第五十一話「よく食べよく寝て良い冒険を。」
時間は午後三時は過ぎたくらい?
うん、おやつの時間ですなー♪折角なので、《空間収納》からごそごそ材料を取り出して、簡単おやつを作りましょう。
「何か作りますの?」
私が《土魔法》で竃を造るとシャルちゃんが覗きに来たので、火を起こしてフライパンで油を温めて貰う。この間に食パンを‥‥六人だし、二斤くらいいっちゃうか。適当に角切りに。
油が180度くらいになった所で、さっと揚げて油を切っておいて、残りの油は浄化して収納へ。
フライパンにバター、砂糖、塩を入れて焦げないようにキャラメルを作ったら、食パン投入。
さっと絡めて、《生活魔法》で冷ませば完成ー!
お手軽キャラメルラスクです♪
「みなさんも、どーぞ召し上がれ、です」
背負い袋から干し肉を取り出していた面々は、甘い匂いに手を伸ばしてくれる。
「お、美味しいです!」
「ラスクですか?簡単に作れるものなんですね。ああ、サクサクで良い味です」
「んんー、疲れた時に甘い物って最高ね!」
「ああ、結構腹にもたまりそうでいいな、これ」
中々好評の様で嬉しいです。
シャルちゃんも美味しそうにパクパク口に。
うん、良い感じにサクッと出来てるし、バターの香りも良い感じー。前世では、日が経っちゃった食パンで色々作ったけど、これもその一つだ。
「みなさんは、この後もこの辺りで狩りですか?」
お湯を湧かして、赤紅茶───青は烏龍茶みたいだったけど、赤は普通に紅茶‥‥ダージリンっぽい?───を淹れ、配りながら、私は訊ねた。
「そうですね。タイラントボア辺りは見ておきたいと思います。お二人は戻りますか?」
私達は、どうしようか。それなりに狩りはしたけど、大物はまだ。でも出てくる可能性は元々少ないので、日帰りできる内に戻るべきか。
夜営道具とか食材はあるから、お泊まり準備は出来てるけどね。
「戻ろうかとも思ってましたけど‥‥どうする?」
「そうですわね‥‥」
エドガーさんの問いをシャルちゃんに振る。
『洗礼の儀』から既に三ヶ月を過ぎている。半年間の猶予は結構長い気もしたけど、もう半分過ぎてしまった訳だ。装備を作ってもらうにも時間は掛かる筈なので、この辺で大きく稼いでおきたい所ではあるんだけど‥‥‥。
「良ければ、今日は合同で狩りをしませんか?獲物を《収納》して頂けたら助かりますし。勿論、取り分は、先程のダイアーウルフも含めて‥‥そうですね、そちらが8こちらが2で」
迷っていると、そんな提案をされた。私達が8って多くない?
「エドガー、それは流石に‥‥‥」
「いや、アタシ達が持ち帰れる分なんて、精々一割だよ。それを運んで貰えるんだ、十分じゃない?」
ダスティさんが多すぎると口を挟むが、言い終わる前にウィンディさんが止める。
「やっぱり多いです。せめて6か7くらいで大丈夫ですよ?」
「いや、8で。その代わり、旨い飯でも食わしてくれると嬉しいんだけど?アタシらじゃ、携行食くらいで終わりだしさ!」
「お、そいつはいいな!旨い飯が食えるなら、うちは一割でも良いくらいだ!」
ウィンディさんの提案に、先程の発言はあっさり撤回するダスティさん。
「わかりました、私達が8でお願いします。勿論、美味しい物、作りますよ」
そんな〈緋色の槍〉の面々に苦笑する私達だった。
その後の狩りは順調だった。
私とダスティさんで交互に盾役をこなし、アタッカーは三人だし、回復と支援のエドガーさんもいると、単体のタイラントボアやジャイアントスネークは問題なし。ダイアーウルフの群も二枚盾なら分散して受持ち、安定して狩る事が出来た。
残念ながら、迷い出てくる中腹の魔物は居なかったけど、数で勝負だね。
夕方になるので、一旦森エリアまで後退する。
こっちなら襲われても危険度4以下だからね。
もっとも、エドガーさんが魔物避けの結界を張ってくれるので、この辺りならほぼ安全だろうとの事。
簡易テントを引っ張り出して、設営はお任せ、私達は夕御飯の準備をしよう。
最近はシャルちゃんも結構上達して、簡単な物は作ってくれるので助かります。
とりあえず今日は、どうしようかと悩んでいたけど、ダスティさんのリクエストは、ご飯物って事でパエリアを作りましょう。
シャルちゃんにはスープとサラダをお願いします。
材料は、玉葱、トマト、パプリカ、にんにく、海老とタコにイカ。玉葱とにんにくはみじん切りにして、、パプリカは細切り、あとは角切りに。
フライパンにオリーブオイルを熱して、玉葱にんにくを炒めて、お米を入れる。
お米が透き通ってきたら、お水とコンソメ、トマトを入れて混ぜてからシーフード類を乗せてっと。
煮立ってきたら、蓋をして弱火で十分少々、パプリカを入れて、更に三分~五分くらいかな。
あとは一旦日から下ろして、十分程蒸らして、最後に強火でちょっと加熱!
シャルちゃんは玉葱とベーコンの塩バタースープ、ハムとレタス、ベビーリーフのサラダ。
「うわ、凄いね!遠征でこんな豪華な飯なんて、予想以上だよ」
「すげー、うまそう‥‥‥」
「はい、美味しそうですね」
「これはお願いして正解でしたね‥‥」
それぞれ驚いてくれてるけど、まだメインがあるんですよ?
各々をお皿に取り分けて渡して、待ちきれないようすの一同に。
「あとはメインを焼きますので、食べ始めててね」
「「「「いただきます!!」」」」
「うまーーー」
「狩りの後の旨い飯は最高ね!」
うん、美味しそうに食べてくれてます。ダスティさんとウィンディさんは、ガツガツと、シャルちゃん、エドガーさん、リグリース君は味わって。それぞれ良い笑顔です。
私は《空間収納》から鉄板と取っておきを出す。
「そ、それは!」
「みなさんグリム出身って事だしね」
シャルちゃんには何か分かってしまったけど、勿論ドレイクステーキ再びです!
これにはシャルちゃんもうっとりです。
鉄皿はないので、普通に取り皿だけど焼き立てだしね!
「何、このお肉!すっごい!肉汁が!美味しい!」
「そんなにすげーのか、どれ一口‥‥」
「ダメに決まってるだろ!」
最初に焼いた分を口にしたウィンディさんは思わず立ち上り、その様子にダスティさんが手を伸ばすが、皿を高く上げてステーキを死守。
「はいはい、順番ですからねー」
「つ、次は俺な!」
「もしや、救援部隊の噂のステーキですか!?」
「あのグリム伯爵が絶賛したお肉‥‥」
「カトレアさん、早く焼いてくださいまし」
こうして、騒がしいレイゲンタット遠征の夜は更けていく。
お読み下さりありがとうございますm(_ _)m