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第八十七話「ゴブリン討伐戦⑥」



「いた………くはないけど、せっかくの新コスが汚れるじゃない!」


私は立ち上がって、埃を払う。

《全周囲防御》さんは相変わらず優秀だ。力任せの攻撃じゃ、私の防御は抜けないぞ。

それにしても、流石レイドボス。竜爪の攻撃でも簡単には倒れてくれないや。うーん、もうちょい強めなのいってみる?

……いや、さっきヤラカシタし、チート過ぎると後が面倒だしなぁ……。


「仕方が無い、地味にいこう」


とりあえずチマチマと削って、応援を待とう。

皆にも経験を積んでもらいたいしね。


…………っと、余裕見せてると危ないな。

バルバロッサが剣を振り上げるのを見て慌てて回避。やっぱり長期戦になりそうか。

多分、防御に関しては問題無いと思うけど、やっぱり子供の体力で長期になると辛い。


取り巻きのチャンピオンの方を見ると、〈紅蓮花〉とアネットさん、〈春雷〉とシャルちゃんの二手に分かれて相手をしてるようだ。

流石に銀ランクや金ランクで、危なげ無く確実に追い込んでいるけど、取り巻きもレイド仕様なのか時間が掛かっているようだ。


「コイツ、結構タフだな!」

「やっぱり通常のチャンピオンではなさそうです」


ゼクトさんが一旦距離を取り、やや後方にいたミシェールさんの隣り合わせに。

この二人って付き合ってたりするのかね?


「動き自体は大した事ありませんわ。カトレアさん風に言うなら体力特化と言う感じですわね」

「ああ、体力バカなら問題ねぇ。副菜はとっとと片付けねえと主菜を食われちまいそうだしな!」


はいはい、ちゃんと残しておきますよーっと。

ゴブリン専門家の〈紅蓮花〉とアネットさん組は言わずものかだろう。グレンさんが受け、安定してるみたいだし、向こうは問題無さそうだね。


「さてさて。こっちはどうしよう」


出来れば範囲攻撃は先に見ておきたい。

ヘイトが取れていれば通常攻撃は受け持てる。範囲は防ぎきれないが、その威力とどの程度の広さなのかが分かっていれば対処は取れる。

そのためには、もう少し削らないとなんだけど。


「〈火聖霊の槍〉!」

「カトレアちゃん、掩護するわ!」

「〈防御の加護〉を!」


後ろからの声に振り向けば、追い付いてきた後衛組。ユース、シシリー、アークの三人の姿もある。

高ランクの後衛を前に出してきたのか。確かに雑魚はなんとでもなるけど、コイツはヤバそうだしね。


「ん。私も少し本気を出す。〈爆裂炎弾(フレアボム)〉」


メルディも何かやる気を出したようで、ふんすと意気込んで放った魔法が肩口に当り大爆発、バルバロッサの上体が大きく揺らぐ。あれは効いてそうだなー。


ともかく、援軍が来てくれた。合間を空けずに魔法と矢が撃ち込まれる。

うん、レイド戦っぽくなってきたね。

ならば盾職の本領発揮と行きましょうか。


降り下ろされた剣を両腕をクロスして受け止める。重い一撃の衝撃を下に逃がし耐える。

続く横薙ぎは屈んで剣を上に弾いていなす。


レイドなんかのタンクはただ攻撃を受ければ良い訳ではない。「PTのATKが最大火力を出せる環境を作り出す」事こそが本来の役割りなのだ。

アクション系だと回避盾とかタゲを奪った人が逃げ回ってボスが走り回り、他のメンバーが追い掛け回すとか多いけど、本人は回避もしやすいし攻撃も出来るが全体としては火力が出ずに時間が掛かるパターン。

ボスを動かさず、皆が弱点なんかを攻撃しやすいように固定するのが上手い盾職なのだ。

ヘイト管理が無い対人戦ではまた違うんだけどね。


「ダンスのパートナーの交代は無しよ、最後まで付き合いなさい《挑発》!」


後衛組の弾幕にタゲを奪われる訳にはいかない。《挑発》スキルと私自身の攻撃で維持しなければいけない訳で、これが大変なんだけど。


迫る剣をステップで右にかわし、爪を振るう。大型はリアルだとやりづらい。視界は狭くなるし、何より上半身が狙いにくい。


左膝を斬りつけるが、右足の回し蹴りが来る。

かわしきれず、下に叩きつけられる形でそれを堪えた。大きく吹き飛ばされるのは避けれたけど、すぐには立ち上がれない。


「カトレアちゃん、危ない!」


シシリーが声を上げる。

見上げれば頭上に振り上げた剣が叩きつけられる寸前。なんとか立ち膝の姿勢まで持ち直し、剣を受け止める。


「くっ………」


衝撃を逃しきれず、再度転がる。

だけど、距離は取れた。

ノックバックを防ぐスキルなんかも有ったんだけど習得してないし、《全周囲防御》が優秀過ぎてその手のスキルの検証なんかしてなかったのが祟ったか。


「大丈夫!?〈癒しの………」

「あー、平気平気。ちょっと油断しただけだから」


駆け寄って来てくれた〈春雷〉の後衛で神官だと言うレイリアさんを制して私は立ち上がる。

うん、見た目は結構痛そうだったかもしれないけど、ダメージはゼロだ。


「相変わらず………オカシイ防御力ね……」

「まあ………カトレアさんですから」


〈紅蓮花〉のカンナさんの呟きに、アークが応える。

いや、なんかお仕事無くてごめんなさい。でもヒーラーの負担が少ない盾の方が良いよね!?

お読み下さりありがとうございます。

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