第七十三話「vs転生者」
『まずは目の前を片付けないといけねーな！』
先程までとは違い、ロードの剣に魔力が乗る。ここからが本気という事か。
おそらくは《剣魔法》かそれと同類のスキル。淡く光る剣は攻撃力を上げるタイプか？
「ようやく本気を見せて下さるようですわね。わたくしも全力でお相手致しますわ！」
シャルちゃんも〈再装填〉でガントレットに魔力を込め、ロードに突進する。
剣と拳がぶつかり魔力の光が飛び交う。
アニメとか漫画なら「オラオラオラ～」とかドガガガガとか擬音が聞こえてきそうな応酬だ。
「そこですわ！〈雷光拳〉！！」
降り下ろしたロードの剣が空を切り地面を削った僅かな隙にシャルちゃんの拳が遂にロードの腹部に届くと同時に雷属性の爆発が起こり、その身体を後方に吹き飛ばす！
『グッ、やるじゃねーかロリッ娘が』
ロードは大したダメージもないように、僅かに頭を振って起き上がる。シャルちゃんも、それが分かっているようで追撃には入っていない。ロードが立ち上がるのを待って、構え直す。
「強い、ですわね………ですが、通らない相手では、ありませんわね！」
ロードに突進するシャルちゃん。
うん、強いけど、力が及ばない相手ではない。
───現時点なら。
『楽には勝たして貰え無さそうだが……さっき覚えたスキル使わせてもらうぜ……〈加速装置〉！』
「！！」
シャルちゃんの突進を半歩横にかわし、一気に加速。側面に回り込み肩から体当たり。
今度はシャルちゃんが地面を転がる。
「あれは……シャルちゃんのスキル…？」
シシリーが呟く。
転生者の〈見て覚える〉！シャルちゃんの〈加速装置〉をコピーされたか……。
私の称号のような転生特典のチートスキルも危険だが、一番警戒していたのはラーニングだ。私もやろうと思えば出来ると思うけど、戦闘中でも相手のスキルを覚えられるのはチートと言わざるを得ない。
勿論、使いこなせなければ意味は無いので、無差別に覚えようとは思わないけど。
ともかく、これでシャルちゃんの初速のアドバンテージが消えた。立ち直りは元々ロードが有利。
シャルちゃん、速さで圧倒出来ない相手とはあまり戦い慣れていないだろうし、防具が間に合わなかったのが悔やまれる。
「シャルロッティさん、こちらに！回復を！」
「………まだ、いけますわ」
アークが叫ぶが、少しふらつきながらもシャルちゃんは立ち上がる。
その表情は、絶望や恐れではなく戦士のそれだ。
『……いいねぇ。幼女をいたぶる趣味は無いが、やっぱりPVPは強ええ奴とやるから楽しいからな。あんたは合格だ』
ああ、こいつも戦闘狂か。
エルグラでも対人メインのギルドとかあったけど、あの連中はホント好きだよね。私は二つ名なんかで呼ばれてはいたけど、ギルドで攻城戦は参加したけど、一対一の個人戦の方は面倒であまり出る方ではなかった。
あれの常連はランキングの為にひたすら張り付いてたからなー。
ロードも言動からしてあの手のタイプな気がする。
再度構えをとるシャルちゃんに、ニヤリと笑い剣を向ける。
気丈に戦う姿勢を見せるシャルちゃんだけど、そろそろスタミナも限界だろう。速さでロードが上回った現状では長くは持たないかな。
………おそらく、まだ見せていないスキルも持っているだろうしね。
ロードはチラリとこちらを伺うが、防戦一方───に見える私の姿を確認しただけ。上手く足止めされていると思ってくれたなら良いんだけど。
「行きますわよ！」
『来やがれ！』
ダメージの為か、動きに若干先程までのキレは無いが二人が激突する……が、やはり手数でシャルちゃんが押され気味か。
こちらの準備はかなり進んだ。二人の動く範囲が小さくなってきたので当初の予想よりは嵌まってくれそうか。
後は仕掛けるタイミングなんだけど……。
「……ッ！」
横に薙いだロードの剣がシャルちゃんの胸当を削る。攻撃よりも回避に集中しているが、技の出足の隙も少なくなったお陰でかわし切れていない。
そのまま羽上がった剣はなんとか身体を捻り避けたものの、大きく体勢が崩れるシャルちゃん。
『もらったぜ、〈錬魔斬〉！』
ロードの剣に更に魔力が集中する。
───ここだ！
「〈跳躍〉！！」
《空間魔法》による短距離転移で、私はロードとシャルちゃんの間に割り込む！
『何ぃ！？』
渾身の一撃を《全周囲防御》に阻まれ、ロードが叫ぶ。
『シャルちゃんはやらせないわよ！』
私が特化したのは個人戦よりも集団戦。仲間を護る盾と殲滅戦の火力だ。転移魔法によるカバーでギルドメンバーを守ってきた。
この世界じゃゲームのようにはいかないが、ポータルを設置しまくる事で何とか再現出来た訳だ。
さあ、反撃開始といきましょうか。
お読み下さりありがとうございます。
更新遅くなってすみませんm(__)m
