表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/116

第八十二話「ゴブリン討伐戦①」



「総員………突撃!」

「「「「おうっ!!!」」」


ギルド長の号令に近接組が走り出す。ゴブリン達もこちらに気付き迎撃に駆け出す。


「後衛、撃てー!味方に当てるなよ!」

「……それはちょっと難しいかも」


背後にメルディの不穏な声が聞こえた気がするけど、私とシャルちゃんはゴブリンの集団に向けて走る。走りながら保険の為に転移ポータルを幾つか設置。この手間が無ければ《空間魔法》の転移も使い勝手が良いんだけどなぁ。


ドオンと、前方で大きな爆発。展開していたゴブリンの左翼が崩れる。これはメルディの範囲魔法か。良い感じに威力は抑えてくれたみたい。セオリー通りの初手遠距離攻撃はゴブリン達の出鼻を挫き、そこに前衛組が飛び込み乱戦になった。

一番槍はスピードは流石のシャルちゃん。後衛組の矢を受けて体勢の崩れたゴブリンに必殺の右ストレート!


「まずは一匹、ですわ!」

「続けて行くぜぇ、〈練魔波刃(ショックウエーブ)〉!!」


次いで〈春雷〉のゼクトさんが前方に広がる魔力を乗せた剣風の範囲剣技を放ち、後続が飛び込む。


「俺だってゴブリンくらい!」

「前に出過ぎるなよ、ヒヨッコ!」

「さあ煉獄より来たりし悪鬼よ、我が剣の錆にしてやろう!」


ゴブリン討伐戦────いや、ゴブリン村防衛戦は始まった。



討伐隊は総勢四十三人。

率いるのはギルド長にして現役金ランクのマーカスさん。流石に全盛期程ではないというけど筋肉質な体躯で太刀を背に指揮を執っている姿はとても六十代とは思えない。

他の金ランクは〈幻光〉アネットさんと仲間の〈眠り姫〉メルディの二人。

銀ランクは〈紅蓮花〉の三人と剣士のゼクトさんがリーダーの〈春雷〉というPTの四人。

私達五人と〈叢雲〉の二人を含め鉄ランクが二十人。残りの十三人は銅ランク。


馬車と徒歩で新しいダンジョン入口に向かい、そこで一泊。斥候の数人が南のゴブリン村に向かうダンジョン産の本隊と思われる集団───その数二百程を発見。翌朝、その側面を突く形で戦闘は開始した。


ゴブリン討伐としては金ランクが三人もいるのは異例で過剰戦力かと思われたが、森の状況は当初の予想を遥かに上回り、ダンジョン産ゴブリンの数は更に増えていた。もはや単純に外に出たゴブリンが増えただけとは思えない数になっているが、原因の調査は後。


地元産のゴブリン村は()()()ゴブリンの村とは思えない防衛戦を想定とした柵や塹壕が掘られ、倍以上のダンジョン産相手に奮戦していた。

急拵えの物っぽいけど実用的なそれらを使い、ゴブリン達は突出せずに柵の向こう側から投石や弓、取り付いたゴブリンには柵の間から槍で攻撃を行っている。

ゴブリンはそれなりに知性はあると言っても、これはない。間違いなくクロガネの手によるものだろうね。本当に何してるのよ。


マーカスさんは村から出てこない限り村のゴブリンと共闘を指示。先ずはダンジョン産の殲滅を選んだようだ。もしかして私達の報告の情報提供者の正体に気が付いた?

ダンジョン産の戦力はゴブリン上位種がかなりいるようなので賢明な判断だと思うけどね。中心になんかでっかいゴブリンが数匹いるし。なんかゲームのイベント戦っぽくなってきたよねー。


「───と、余計な事を考えてる場合じゃないか。新コスお披露目戦だし、気合入れるわよ!〈巌山刀・政宗(エスカリボルグ)〉!」


《土魔法》で作り出した大剣は以前とは違ってちゃんと剣の形。私だって成長してるのだ!

それを振り回しゴブリンの一体を凪ぎ払う。


「カトレアちゃんは相変わらずね。私もちょーっとだけ本気を見せようか」


いつの間にか隣に立っていたアネットさん、《気配遮断》で姿を見失ったと思ったら、前方のゴブリン二体が首から盛大に血を吹き出し倒れ、傍らに現れる。

見た目こそ派手ではないが、あれはヤバイ。認識していた筈なのに全く知覚出来ずに相手を倒せるとか、ほとんどチートレベルだよ。


「とりあえず初手はこっちが優勢、と。問題は奥にいるでっかいのね。ゴブリンに詳しい訳じゃないけど……見た事がないわ」

「私も初めてです………ロードは普通のゴブリンと大きさ自体は然程違いはないみたいだったけど…」


でも、なんか見覚えが………?


「あれはおそらく……特種個体だね」


会話に入ってきたのは〈紅蓮花〉のセドリックさん。私達に並び剣を振るいながらだが、まだまだ余裕の表情。ダンジョン講習の初日の座学で基本的な事を講義してた時は普通に見えたが、こうして肩を並べて戦ってると流石に銀ランクなんだなと思う。

長期戦を見据えた無駄の無い剣で、一撃必殺というより足を狙い行動不能に追い込んでいる。


「固有の成長を遂げた個体はやっかいだ。雑魚は鉄や銅ランクに任せて、我々はあれのやりたいね」


……所謂ネームドとかって事かな。名前あるか知らないけど。

まあ戦ってみた感じ、普通のゴブリンはダンジョンで遭遇したのと同程度で、クロガネのとこの精鋭のようなのは居ないみたい。

ここは突破口を開いて一気に中心に殴り込みたい所だけど………。


「前衛、中央から散開!デカイの行くぞーー!!」


後方からマーカスさんの声が響く。

見れば、メルディを中心に魔法使い組が魔法の発動体勢に入っている。

考える事は一緒って事ね。嫌な予感に、私達は慌てて左右に分かれ、射線から逃れる。


「早く帰って寝たいです。これで終わってください〈白色大焦熱(バーストエンド)〉」


ゴブリンの群れを巨大な白い炎の奔流が呑み込む。もうなんて言うか、そうとしか言えないや。視界が白くなって観察なんて出来ないよ。


流石に全力じゃないだろうけど、あの子ここが森の中だって忘れて無いよね?

巻き込まれたゴブリン達は数十はいるだろうか。中央にぽっかりと空白地帯が生まれた。うん、ダンジョン産だから死体がごろごろしてないのは助かるよ。そうじゃなかったら、大変な光景が展開していた気がするよ。


お読み下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ