第五話「vsトカゲさん」
岩の上で日向ぼっこをしている大蜥蜴達。
爬虫類だけあって、日が上ってしばらくは活動が鈍いのか、ペタンと伏せて目を閉じる姿は、ちょっと可愛い。
でも、侮ってはいけない。アレはロックイーターという岩食いトカゲだ。硬い岩をボリボリかじる強靭な顎と、堅固な外皮を持っていて、危険度はレベル3。
まあ、《竜魔法》の竜爪ならサックリいけると思うけど、ダンジョン攻略では他の冒険者と一緒になるかもだし、《剣魔法》の特訓だ!
先ずは群れの中でも、離れた位置にいる一匹にそろりと近付き、《空間収納》から愛用の小剣を取り出す。
ごく普通の剣だし、装備の強化も考えないといけないかー。でも、うちの町にまともな鍛冶屋なんてないんだよねー。ゲームだと存在するが魔物のレアドロで現物ってのは無いだろうしなぁ。
「まずは一匹釣ってみましょうか」
小剣に魔力を纏わせる。横薙ぎに振って、貯めた魔力を打ち出すイメージで‥‥
「〈飛翔斬〉!」
技名を叫ぶのは、やっぱりイメージ力が上がるので、それっぽい名前を。
魔力弾は寝そべっていたトカゲに命中するが、いまいち効いた感じではない。面倒そうにこちらを向き、のそのそやってくる。
やっぱり防御は堅そうだ。
続けて、今度は純粋に魔力を纏わせて、固めるイメージで。
「〈魔力充填〉からのー、掌握!」
ブウンって感じで、揺らいでいた魔力が凝縮し、小剣が輝く。うん、いいね、カッコいい名前とか考えよう。
トカゲは目の前だ。グッと沈み込んで力を貯める。その動きから来るのは。
「よっ‥‥と、そんな攻撃じゃ当たらないって」
飛び掛かってきたトカゲを右にステップでかわし、背中に剣を降り下ろす!
ガリっと岩を削るような感触。やっぱり岩っぽい皮の部分はこれでも浅いか。
トカゲは斬撃など気にもせずに、そのまま尾を薙ぐ。しかし翳した左手に形成した《全周囲防御》で受け流す。ダメージは勿論無し。
二撃目。弱点は恐らくお腹だろうけど、この体勢では狙えない。また背を削るのみ。
トカゲが振り向く間に、上にジャンプ。一瞬私を視界から逃したヤツが気が付く前に、眉間目掛け剣を突き出し‥‥僅かに逸らされる。
着地した所を狙って噛み付きが来る。これも予想済み、《全周囲防御》さん鉄壁のガード!
トカゲはそれからも噛み付き、爪で斬りかかり、尻尾を振るうが、かわし、ガード、ガード!
こちらの攻撃は当たるものの、火力不足で致命傷には程遠い。うーん、まあ、いくらエンチャあっても素の攻撃力が小剣だしなぁ。
地味な攻防がしばらく続くが、遂に。
何度目かの飛び掛かりを岩に誘導し、トカゲを自爆させる。ぶつかり、岩に乗り上げ引っ掛け腹部を晒した所がチャンスだ!
「〈魔刃斬〉だ!」
逆手に持った小剣後ろに構え、某有名先生の必殺技ぽく、振り抜くと同時に魔力放出!柔らかい腹部を大きく切り裂いた!
ぱっくりと開いた傷口から血が吹き出る。
流石に一撃とはいかなかったが、大きく傷ついたトカゲの動きは鈍く、後はジリジリと削られ、ようやく動かなくなったのは、もう少し後。
あー、疲れた。
乱れた呼吸を整え、くいっと伸びをする。
まあ、これは相性の問題だが、斬撃に強い相手にも効果的でスキルが欲しいかも?
《剣魔法》も、もう少し早く魔力を練って、かつ凝縮させないと通らないから訓練あるのみか。
あと、流石に連戦はキツいし。
十歳の身体は持久力がー。
ひと息吐いていると、仲間が倒された事に反応したトカゲが今度は三匹やってくる。
「GUGYAUUUU!」
リーダーなのか、少し大目なトカゲが威嚇してくると、残りの二匹が飛び掛かってくる。
───が、《全周囲防御》の敵ではない。
そして。
「〈竜爪〉!!」
ざくざくざく。
右手を竜に変え、トカゲ止まった所で首を狙い、あっさりと切り飛ばす。
YOU WIN!!
うん、チート魔法は強すぎるわ。
倒したトカゲさんを《空間収納》に回収。肉、肉、お肉~♪爬虫類だから鶏肉っぽい感じかなぁ。
ここは四匹もゲットできたし、先に進もう。
岩場を過ぎて、森に入る。人など誰も来ない場所なので、下生えの木が凄い事になっている。
しばらく、ざくざく小剣で切り払いながら進むものの、この調子では労力の割りに探索は大して進みそうにないので、さっさと引き返す事にした。
一旦、岩場に戻って、再び《竜魔法》で翼を生やし、上昇。上から森を眺めてみた。
この先、山までずうっと森が続いている。この森の中だとすると、探し出すのは難しいんじゃないかなぁ。あの藪の中を虱潰しに探すのは勘弁して欲しい。
アルテイシア様、場所は教えて欲しかったなー、せめて分かりやすい目印になるような物がある場所だといいんだけど‥‥と、聞かなかった私もあれだが。
とりあえずお昼になるし、どこか良さそうな場所はないかと岩場を見渡すと。
‥‥‥ん?何か立ってる?
岩場の中程、円型に岩が少ない場所があった。
その中心には縦二メルク、横五メルクくらいもある大きな看板が立っていた。
「ダンジョン(名称未定)建設予定地」
なんじゃ、こりゃあああああ!!!
1メルク=1メートル
作中の技は、その場のノリで適当に言っているだけなので、そんな技は存在していません。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m