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第六十二話「予兆」


「はふー、な、なんとか振り切ったー」


蚕達はしつこかったが、動きは早くはない。

なんとか引き剥がし、生息圏から抜け出してしばらくして、漸く最後の数匹が追って来なくなるのを確認した私達はその場に座り込んで無事を喜んだ。


「いや、流石に疲れましたね」

「ほんとだよー、まぢ疲れたー」


アークが言うと、シシリーはその場に仰向けに倒れる。何匹か倒したのも影響があったかもだけど、元気過ぎるわ!

流石に根絶やしにすると今年の採集に影響が出るし、ねぇ。そんな事をしたら服飾関係に恨まれそう。


「まあ、とにかくご飯でも食べて落着きましょう」


時間はお昼を回っているので、《空間収納》を漁って屋台で買った軽食を取り出す。流石にこれから作るのは疲れて面倒だし。

バンズに焼いたお肉を挟んだハンバーガーみたいな物を主食に、揚げ焼売、春巻。デザートに杏仁豆腐。

お湯だけ沸かして、青紅茶を入れて、人心地です。


「繭の採集には行かないとだけど、今日の所は危ないだろうから、この辺で夜営かな」

「それが良さそうですわね。また追いかけられたくありませんもの」

「そうだねー、この辺で薬草でも探しとくのが良いんじゃない?」



しばらくまったりと食休みをしてから、午後は主に採集に励みました。

またファングウルフ計八匹に遭遇したけど、もう余裕ですから問題無し!


適度な広さがある空き地を見付けた所で、今日の夜営のにする。いつもの様にテントなんかはお任せして、夕御飯なんだけど、今日は再びバベキューにしちゃいますか!準備は切るだけで簡単だし!

またシャルちゃんにご飯をお願いして、私は材料を出して切っていく。


お肉は王道は外せないので、牛カルビにタイラントボアと羊もいっちゃう。皆頑張ったしドレイクも行くかー!海鮮関係で海老にイカにアーマークラブの

残りとか。

結構振る舞ってきたけど、まだ半分以上はある。ただ、レイゲンタットの麓までツインランサードレイクが下りてくるのは相当レアなのか、あれから一度も遭遇しないので特別な時だけにしよう。

野菜は玉葱、キャベツ、人参、ピーマン、とうもろこしに茄子等々。

前に海辺でやった時はユース家特製タレだったけど、今日はマリアンさん特製だ。うちのは玉葱ベースでコクのある甘口かな?あとはポン酢とかでサッパリと。

スープ系は簡単にトマトとズッキーニのコンソメスープを用意。

うん、こんな所ですかね。


「おお今日はバーベキューか、いいね!」

「うん、お腹空いたぁ」

「今日は特別なお肉もあるからね、いっぱい食べるよー!」


アークに魔物避けの結界をお願いして、早速まずはカルビから!鉄板にずらりと並ぶお肉って良いよねぇ。

夜営なのでお酒は無しだけど、お肉と炊きたてご飯を頬張れば幸せの味が広がります。


「それにしても俺達頑張ったよな」

「そうですね、危険度5は銀ランクのPTが狩るような魔物ですからね」

「だよねー!あたし達も銀まで行けるかも!?」


多くの冒険者は鉄ランクで終わる。まあ、普通に稼ぐだけなら鉄ランクでも十分に稼げるし、日本で言えば生涯平社員か、もう少し上くらいと思って貰えば良い。銀ランクは一流と呼べる人達で──結構会ってる気はするが──そうそうなれる物ではないのだ。

金に至っては国の中でも一握りで、イザークさんとアネットさんは本当に凄いんだと最近漸く理解したよ。なんで護衛なんて仕事受けてたのか不思議。


「まあ、大変だったがこうして旨い飯が食えるのは嬉しい事だよな」

「そうそう。冒険して疲れたら美味しいご飯!生きてるって感じよね!」


もごもごと口を動かしながらユースが言うと、シシリーが砂糖醤油が香ばしい焼きはとうもろこしを片手に力説する。少々お行儀は良くないが、この場にそんな事を気にする者はいない。


「ふっふっふー、まだその程度で満足して貰っては困るのだよ」

「‥‥‥そ、それはいけませんわ、カトレアさん!」


私は不敵の笑みを浮かべメインのドレイク肉を取り出し、じゅわっと焼き始めた所で、シャルちゃんが嬉しい悲鳴を上げる。

焼き上がった所に岩塩を振掛け、一番美味しい所で切り分け皆に振る舞う。


まあ、いつもの反応でした。



「あれは色々な意味でヤバイ代物だった‥‥‥」

「危険度7‥‥‥」

「あたし達、やれば出来るよね‥‥?」


うん、すまん。危険度5の魔物討伐に湧いていた所で、私が単独で危険度7のツインランサードレイクを狩っていた事は結構ショックだったらしい。

まー、金ランクでもソロは厳しい相手だからなー。

でも半日に及ぶトライアル・アンド・エラーの末に漸く致命傷を与えられたあの戦いは、私の中では過去最高難度事は確かである。


「でも‥‥‥狩れるようになれば、あのお肉が食べ放題‥‥‥?」


シシリーは流石でした。


そんな話はしていた食後のまったりとした時間に珍入者が現れる。


「あ、何か来る。これは‥‥ゴブリン‥‥?」


真っ先に気付いたのはうっとりとドレイク肉カーニバルを想像していたシシリーだった。

耳が良い事もあるが斥候としての勉強は身に付いているのかな。


「そう言えば、討伐対象の割に出てこなかったですね。ここに来てですか」


アークは錫杖を手に取り立ち上がる。

まあ、結界があるから近付いては来ないだろうけど、繁殖力旺盛な彼等は駆除指定を受けていて一匹みれば三十匹いると言われる程なので見付け次第討伐が推奨されているしね。

もし、この世界でゴブリンに転生してしまったらハードモードまっしぐらですので、気を付けて下さい。


「食後の運動がてら退治しておくか」

「数は二匹くらいかな?」

「了解」


しばらくして、シシリーの言葉道理に二匹の貧相な腰巻に木の棒を手にしたゴブリンが現れる。

特に変わった様にも見えない()()()()()()()()、あのゴブリンだ。


ここは任せておけとユースが《火魔法》で先制。


「〈火聖霊の槍〉」


ユースの上に出現した火の槍が、あっさりとゴブリンの胸板を貫きゴブリンは倒れる。

所詮危険度1だ。


「ハラごなしにもならないぜ」

「しばらく前までは、結構焦ってたくせにー」

「私達も成長したって事ですよ。努力すれば、きっと金ランクにもなれると信じましょう」

「そうですわよ。一人規格外がいますけど、私達だってやれば出来る子ですわ!」


人を人外みたいに言わないで下さい。私だってごく普通の辺境男爵令嬢ですよ。

うん、男爵令嬢って言葉が出てきたのも久しぶりで皆忘れてるだろうから言うけど、男爵令嬢なんですよ?


「ま、一応討伐証明を‥‥あれ?」


一応はポイントの足しにはなるので、ゴブリン死体を見ると、それは光になって消えていく所だった。


まるで()()()()()()()()()()()()()

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m


お仕事復帰したので、更新遅くなってます。出来れば毎日1回はしたいんですがー(>_<)

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