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第七十二話「ゴブリンだってやれば出来る子」

遅くなって申し訳ありませんm(__)m

GWなんてなかったです………。


 シャルちゃんがロードに迫る。

 シャルちゃんの《加速装置》は初速からトップスピードが出せるスキルだ。それに対しロードの《慣性制御》は動作を途中で切り替える事で、攻撃の隙が無くなり全体的にスピードが上がっている。


『こっちのツインドリルはAGI型か!俺に着いてこれるとは、なかなかやる!』

「何を言ってるか分りませんが、この程度なら負けませんわ!」


ロードの途中で変化する太刀筋に苦労しながらも、シャルちゃんは攻撃を受け流し踏み込む。

戦闘面ではスピードだけでなく攻撃を変化させられるロードの方がスキルとしては優秀か。しかし、シャルちゃんの武器は、己の拳という最もその変化の対応に適したもの。上から振り下ろされたと思った剣が突然横に切り払われても、咄嗟に回避から受けに回れている。

 シャルちゃんの突きにロードは身を引き、再び距離は剣の間合いに。そしてロードの攻撃を搔い潜り、肉薄するシャルちゃん。


 「……と、こっちもなんとかしないといけないね」


 こちらには残りのゴブリン七匹。そのどれもが普通のゴブリンとは一線を画す強さだった。恐らくロードに鍛えられたのだろうゴブリン達は、冒険者で言えば銀ランク、危険度なら4か5にもなるかもしれない。

 シシリーが放つ矢を切り落とし、ユースの魔法も冷静に回避するかダメージを最小限にするため盾持ちが前に出る。

 種族として上位種になった訳ではないので、あくまでゴブリンの域なのだが力任せに武器を振るったり、無謀な突撃をしたりもしない。それは経験を積んだ戦士の動きであり、また集団での戦いも心得ているのだろう、私の動きを封じるように通じないまでも波状攻撃は収まらない。


 どうする?

 相手は生半可な攻撃で引いてくれるような奴らでは無さそうだ。このままではジリ貧だし。

 乱戦で《土魔法》で落とし穴なんか作ってもだめだし。てか、瞬時に人が出れなくなるような穴なんて作る魔力がどんだけいるんだか。土壁なんかも同様だし、やっぱり《土魔法》が生きるのは戦闘前か。


 ゴブリン達の攻撃を受けながら考えるも、この状況をなんとか出来る良案は浮かばなかった。


「くっ、こいつら強い!」

「ゴブリンがこんなに手強いなんて……」


基本的に本能のまま襲ってくるゴブリンは力も体格も人間の子供並み。それが拾った武器を振り回すだけなのだから、数がいなければ大した相手では無いのだが、訓練次第でここまでになるのか。

単純な攻撃では防がれ、シシリーとユースも迂闊には攻撃出来ずにいるようだ。


幸い、私が時々使っている《挑発》は効いているようでゴブリン達は私に集中しているが、ロードには全く効いている様子は無い。

エルグラでも対人戦では一時的にタゲを変更させるだけだったが、他のゴブリンには効いているし違いは何だろう?ゲームではMOBとPCという明確な違いがあったが、リアルはそういう意味の違いがある訳じゃないし……。

転生者には効かない?それとも「人間」と認識されてるとダメなのか?そういや対人で《挑発》使ってないから普通に人に効くか分からないな。そのうち検証かなぁ。



 双方共に決定打が無く、じわじわとスタミナだけが削られる戦闘が続いた。傷やちょっとした疲れ程度ならアークの魔法で癒してくれるが、根本的な疲れまでは癒せない。

 私はまだ余裕があるが、常に動いてるようなシャルちゃんは厳しそうだ。


「仕方無い、アレやるか」


シャルちゃんとロードは少し離れた所で一進一退の激しい攻防を繰り広げている。ロードもスキルも然ることながらスピード重視のタイプなのか、目まぐるしく立ち位置を入れ換えながら必殺の一撃を入れようと牽制が続いているようだ。

あれに割って入るのは素早さは並の私には大変だけど、エルグラでもやっていたAGI型相手の立ちまわりを再現出来る……筈。

アレなら取巻きのゴブリン達を引き剥がせるし、戦闘を終わらせる為に狙うはロード一択だ。彼が止まれば取巻き達も戦闘を止めるだろう。


その為には準備が必要だ。

私はゴブリン達の攻撃を受け流しながら、シャルちゃんの周囲を探った。


「洒落臭い、ですわ!」


シャルちゃんはロードが降り下ろした剣をガントレットで軌道を逸らし、前に踏み込み拳を振るう。

身体を捻って、それをかわしたロードはすり抜けるように位置を入れ換え、シャルちゃんの側面に回り込み再び剣を振るう。

更に幾度か攻防が続き、両者は一旦距離を取って息を吐く。そろそろシャルちゃんのスタミナが心配だ。


『流石に息が上がってきたようだな。そろそろ片付けないと向こうがやばそうか……』


 ちらりとこちらを気にするロード。

 私がまだ見せていないスキルを警戒しているのだろうけど、それはこちらも同様だ。

出来れば出し惜しみしている間に終わらせたい。

私はシャルちゃんの様子を伺いながら準備を進める。前世のゲームのようにはいかないが、上手くいけばハッタリは効くだろう。


「ユース、シシリー、私がシャルちゃんの援護に入ったら取巻き達の足止めをお願い!」

「囲まれてるのにどうやって……」

「………わかった。また何かやるんだろう?」


うん、ユースは良く分かってるじゃない。


───後は、タイミング。


お読み下さりありがとうございます。

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