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第八十三話「ゴブリン討伐戦②」



「中央、開けた穴を死守せよ!」


マーカスさんの声に鉄ランク組が前に出る。

駆出しとは違いベテラン勢も多い。奥に進ませまいと押し寄せるゴブリン達に、盾持ちが立ち塞がる。


「偵察任務じゃ消化不良だったんでな、暴れさせてもらいますぜ!」

「オラアアア!」


乗り越えようと迫るゴブリン達を〈叢雲〉のウルガさんとグルーニさんのコンビが押し戻し、そこを私とシャルちゃん、それからアネットさん以下高ランク組が駆け抜ける。

通常のゴブリン達を彼等が抑えている間に、その後ろに控える上位種を食い破る!


戦士(ファイター)と……後ろには(アーチャー)魔術師(マジシャン)もいますわね」

「なに、雑魚には変わりないさ」


〈春雷〉のミシェールさんが細身剣でゴブリン戦士の肩を貫き、ゼクトさんが止めを差す。

雑魚と言うが、駆出し組にはちょっと辛い。一匹ならともかく、数が多い。出来れば一気にボスクラスを片付けたい所だけど、普通のゴブリンと違って頭が倒れれば逃げ出すとか無さそうだしなぁ。


「まずは数を減らすぞ。こいつらは銅ランクにはキツいだろうから、後ろに回せない」

「だな。デカイやつは後回しだ、さっさと前菜を片付けるぜ!」


〈紅蓮花〉のグレンさんの言葉に、ゼクトさんがにっと笑う。

この場に来ているのは各PTの前衛で〈紅蓮花〉のグレンさん、セドリックさん。〈春雷〉のゼクトさん、ミシェールさん。それからアネットさんと私とシャルちゃんの七人。対する戦士階級のゴブリン達はざっと見て七、八十。


「一人当たり十匹って所ね」

「まあ余裕でしょう。後ろには怖いお姉さん方が控えて下さってますからね」


ミシェールさんがゴブリン達を見回し呟き、セドリックさんがちらりとこちらを見る。

うん?アネットさんはそっちだよ?


「そう言えば勢いでこっちまで来ちゃったけど、良かったですかね?私達、鉄ランクですし」

「何を今更。カトレアちゃん達は「可愛いお姉さん方」枠でしょう?」


怖いと言われたのがアレなのかセドリックさんをちょっと睨んでアネットさんは笑う。


「いつの間にそんな枠が……」

「危険度7の魔物を単独で狩る子を駆出し組と一緒にする訳ないじゃない?シャルちゃんだってカトレアちゃんとペアでレンゲンタットで狩りしてたって言うし、銀ランクでもそこまで腕の立つ冒険者は少ないわよ?」


まあ事実なんだけど、いつの間にそんな噂が広まってたんだ?ギルドに顔を出しても普通の対応だったと思うんだけど。


「強え奴は一目置かれる。そう言う事だ」

「今回みたいな合同依頼なんかでは、他のPTの噂くらいは聞いておいた方が良いわよ?」


剣を振るいながらもゼクトさんとミシェールさんが苦笑しながら言う。

ああ、他の面子が優秀とは限らないものね。それは先日痛感した所だ。あれから〈竜滅の剣〉が戻って来た話は聞かないけど、どうなったのやら。


ともかく、期待はされてるなら応えないといけません。クックック、我が隠されし邪眼に封印されし眷属の力、見るがいい!


私は先頭に進み出る。やっぱり新コスとか新型の機体に乗り換えとかしたら、新必殺技とか披露しないとねー。


「遥かなる悠久の時の封印に囚われし氷獄の竜、その息吹きの前に凍てつきなさい!〈氷結の吐息(ブリザードブレス)〉!!」


放射状に放たれた《竜魔法》のブレス吹き荒れ、辺りを冷気が覆う。極寒の大気に相手は死ぬ!ってやつだね。

最近あまり本気で《竜魔法》とか使って無かったし、たまにはいいだろう。


「これが手加減というやつだよ」


メルディは《火魔法》使いだからだけど、ちゃんと森林火災を考慮して氷系のブレスにしてみました。やっぱり環境の事は考えないとね。

とりあえず、これで数を減っただろうから残ったゴブリンを掃討してたボス戦だー!



ブレスの冷気による霧が晴れて。


「これはひどい」


誰かが呟いた。

見れば、第二陣のゴブリン上位種の半数以上が氷漬けに。綺麗な───ではないか、ゴブリンだし───氷柱が乱立し、がらんと、微妙なポーズで固まったゴブリンが倒れて壊れる。


………え~と。こういう時は、アレだ。


「てへぺろ♪」

「なんか可愛くしても惨状は変わりませんわよ?」


タメ息を吐いて言うシャルちゃん。

うん、なんか慣れてきたね、シャルちゃんは。


ほら、こういう格好をしたら三大VIP魔法とか使ってみたいのがお年頃の乙女の夢というか。「爆ぜろリアル~」とかやたらと長い詠唱とか、やりたくなるものなのです。


「こりゃスゲエ。姉さんのとこの〈眠り姫〉と良い勝負になりそうだな」

「噂には聞いていたけど……危険度7を単独討伐も納得ですね」

「いや、あれであの防御なんだよな。そっちの方がおかしいぜ」


ゼクトさん、ミシェールさん、グレンさんが呆れたように言う。


「だから言ったじゃない、うちの弟より強いわよって。それに…………まーだ隠してる魔法とかあるんでしょ?」

「そう言えば王蚕の時にこっそり何か使ってましたわね………」


流石に《空間魔法》は交通面のインフラが未発達な世界では秘密にしないと不味い気がするのでノーコメントです。

エルグラの時の隠し上位職の魔法は使えないんだけどねー。本来は防御特化の魔法職で私としては剣より魔法の方がイメージしやすいんだよね。


「さ、さあゴブリンはちょっと減らせたけど、まだ本命はこれからだから!頑張りましょう!」

「ちょっと……?」


とりあえず第二ウエーブも後少し。

ゴブリン討伐戦はこれから本番だよ!

お読み下さりありがとうございます。

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