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第八十四話「ゴブリン討伐戦③」



「これで、最後ですわ!!」


シャルちゃんのボディブロウが決まって、辺りのゴブリンは全て倒れた。

後ろに逃した一般ゴブリン達やゴブリン村に向かっているゴブリンはまだまだいるけど、第二陣の上位種はほぼ掃討できたかな?

大分数は減っていたとは言え上位種相手だったけど、この場にいるのは私とシャルちゃんを除き銀ランクばかり。怪我人も無し、流石だね。


「後は未だ動かないデカブツだな」

「まるで待っているみたいですね」


ゼクトさんが奥を指す。


そこにいるのは如何にもボスといった感じの、大剣を背負い、トゲトゲな感じの肩当てが特長的な赤い鎧を着た三メルクもありそうなゴブリンと、ゴブリンとしては大柄なタイプが二体。

あの赤い鎧、どっかで見た気がするんだよねぇ。


「それにしても、ダンジョンでも見た事が無いが何処から出てきたんだ、あれ?」

「あの大きさで出てくるのは無理そうだが……まさか他にも入口が……?」


〈小鬼の迷宮〉の専門家でもある〈紅蓮花〉の二人が首を捻るけど、確かにあれが出てくるには入口は狭すぎる。

ほとんど出た形跡も無かったのに、短期間でこれだけの数に増えているのもおかしい。

まるでゲームのイベントのように………?


「あ、あれ百鬼将バルバロッサじゃない?」


かつてエルグラに存在したレベリング用のイベント戦。定期的に辺境の村に襲ってくるゴブリン軍団のボスが赤い鎧の大型ゴブリン、百鬼将バルバロッサだ。

私が始めた頃には既に過疎コンテンツになっていたけど、レベルキャップが30くらいの頃は低レベル帯の育成に人気があったらしい。それこそ低レベルの職で村からゾンビアタックをして攻略するお祭り系のイベント戦だったけど、お手軽にレベリング出来るIDインスタントダンジョンができてから過疎ってしまい終には消えてしまったコンテンツだ。


「カトレアちゃん、あれ知ってるの?」

「あー、前に何かの本に出てきたような?」


うん、実際に私も話を聞いただけだし。

百人規模で戦うらしいけど、参加者居なかったんだよね。美味しいのは経験だけで、それならデスペナも無く一日一回の制限は有るけど、回復POT(ポーション)などの消耗品とお金も貰えるデイリーのIDの方が良い。

話のタネに村外れにポツンと立っている普通のレイドになったバルバロッサを見た事があるだけだ。


「他の二体はチャンピオンだな。危険度は4だ」

「なら少なくともボスはそれ以上って事か。大物は久しぶりだぜ」


グレンさんの説明にゼクトさんがニヤリと笑う。

まあ危険度5以上は王都周辺じゃあまり見掛けないしね。てか、そんなのがごろごろしてたら人が住めないよね。住民全員が勇者の末裔とか実は魔物とかじゃないんだから。


このゴブリン軍団はこの世界の世界観からすると謎が多いが、エルグラのイベント戦が再現されてるとしたら?あのイベントでも確かダンジョンで異変があってとかいう設定だった気がするし。まあ、あくまで予想だけど正解に近い気がする。


イベント戦は適正レベル7PTの連合を組むのが想定されていたらしい。実際は適正以下でゾンビアタックをしてたんだが、これは運営の想定外だっただろう。

1PTは最大7人なので49人。こちらもほぼ同程度の人数はいるけど、これはゲームじゃない。

〈復活〉魔法なんてない。1デスは本当の死だ。


これ、いけるのか? 死者が出てからやっぱり仕切り直しなんて出来ないよ?


「………強いのね?」


私はどうだろう?防御力も上がったし《全周囲防御》もある。多分大丈夫。でも他の人は?

嫌な汗が流れる。


そんな私にアネットさんが声を掛ける。


「おそらく」


私の固い声にちょっと目を閉じて。

次に開いた時には普段の少しおどけて見せるアネットさんとは別の金ランク冒険者の顔に。


「ここで倒しておかなければ近隣の村に被害が出るわ………やりましょう」

「………だな。王都にゃまだ冒険者もいれば騎士団もいるが、南に向かったらまずい」

「なに、後ろのヒヨッコ共はともかく後衛組が追い付けばなんとかなるだろ」


グレンさん、ゼクトさんの言葉に全員が首肯く。


ゲームは討伐失敗でも村は無くなったりしないけど、現実では私達が負ければ先ずはゴブリン村が、そして近隣の村や王都もしくは南のカレルナが襲われる。


ちらりと防衛戦を続けるゴブリン村を見る。

善戦しているようだが、私達が勝てない相手にクロガネと数人の精鋭程度では守りきれるとは思えない。


やるしかないんだ。

周りには頼もしい仲間もいる。やってみなけりゃ分からない事もある。相手がゲーム(理不尽)だって負けれない。


「私がバルバロッサ?を引き付けます。チャンピオンは任せますので、お願いします」

「一人でか?………いや、それが最善か」


反対しかけたグレンさんだが私の防御力を思い出し納得する。

シャルちゃんはいつも通りに拳を握る。


「先ずは取り巻きを排除。ボス戦が始まれば、その間にマーカスさんが後衛組を前に出してくれるだろう。しばらくは頼む」


私はグレンさん、そして武器を構える皆に首肯く。


「高火力ATKは格好良いけど、やっぱりレイドの花形はMT(メインタンク)!やああってやるぜー!」


私は小剣に武器を持ち替え《剣魔法》で強化。防御に専念するには取り回しが利く方が良い。


「村の平和は私達が守る、来なさいバルバロッサ!〈挑発〉!!」


お読み下さりありがとうございます。

誤字報告もありがとうございますm(_ _)m

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