第八十一話「凄い防御力の水着とかありました」
その日、ダンジョン拠点からの報告は無かった。
アネットさん達との再会の後、ランチに行ったりギルドで資料を読んだり、やきもきしながら報告を待ったけど他のPTは戻ってきていないらしい。
何かあったのかも───と思わなくもないが、予定は本日中なので、まだこれからかもしれないし、もう少し探索の足を伸ばしていれば明日になる場合もあるだろう。私達だってクロガネに会って無ければ成果もなく予定より探索範囲を広げていたかもしれない。
結局、報告が入ったのは翌日になってからだった。
帰還したのは南を担当したウルガさん達〈叢雲〉。ダンジョンから南に丸一日程の所でゴブリンの集落を発見。しばらく様子を伺った所、散発的に十匹程度の集団が出入りしているらしい事。また戻って来たゴブリン達は皆、手傷を負っているようだった。
ダンジョン産達とどこかで戦闘になっていて、増援と負傷者が帰還していると考えられた。
更に夜半になってから〈紅蓮花〉の帰還報告があった。こちらは新しいダンジョンの入口に到着後、ゴブリンの痕跡を辿って南下、そこで行方不明だった負傷した駆出しのPTに遭遇。
彼等はしばらくゴブリン狩りをしていたが森の奥で集団に遭遇、逃げている間に道に迷っていたらしい。
問題はゴブリン達に追われていた所、冒険者の三人に出会い一緒に行動していたが、ゴブリンキャプテンと思われる個体を中心とした上位のゴブリンの群れに襲われ、冒険者三人が彼等を囮にして逃げてしまった事。外見からおそらく〈竜滅の剣〉の三人だと思われる。
これはマズイ。なんかやらかすキャラだと思ったら、このパターンかー。
その後、傷を負いながらも逃げていた所、別のゴブリンの集団に遭遇。そのゴブリン達は彼等には興味を示さず追ってきていたゴブリンキャプテン達に襲い掛かった。その間になんとか逃げ延び、〈紅蓮花〉に保護されたようだ。
───そのゴブリンってクロガネじゃね?大人しく自分の拠点だかに引っ込んでるように言ったのに、何やってるんだか……。
ともかく、私達と〈叢雲〉〈紅蓮花〉、そして駆出し組からの報告からダンジョン産の拠点が南東に存在し、少なくともゴブリンキャプテン以上を含むかなりの数がいる事は確定。
現在、討伐隊の集まり具合いは七割といった所だったが、戻って来た二つのPTも参加、出発は三日後に決まった。
私達はランちゃんのお店を訪ねた。そう、漸く私とシャルちゃんの新装備が完成したのだ。
シャルちゃんは白を基調としたフリルいっぱい夢いっぱいのミニ丈の甘ロリ系のワンピース。ちょっと幼さが全面に出ている感じのふんわりお嬢な感じで可愛らしい。ウエストのおっきな飾りリボンがポイント高い。胸当てとガントレットを着けると違和感あるかなと思ったが、フリフリ衣装で戦うヒロイン系な感じ。
金髪、ツインドリル、ロリ巨乳で更に甘ロリ服の数え役満だ!
対する私は黒を基調の改造着物系の和ゴス。
初代っぽく白と黒はいいんだけど、ロリ系で来ましたかー。ウエディングドレスで戦うヒロインのアニメとか、ゲームではおおよそ戦う格好と思えないコスはいくらでもあったけど。
注文通りに肩が大きく空いた改造着物で、紅い薔薇っぽい花と金の刺繍が各所に施され、可愛いんだけど、厨二感満載と思ってしまうのは黒歴史があるからか。今なら黒竜波とかエターナルなブリザードとか撃てそうだ。
「二人ともすっごく可愛いよ!」
「とっても素敵よぉ。やっぱり女の子は可愛いのが一番ね!」
着替えてお披露目。シシリーとランちゃんの女性陣(?)が歓声を上げる。
まあ、自分で言うのもなんだけど似合っているとは思う。満足できるキャラクリが出来て自キャラ萌えな感じ?金髪和ゴスってミスマッチな様で結構好きなんだよね、和服の外人さんみたいな感じで。異論は認めよう。
シャルちゃんは、言うに及ばず。金髪ロリに甘ロリが似合わない訳がないでしょう!
「見た目は勿論、耐久面でも高ランクの冒険者に相応しいわよ。王蚕生地の衝撃吸収は〈付与魔法〉で更に強化されてるから、そこらの金属製の鎧より打撃に強いわね」
〈付与魔法〉は自面を見るとファンタジー物の定番のようだが、「魔力を付与するして別の効果を追加」する魔法ではなく、言わば品質を上げる魔法だ。ゲーム的に言うとただのロングソードがロングソード+1になった感じだろうか。
火属性を付与するとかは〈火魔法〉の分野。魔力の問題で、火というエネルギーを維持するには魔力が必要で物に付与した所で込めた魔力が枯渇したら消えてしまう。〈剣魔法〉も大雑把な分類では付与に近いけど、こうした魔法を維持する場合は供給を続けなくてはいけないのね。〈土魔法〉で操作した土はそのまま残るけど、壁なんかを作った場合は強度的に「維持」出来なくて壊れたりする。
なんか色々矛盾もある気がするけど、スキルと同様「後付け」ルールっぽいよねぇ。まあ、この世界はそういう物だと割り切るしかないよね。
話が逸れたけど、〈付与魔法〉は物の持つ力を引き出し増幅する魔法、レアな素材程上げ幅が大きい。王蚕の糸は、流石に伝説レベルの素材ではないけどね。
「服なのに金属鎧並みってすげーな」
「お二人は前衛ですから、本来は防御重視で重装備なんですけどね……」
男子二人はデザインより性能が気になるようで。
でもこれで防御面での懸念はだいぶ解消されるかなー?今までも〈全周囲防御〉のおかげで無事だったけど、ゲーム仕様なら基本防御力が上がれば効果は上がる筈。別に危険度の高いレイゲンタットの上層なんかに行きたい訳ではないけど、ダンジョンでは何が起こるか分からないからね。
まあ一番は、シャルちゃんの防御力が上がった事かな。クロガネとの一戦でもダメージ受けてたし。いくらアークの回復があっても痛くない訳じゃないからね。王蚕やクロガネの時みたいに別の相手を任せる時もこれで少し安心かな。
「ランちゃん、良い装備をありがとう!」
「気に入ってくれたなら嬉しいわ♪他の子達も、またいらっしゃい☆」
「頑張って貯金しなきゃ~」
ばちこん☆とウインクするランちゃん。
見た目はともかく、腕は確か。またお世話になりそうだね。
ともかくゴブリン討伐戦の準備は万全、かな?大規模戦闘は初めてだし、がんばるぞ!
お読み下さりありがとうございます。
被ダメージ=(相手の攻撃力×ダメージ振れ幅補整)-防御力×各種倍率補整(環境属性補整、スキル等のダメージ耐性、攻撃側倍率補整など)