第五十六話「王都と再会とお約束。」
はい、王都にやって参りました。
‥‥‥‥え、早いって?まあ、道中も色々ありましたけど、平穏な旅だったのでカット。
ちなみに御者はオスカーさんではなかったです。他はお客さんで商人の方が計十八人。グリムやノルディンで乗り降りもあって、利用者も増えたなーという感じです。
《空間魔法》のポータル設置とか、ノルディンでお肉やチーズなんかの確保(グリムはクロフォードに直営店あるので特別買う物は無かった)等をしつつ、のんびり旅行でした。
王都はクロフォードに比べると海に面しているので、夕暮れだというのに蒸し暑く、前世の都内の夏を思い出す。こういう日は冷えたビールとか美味しいんだよねー‥‥と、まだお子様なので、お酒は大人になってからにします。はい。
‥‥‥あー、お腹も空いてきたなぁ。
「とりあえずは宿の確保かなー」
「そうですわね。また前に泊まった宿が空いてると良いのですけど」
宿は南区だったね。
通りを歩いていると、美味しそうな香りが~。あっちはビアガーデンみたいだね。
うん、服飾師さんにお願いしたら食べ歩きだー!!
「すいませーん、個室二部屋か二人部屋空いてますか?」
お腹が鳴りそうなのを我慢して、なんとか宿兼酒場の〈ロザリア〉に到着。個室は一つしか空きが無かったので、二人部屋を取る。
これから夕食を取るお店を探すのも、お腹の具合が大変なのでない下の酒場で日替りを頼む事にした
本日の日替り定食は、アジとイカと海老のフライ盛合せ、カラフルな色合の茄子とパプリカとオクラとトマトのミネストローネ、水菜と蕪のサラダ。それとカンパーニュ。
夕食もボリュームたっぷり。フライは三つずつだし、ミネストローネとパンはおかわりオッケー。
揚げたての、まだしゅわっと音がするフライはタルタルソースで、いただきます!
サクサク衣で中は肉厚のふわっとしたアジ。プリプリのエビフライ。イカも勿論美味しいさー。
お腹空いてるってのは最高の調味料何て言うけど、普通なら二人前ありそうな量だけど、ぱくぱく食べる。この酒場は安心のお家ご飯って感じで、こういう気取らずに食事が出来るお店も良いよね。
「あ、おじさーん日替り一つお願いします!」
二つ目のエビフライを食べていると、入口から聞いた事のある声が。
「シシリー!久しぶりー!」
「あれー、カトレアちゃんにシャルちゃん!?王都に来てたんだ、久しぶりー!!」
シシリーは元気に手を振って、赤いポニーテールを揺らして、私達のテーブルに。
「先程到着したばかりですの。シシリーさんもお元気そうでなによりですわ」
「あれからもう‥‥3ヶ月くらい?うわ、もうそんなになっちゃうんだ。こっちは皆元気にやってるよ」
「今日は、ユースとアークは?」
「二人とも実家。講習とかが無い日は一緒に狩りに行ったりするんだけどね」
ほー、頑張ってるみたいだね。あの如何にも駆け出しといった感じが抜けたように見えるし。
‥‥‥おや?
「シシリー鉄ランクになってる!?」
「へへー。私達皆、鉄ランクになれましたー!」
「わー、おめでとう!シャルちゃんも鉄ランクになったし、これで皆一緒だね」
私はまだ銀は遠いです。あんまり依頼やってないしなー。普通は依頼報酬で稼ぐものなんだろうけど、《空間収納》のおかげで素材で稼げるから、お肉優先とかだしね。うん、ご飯は大事。
「ダンジョンは、まだ出来てないんだよね?王都にはどうして?」
「それがねー‥‥‥」
シシリーのフライ盛合せ定食も届いて、私達は夕食を食べながら、別れてからの報告をした。
グリムの災害は、王都でも話題になったそうで、それに関わってた事に驚かれた。中でも白竜王に遭遇した話には固まってたけど。
シシリー達は講習などに出てスキルの修得とかに励みつつ、依頼を受けたりダンジョンに潜ったりしていたようだ。
シシリーは弓しか取柄がないなんて言ってたけど、体術と斥候の技術とかを学んでいるそうだ。もう少しで一応講習は終わるらしいけど。
「斥候ですか、それは助かりますわね」
「うん。ダンジョンはギミックとか多そうだし、私が「罠は嵌まって踏み潰す」を実践しないといけないと思ってたよ」
「そ‥‥それは、止めた方が良いんじゃないかなー」
ともかく、ギルド辺りで三人を探さないといけないかなと思ってたので、ここでシシリーに会えたのはラッキーだった?
しばらくは王都にいることになる旨を伝え、私達は夕食を食べながら再会を祝った。
翌朝、宿で朝食───バゲットにプレーンオムレツ、ベーコンと玉葱のコンソメスープを頂いて、まずは朝市に出掛ける。
この二ヶ月程で海鮮辺りはほぼ使っちゃったしねー。また買い込まないと。
朝から王都は蒸し暑い。朝市も賑わっていて、人でいっぱいだ。魚介類から始り、乾物、調味料、野菜類と、どんどん買う。いっぱい買う。
ああ、お気軽に転移魔法で来れたらなぁ。美味しいご飯の為に魔力アップ頑張らねば!
ぼちぼち秋の味覚も出始めているようで、作るのが楽しみだね。
途中暑いので、冷えたジュースを買って飲みながら市場を回ってから、私達は北区を目指した。
「ここですわね」
「随分とファンシーなお店だなー」
看板には〈ラピュセル〉の文字。正面はガラス張りで、白い壁をキャンバスにそこかしこに妖精達が描かれたお店だった。
扉はオープンの札が下がってるので営業中。よし、と気合を入れて私は中に踏み込んだ。
店内はアパレルショップのように、既製品の服が並んでいる。季節柄ワンピースなんかの夏服が多いけど、奥にはコートなんかも置いてある。
どれも可愛い感じのデザインだけど、良く見ればちゃんと冒険者向けであるみたい?
「あら、いらしゃぁい可愛い冒険者さん」
奥から現れた、ここの服飾師と思われる人物はハスキーな声でそう言った。
店の雰囲気に合わせてか、フリルいっぱいの青を基調にしたエプロンドレス。髪は綺麗な金髪のロングヘアー。太めの眉毛に、角張った輪郭の顔には濃い目の化粧。厚い唇に塗られた真赤なルージュは、明太子を思わせる。がっしりとしたマッチョ系の体格で、あざとい感じに前で組まれた手の指は太かった。
「うへぇえ??」
シャルちゃんが、どう反応していいのか困って変な声を上げているけど、私は心の準備は出来ていたので、結構冷静だった。
「今日は何をお求めに?ワタシが可愛くコーディネートしてあげるわよ」
バチコン☆‥‥と下手なウインクをするその人は、オネェでした。はい、お約束ー。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m