第七話「仲間を求めて」
次の日、私はギルドに来ていた。
「今日は岩食いトカゲか。こいつぁ皮が厚くて、見た目より可食部が少ないのが欠点だが、味は悪くないぞ。肉質は固いが脂が旨い。熟成をさせて、更にタレで漬け込んでみるといい」
流石ジャンおじさん、食べ方にも詳しい。脂が良いならミンチにしてもいいかも?
いつものように解体をお願いして、私はエリンさんに声をかける。
「エリンさん、ちょっと相談したいんですが‥‥」
「あら、改まってどうしたの?」
あれから色々と考えてみたが、やはり王都まで行く方が良い気がするので、その辺りを聞いてみようと思ったのだ。
「ダンジョンの話は聞いてます?」
「ええ、神造ダンジョンですって?人が集まるようになったらギルドも人手が足りなくなるだろうし、ここも改築するか、って話が出てるのよ」
「それで、どこかのPTに入れてもらうかしないといけないかなーと思いまして」
エリンさんは、私の言葉に変に驚く。
まあ、これまでずっとソロだったし驚かれるのも無理はないか。チートなスキルを隠す為もあったし、主にお肉ゲットの為の狩りができれば良かったので、ギルドの仕事はしてないんだよね。
ついでなので冒険者ギルドの制度をお復習しておこう。
冒険者にはお約束の冒険者ランクがある。最下位が銅、次が鉄、銀、金という順で、最高位が白銀。
身分証にもなる認識記章にも同じ金属が使われる。
ランクはポイントを貯めて上げるのだが、基本的にギルドの依頼を請けるもので、魔物を適当に狩っても、素材などで稼げるがポイントは入らない事になっている。
例えとしては、牧場を襲う狼がいて、討伐依頼が出されても、狼ではなく、狼の本来の獲物である兎を狩ってポイントを稼げると困るから。
因みにポイントは減点もあって、正当な理由もなく依頼の破棄をしたり、素行が悪かったりするとマイナス。犯罪は資格剥奪になる。
ポイントが貯まったら審査試験があって合格出来れば上のランクになれる。
そんな訳で、討伐依頼対象ではなく好き勝手狩りをしている私は、いまだに銅ランクだったりするのよね。
冒険者ランクは実力と信用だ。普通はランクアップを目指すものだが、クロフォードでは毎日のご飯優先なのです。今は大きい獲物を捕ってこれるけど、最初はホーンラビット一匹捕るのも大変だったしね。当たれば一撃でも、獲物を探したり、追いかけたりは普通の八歳児には厳かった。
話が逸れたが、PTを組めば私だけの都合では動けないしって事で、ずっとソロ。
それと、町の人は慣れたのでいいけど、前世では社交性皆無だったのでPTは避けてた。エリンさんはその辺りも解ってくれてるのだろう。
「カトレアさんがPTとは成長したねぇ」
いや、子供扱いの方だったかも。
「まー、今回はダンジョン攻略しないとなので、ソロでは無理だったら困るんですよね。素材集めとかだったら臨時でもいいけど、恐らく試煉系なので信頼できる方がいいよね」
「なるほどね。ここのギルドで活動してる人は何人か‥‥カトレアさんと同類ですからねぇ」
つまり、冒険よりもご飯が大事。
「ですよねー。で、やっぱり王都がいいんでしょうか?」
「もしくは、ロアーヌ領ですかね。あそこのダンジョン一部で需要あるので、それなりに冒険者もいると思います」
確か、通称「蜘蛛の巣」。蜘蛛ばかりのダンジョンだが、良質の糸が採れて、お金持ちの貴族には人気の服飾工房があるんだっけ?
私は潜りたいと思わないけど。
「どっちにしても遠いなー」
「噂が広まれば、向こうから来てくれると思いますが、肝心のダンジョンはまだですし、しばらくは先でしょうね~」
王都まではいくつかの町を経由して、約二週間らしい。私には《竜魔法》で飛ぶという裏技があるけど、短時間しかもたないし、子供の脚という点で差引きゼロ、やっぱり同様の期間は掛かりそう。
《空間収納》で荷物や食料は準備さえ出来れば問題ないけど、旅の間のほとんどは野宿になる。いくら街道沿いは比較的安全でも、一人旅ではゆっくり休めないだろう。
やっぱり結界魔法みたいのは欲しいなぁ。侵入禁止とか、虫除けとか。
スキル生えろー、生えろー、生えろー、。
念じてみた所で、そんな簡単に取得出来たりしない。転生者はイージーモードって言ってたのに
、なかなか増えてはくれない。何かあるんだろうか?
「そう言えば‥‥」
「お、まだ居たのか。家の分の解体終わったぞ」
エリンさんが言いかけた所で、ジャンおじさんが戻ってきた。プリプリのブロック肉を受け取る。
マリアンさんにお願いして、まずは熟成かー。
あ、味噌漬けとかでも有り?色々試してみたいね!
「じゃ、戻りますね。ありがとうございました」
美味しそうなお肉にモチベを取り戻した私は、家に帰り、マリアンさんにお肉を預け、父の書斎に。
ダメかもしれないが、王都行きの許可をもらわないといけない。一週間ほど滞在してPT募集するとしても、一月。長い。
こんなに家を離れた事はないので微妙だけど、私の啓示の為だから許してくれるかも。
「‥‥‥ダメだ」
父は固い声でそう言った、
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