表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/116

第八十五話「ゴブリン討伐戦④」



「攻撃は確か大剣の通常とタックル………それから回転斬りの範囲」


攻略Wikiで見たバルバロッサの解説文を思い出しながら、先ずは離れた位置に引き付ける。

流石に細かくは覚えていないが、いつかソロで挑戦してみようと思って眺めていたのが役に立ったよ。

特に回転斬りは殺到したPCを纏めてデスペナに追い込む凶悪な攻撃で、バルバロッサは公式が出した「最もPCを殺したエネミー」ランキングでイベント戦が消えた後でも堂々の上位に入ったままなのだ。

───まあ、低レベルでお祭りした結果なのでエルグラの中で強いという訳では無いんだけど。


ともかく範囲攻撃で皆を巻き込まない位置取りを心掛ける。壁際とか障害物を背にして戦うのがレイドのセオリーだったけど、ここには良さげなものは無いので森の方に引っ張った。


「さあ、ヘイトを稼いでおかないとね」


バルバロッサの動きは遅くはない。むしろその大きさの割りに鋭い一撃を繰り出してくる。

横凪ぎの一閃を受け流す。


───重い。


いくら大きくてもゲームならノックバックの特殊攻撃でなければ飛ばされたりしないけど、現実の質量は小柄な私を簡単に吹き飛ばす。

弾いて上に反らし、前進。小剣を振るうが鎧に阻まれる。

やっぱり簡単な魔力付与くらいじゃかすり傷にもならないか。


「それじゃ、普通の〈炎の矢(フレアアロー)〉!」


放たれた阻まれる炎の矢が突き刺さる。

ダメージは軽微。でも効かない訳じゃ無さそうだ。


大剣の降り下ろしをステップでかわす。

ずうんと衝撃がくる。当たれば痛そうだなぁ。

この隙に何度か斬りつけるものの、鎧に覆われていない手首などもダメージは殆ど無さそうだ。


見た目通りにHPと防御力特化の重戦士タイプは確定かな。物理には強いが魔法は普通に効く典型的な魔物ならひと安心だ。

これを倒せば終わりなら、問答無用のチートスキルの応酬で倒してしまっても良いだろう。


だが、もし、あの「名も無き英雄達の挽歌」イベントが「実装」されたなら再沸きが七日後。攻略法を検証しておく必要がある。

相手の弱点、攻撃パターン、どの程度の攻撃力と戦力が必要なのか、等々。攻略手順が確定すれば、どんな強敵だろうと作業になる。勿論事故は付き物だけど

「こうすれば倒せる」方法が広まれば上位陣じゃなくたって倒せるようになるものだ。

────運営や開発者が攻略出来る難易度調整をちゃんとしてれば、だけど。


今回がただのイレギュラーなら良いんだけどね。

可能性がある以上、検証はしておきたいんだ。



バルバロッサの攻撃を受け、かわしながら、手持ちの手段を試した所、《火魔法》は有効。《土魔法》の〈大地の槍(アースジャベリン)〉や《剣魔法》での普通の強化は物理よりなせいか効きにくい。

予想はしてたけど、やっぱり純粋な魔力の攻撃が一番有効だろう。

盾持ちなんかが壁になって、《火魔法》使いなんかが遠距離から削るのが正攻法かなー。


ただ───この重い一撃に耐えられる者がどれだけいるか。

この世界での危険度は少なくとも6。軍団としてなら7に相当するレベルだろうか。攻撃の重さなら危険度7のドレイクに劣らない気がする。アイツは脳筋に突進してくるばかりだったし。

私は受け流すか、正面から受け止め衝撃を下に逃がし耐えているけど《全周囲防御》があってこそ出来る事。その質量の攻撃をまともに受けたら普通の金属製鎧ではキツいかも。


「さて、そろそろこちらも反撃と行きますか」


あんたも蚊が刺すような攻撃ばかりじゃ、面白くないでしょう?


「岩も切り裂く竜の爪、自慢の防御力で耐えて見せなさい!〈炎竜爪〉!」


小剣を《空間収納》にしまって右腕を変化。《竜魔法》は伊達じゃない!

バルバロッサの剣撃を掻い潜り、懐に飛び込んで爪を振るう!

鎧を切り裂き赤黒い鮮血が舞う。


「GYAAA!!?」


流石、竜の爪は効いたでしょ。

だが致命傷にはほど遠い。レイドボスのHPは同レベルの通常エネミーとは桁が違うけど、そこら辺も一緒っぽいね。簡単には倒れてくれなさそう。


硬直は一瞬、バルバロッサは剣を振るう。

袈裟斬り、そこから剣が跳ね上がる二段斬りをかわし、再度爪を振るう───が、今度は浅い。僅かに太腿を傷つけただけ。


「これは結構大変そうだなぁ」


重い攻撃に対処出来る防御力のある盾が数人。物理なら防御を抜ける攻撃力。HPは高そうだから魔法職でも高火力でないなら、今回の規模くらいは欲しいかも?

実入りは期待出来ないのに、それだけの戦力を再沸きの度に確保するのは大変だろう。ゲームならレベリングっていう旨みはあったんだけど。


「まあ────そこら辺は偉い人に任せて、とりあえずHPを一本削ってみますかね………っと!」


バルバロッサ戦は二本あるHPゲージの一本……つまり半分まで削ってからが本番。

攻撃パターンが変化、ステータスが増加するレイドボスにはありがちなギミックだけど、加わる回転斬りが近接殺し。軒並み近接が倒れると後衛にタゲが飛んで暴れまわり死体の山を築いたとか。


横からきた剣をスライディングでかわし、竜爪を突き入れる。深々と横っ腹に刺さりダメージは与えたものの。


───抜けないっ!


固い筋肉に阻まれ離れるのが遅れた所に、バルバロッサのひじ打ちが入った。

衝撃で抜けたものの、私は大きく吹き飛ばされた。


お読み下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ