドならまだ良いが、よりによってバルバロッサ実装とかないわー』


だよねー。

ゲームと違って命掛けで倒して、あれだけの数をやったというのに遠征費用は赤字確定だよ。これが貴重な素材とか手に入るレイドボスなら歓迎されたかもだけど。実際ゲームでも苦労の割に実入りが無いから過疎コンテンツになって、ただのレイドになっちゃった訳だし。


『あれに関しては様子見ね。とりあえず七日後辺りに沸き待ちかな。リポップしないなら少なくとも「実装」された訳じゃ無くてイレギュラーだったって事で。勿論、期間が変わっている可能性もあるけど、一月?半年?そこまで待てないしね』

『まあ、可能性の話なら他のコンテンツだってあるしな。てか、まじこの世界エルグラとどういう関係なんだ?スキルが使えた時点でおかしいと思ったが、まさかゲームの世界ってオチじゃねーよな?』

『全く関係ないって事も無いだろうけど、それは無いんじゃないかなー?この世界のスキルシステムもなんか矛盾ある感じだし、誰かが他の世界だかゲームを参考に作ったってのが私の見解ね』


そこら辺は情報不足であくまで仮説の粋を出ない。

誰かさんに直接聞いてみたくはあるけど、ねえ?


『ま、そこら辺は実害が無ければそういうもんかで良いと思うけどな。前世って言うクソゲーよりはマシな世界だし』

『バルバロッサは十分実害あると思うけど。もっとも、既にヤバめな魔王とかいるらしいからエルグラのレイド追加されたとしても不思議じゃないけどね』

『あー、前に言ってたSAN値チェックが必要になりそうな奴か。エルグラは基本オリジナルだったから、お前の推測が当たってるなら別ゲーって線もあるんじゃねーか?』


その可能性もある。転生者も全員エルグラユーザーって訳じゃないかもしれないし。神話をモチーフにした作品はごろごろあるから、名前だけじゃ判別できないできないけど。


『とりあえず私達が転生者ってのは伏せて適当に誤魔化して説明しておくわ。異世界から転生して来て、あれはあっちのゲームのレイドですとか、誰も信じないだろうしね。他の転生者もいると思うけど、異世界転生が周知されてる世界では無いっぽいし』




バルバロッサ戦が終了。残党のゴブリンの掃討も終わり皆が勝利に沸いていた所に彼等がやって来た。

そう、すっかり忘れていたクロガネ達だ。


武器を納め戦闘の意思を示さずに村から来たゴブリンに斬りかかろうとした者もいたが、それを制してマーカスさんが前に出た。


「ボクハ悪イごぶりんジャナイヨ?」


────そのネタはこの間やった。


後の歴史では邂逅のエピソードはきっと改変される事だろう。


クロガネ達との会談になった訳だが、最初はこちらを刺激しないように防戦、ピンチになった所で騎兵隊よろしく颯爽と駆け付け共闘して信用を得ようと思ったが、タイミングを見計らっている内にバルバロッサが倒されてしまった。

そんな感じらしい。


会談と言っても場所は村の前だし、こちら側はギルド長のマーカスさんと副官役の職員さん、それから関係者(?)の私達PT。金ランクだからなのかアネットさんとメルディ。あちらはクロガネと先日のゴブリン精鋭の内の三人(見分けはつかないけど、クロガネの側近らしい)と体格の良いゴブリンが一人。

ゴブリンと人間の正式な会談という訳では無く、現状把握みたいなものか。


『とりあえず、こちらに戦闘の意思は無い。それだけは解って欲しい』

「我々も彼等を根絶やしにするつもりは無い。無論、彼等が危険な存在であるなら話は別だがね」


私を通訳に先ずは休戦の確認。

相手は異種族で普段なら討伐依頼もある。魔物というのは基本危険な敵である。そんな相手だから、はいそうですかとは行かないと思っていたけど、これ以上の戦闘は双方に利は無い。


今はマーカスさん達が後ろで国への報告やらギルドの対応なんかを話合っている。まあ、いきなりゴブリンと和平なんて難しいし問題だらけだ。この国はゴブリン王を倒して建国されたって歴史もあるから、簡単にはゴブリンの存在を認めてくれないだろうし。


暇になった私はクロガネと冒頭の雑談をしていた訳だが、ようやく結論が出たらしい。


「当面は森の奥地への立ち入りを禁止、そちらには手を出さない。正式な条約では無いが、国への報告と協議をしてからでないと返答は出来ぬのでな」

『ああ、問題無い。こちらも森から出る事が無いように徹底する。とりあえずはそれで十分さ』


クロガネとマーカスさんが歩み寄り握手を交わす。


立ち入り禁止範囲だとか、彼等と今後どう付き合うのかとか細かい取り決めはこれからだが、今までの狩り狩られる関係から、交渉を考慮する相手になったのだ。今後どうなるかは分からないけど、これは大きな一歩だろう。


クロガネ達が美味しいご飯が食べられるように交易とか出来るようになると良いんだけど。




後世、人と魔族が共存共栄し〈人魔大戦〉において唯一中立を保ち、戦後一大国家となる王国の転換点として歴史に残るのだが、そんな事は私の知った事では無い。

お読み下さりありがとうございます。

ゴブリン編、なんか長くなりましたね( ̄0 ̄;)

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