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第六十五話「転生し勇者になったのでケモ耳ロリっ娘と魔王退治に…以下略」


本来、図書館の役割は情報の収集と保存である。

それを纏め管理するのが司書さんとかなんだけど、ラノベや漫画などで出てくる大図書館は、異界、ダンジョン化してたりして誰も把握出来てなかったりする事がある。

そこには失われた知識だったり、異世界の魔法の本があったり、本に封印された魔物とか悪魔がいたりと危険に満ちていて、それらを求めて次図書整頓隊が命懸けで挑んだりする。


……まあ、アーシェン王立図書館にはそんな冒険はありませんでした。残念。


私が閲覧出来るのは一般開放されている部分だけ。

やっぱり古くて貴重な本や、広めたら不味い様な知識の本みたいなものは此方には無いそうだ。

後者の方には転生者が関わってたりするのがありそうなんだけど。絶対ヤラカシタ物とかいっぱいありそうだよねぇ。


「アーシェン王国の始まり」。

そんなタイトルの本を手にとってみた。


アーシェン王国は、大陸西部からやって来た旧アーシェン王国の人々が南部に突き出た半島に新に王国を築いた事が始まりである。

元々半島にも小さな国はあったが、魔物の脅威に脅えて暮らす弱小国で、旧アーシェンの英雄王ギュスターヴがこの地を荒らしていたゴブリン王を倒し、その国のカタリナ王女と結ばれ、国を立て直した。

この二人が現在の王家の祖である。


つまり、北の戦乱で滅ぼされた亡国の王子が、この土地の小さな国を魔物から救ってお姫様と結ばれました、めでたしめでたしって感じ?


現在の貴族は二種類で、元からこの地を治めていた貴族と、旧アーシェンの貴族がいる。クロフォードはレイゲンタットからの魔物の守りとして旧アーシェンの将軍が置かれ、その祖となったらしい。

昔は魔物が多く、町の行き来も命懸けだったようで、今みたいなのんびり馬車旅など出来なかったようだ。クロフォードは魔物との戦いの最前線でもあり、領主が辺境軍の指揮官であった。まあ、今代の父は文官にしか見えないけど。


契機となったのは約三百年前。

いつ終わるか分からない魔物との戦いの中、ある頃から世界中の魔物が急速にその姿を消した。

勇者が魔王を封印したおかげである。

勇者とその仲間達の冒険については長くなるので、またその内に。


以来、魔物が居なくなった訳ではないが、その生息圏から出てくる事は少なくなり、概ね平和になった。


建国期はこんな感じらしい。

王道ファンタジーRPGみたいな時代があった訳だ。


で、その勇者なのだが。

名前はサトル。「ケモミミ最高」「イエス・ロリータ・ノータッチ」「絶対領域はサンセンチ」など勇者語録に謎の言動が多い。

これ、転生者だろ。


まあ───勇者の性癖はこの際どうでもいいんだが、三百年前には転生者はいた。しかも、言動からして「三百年前」の人間ではない。

つまり、この世界の過去に転生したのか、もしくは前世とこの世界での時間の流れは全然違う?


でも不思議に思ってた、日本文化の浸透率が少なくとも三百年前からと言うなら納得か。

前世の記憶を思い出した頃には、この世界の言語は覚えてたのだが、パスタの「ナポリタン」がこっちの言語として普通に使われてておかしいなとか思ったのよね。

何百年も前からあちらの文化とかが入ってきてるなら、食材や料理なんかに不自由しないのも解る。先人の転生者には感謝だねぇ。

おかげで苦労せずに、美味しいご飯が食べれます。


ただ、その割に文明として発展はしてないのが気になるなあ。私みたいな一般人だと車の構造はなんとなくしか知らないが、存在は知っている。魔道具という物があって三百年以上経っているのに、そういった技術面は中世レベルなのはどうなんだろう?

単純に専門知識がある人間が転生者として選ばれて無いので作られてないとか、アーシェンは発展途上国なので存在しないだけならいいけど、よくあるパターンで、車や鉄道、飛行機なんかは禁忌で作ったら天罰とか天使が襲ってくるだったら困るからなぁ。


────くぅ。


そんな事を考えているとお腹が鳴った。

おっと、もうお昼か。

それなりに疑問は解消出来たし、こんな所かな。

図書館には休憩出来るカフェがあるので、そこに行ってみよう。貴族も来るらしいから美味しいカフェランチも期待したい所。


広い庭に面した解放間のある明るい店内には私と同様に図書館帰りっぽい学生がたくさんランチを楽しんでいる。窓際の席について、やって来たウエイトレスさんに注文を。


頼んだのはケサディーヤ。タコスに似てるけどトルティーヤに調理済みの具を挟むのがタコスで、ケサディーヤは具を入れてから調理する。今日は豚挽肉とチーズとキノコの入った物。

屋台でも軽食で売ってるけど、スパイシーで美味しいです。

デザートにチャモヤーダも頼んだ。パッションフルーツのシャーベットアイスなんだけど、上から杏とチリソースを加えたチャモイをかけて食べる。

アイスの甘さに酸っぱい杏と辛いチリソースが絶妙で不思議なお味です。


「いつもの席でと思ったら……見掛けない顔ですね」


不思議なお味になんとも言い難い顔をしていた私に、女の子二人が声を掛けてきた。

一人は如何にも貴族のご令嬢。赤みの掛かった金髪のちょっとキツメな雰囲気の少女と、その影に隠れるように黒髪のメガネっ娘。


ああ、ここは私の指定席ですわみたいな感じかー。


「普段は冒険者をしてるので学生ではないですね」

「あら、冒険者の方とは珍しいわね。何方かのご紹介?」


ご令嬢っぽい子は学生でない事に興味を持ったのか、そんな事を聞いてくる。

まあ貴族が多い学院の図書館だ、一般人でも利用できるが近付きたくないって人が多いだろうしね。


「調べたい事があったので、ここの学生をしていたアーク……アークラント・ミシェル君に案内して頂きました」

「まあアークラント様に。そう言えば最近はPTを組んでいると聞きましたが」

「カトレア・クロフォードと言います」


世間は狭いようで、アークの知合いっぽいね。同年代の貴族ならパーティーなんかで顔を合わせるのだろうけど。


「カトレア・クロフォード……もしや〈グリムの救済者〉の!?」


私の名乗りに、驚いたのはメガネっ娘の方。



お読み下さりありがとうございます。

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