第六十四話「婚約破棄されないご令嬢もいるようです」
「こんにちはー!」
「いらっしゃい、カトレアちゃんにシャルちゃん。後はお仲間の子達?皆可愛いわね♪」
ファンシーな店内に入ると、満面の笑みを浮かべたライちゃんに出迎えられた。
今日は大きくスリットの入ったセクシー系のチャイナドレスっぽい衣装にそのムキムキボディを包み、剥出しの二の腕や丸太の様な太腿等が凄い事になってます。
ウフンと見詰められて、ユースが固まる。
「カトレアさんのPTの私はアーク、あとユース、シシリーです」
アークは貴族としての嗜みというかどんな相手でも表情を崩す事無く、にこやかにそれに応じ固まったままのユースとシシリーの分も挨拶をしてみせる。流石だわ。
「その様子なら、採集は上手くいったみたいね。良かったわ。お茶を用意するから、ゆっくりと聞かせてちょうだい」
ランちゃんはまた奥に入り、今日はカフェオレに黒糖のシフォンケーキを用意してくれた。ケーキはまたもランちゃんの手作りで女子力の高さを伺わせる。甘いのが苦手な男性でも美味しく頂けそうな、控えめな甘さで珈琲とかによく合いそうだ。
お茶を頂きながら、遠征の話をした。蚕の群れの話ではランちゃんも首をかしげる。
やっぱり蚕は群れは作るが、精々十数匹単位。それ以上が一か所に集まるとあの大きさだ、食料事情というものがあって食べ尽くさないように離れて群れを作るものなのだとか。
「これは、ロード種の繭……!また珍しいものを手に入れてきたわね。これなら更に魔力の乗りも良いわよ。数段上の効果が期待できるわ」
「これでどの位防具つくれそうですか?」
「三つもあれは普通のサイズなら6人分くらい……成程、貴方達全員分の量はあるわね」
良かった。折角皆でゲットしたのに私とシャルちゃんだけじゃなーと思ってたんだ。
そう、うちのPTには重鎧を着るようなタイプは一人もいないのだ。
あ揃ではないけど、其々革とか布製の服だから今回の繭で良い物が作れればいいな。
「あー……それは有難いんだけど、やっぱり金かかりますよね?」
「そうねぇ、うちは完全にオーダーメイドになるから魔力付与に程度にもよるけど、金貨百枚程度からかしら?」
「あー……」
ああ、うん、そうだね。
私とシャルちゃんは一人当たり金貨五百枚程は貯めてきたけど、アーク達三人は主にスキルの取得がメインで、冒険者ランクを上げたとは言え、ガッツリ稼いでいた訳じゃないだろう。
ちなみに、私とシャルちゃんの分はそれぞれ金貨三百枚かかるそうですので、流石に三人の追加分までは払えないし、三人もそこまでして貰う訳にはいかないと断ったが。
「まあ、これから稼げばいいんですよ。収納いれて置けば邪魔にはなりませんから、貯金が出来たらランちゃんにまたお願いしにこようよ」
「そうしなさいな、売れば結構な値がつくと思うけど、欲しいと思っても見付かる品ではないわ。いつでも待ってるから、頑張ってらっしゃい」
私とランちゃんの言葉に三人は顔を見合せ「はい!」と大きく返事をした。
私達の分が完成するのは六日後ということなので、講習のあるシシリーは除き残りのメンバーは其々の用事を済ませつつ、時々依頼を受けて狩りにでもという事になった。
シシリー次第だが、そろそろダンジョン開放も迫って来ているので終わり次第クロフォードに向かう予定だ。
私はアークに図書館みたいな物がないかと尋ねると、学院の図書館は一般にも開放されているそうなので、明日連れていって貰う事に。
シャルちゃんは折角防具を新調するのでガントレットと胸当ても馴染の店に行って見て貰う様なので、明日はほぼ自由行動かな?
今日の午後は皆で市場に行ってお昼を屋台で済ませつつ、夜営等で必要な道具などをお買い物。
夜は無事の帰還を祝してという訳でもないけど、数日振りの王都なので美味しいご飯!という事で旅の間はお肉が多かったし、海鮮かなと以前に行ったお店で海鮮丼♪
この時期の旬ということで、生ウニ丼!生のウニはミョウバンは使わずに塩水保存するので磯臭さがなく夏に食べたいメニューだよねー。あとアジとイカのお造りも肉厚でぷりっとしてて美味しかったー。海鮮はやっぱり旬の物を美味しい時に食べるのが醍醐味です。
翌日の朝食後、態々アークが宿まで迎えに来てくれて学院に出発。
ちゃんとエスコートしてくれる辺りは紳士だよねぇ。金髪イケメンで知的な紳士とか、婚約者居なかったらもてそうですよ。むしろ立候補もありだろう。
ま、冒険者とかやってるから家の事は本人あまり気にはしてないようだけど(そもそも法衣貴族なので継ぐ領地がないから当主以外はお金持ちの家の子くらいな感覚っぽい)一応でも婚約者ってのは大事なようだからねー。紳士なだけに冒険者するから婚約破棄ね、なんて事はしたくないらしい。
ええ、子や。その手の界隈では、てきとーな理由で婚約破棄されるご令嬢が多いというのにね。
さて、やって参りましたよ、アーシェン王立学院。流石貴族の坊ちゃん嬢ちゃん達が通う学院だけあって、広いこと広いこと。王都じたいが大概広いんだけど(ちなみに簡単に北、東、南の三区と東区の広さは三区合わせた広さの数倍が東区の広さです)案内してもらった図書館は某ビックサイトの数倍広そうでした。うん、広さが説明し辛いわ。
朝早めの時間なので、利用者は結構いる。殆どは学院の生徒のようで揃いの改造ブレザーの制服っぽい服を着ている。私のような一般の人はあまり居ないけど、まあ学院の図書館に一般人は用事がある事ないだろうしね。
アークとはここでお別れ。今日は《神聖魔法》のアレンジ技術的な講習があるそうで折角だから聞きに行ってくる事にしたそうだ。うん、そういうのが実際の現場では必要だよね。
私が図書館に来てみようと思ったのは、少しこの国の歴史とか世界の歴史に興味があったからだ。
転生者はいつ頃から、この世界に干渉しているのだろうか……?
お読み下さりありがとうございます。