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第四十八話「仲間を守れる私になりたい。」


とにかくシャルちゃんからヘイトを奪わないと。


タイラントボアは何度も戦っているけど、ソロだと、私の戦法は《全周囲防御》で受け、《竜魔法》の一撃をなんとか当てる、トライアル・アンド・エラーだ。

それは、ゴリ押しが通じる相手の内はいいけど、受けきれない相手が現れたら破綻する戦い方。

PT向けの戦い方ではない。


「こっちを向きなさいっての!〈大地の槍(アースジャベリン)〉!」


地面から突き出した石の槍が猪を襲うが、かわされる。魔力が回復出来てないので、魔法の連発は出来ない。この世界、一晩経たないと回復しないなんて事はないけど、枯渇気味の状態だ。


何度目かの突進で、シャルちゃんのスタミナも切れかかっている。かわし切れなくなったら防御スキルの無いシャルちゃんでは一撃が重い。


「あんたなんか後で豚カツにしてやるんだから、大人しくこっちに来なさいー!」


回復系の魔法も持ってないし、そうなったらピンチだよ。遠慮なんてしてないで《水魔法》を教えてもらっとけば良かった。シャルちゃんを助けないと!


途切れとぎれに魔法を放つが、組みやすい相手と思っているのか、猪は執拗にシャルちゃんをねらう。


えーい、アルテイシア様、こういう時こそ転生者ぱわぁで、なんかに目覚めたりしないの!?



[条件を満たしました。スキル《挑発(タウント)》を取得しました]


‥‥おおお!言ってみるもんだね。

条件ってのが良く分からないけど、スキルゲット!盾職必須のヘイト管理スキルだよね?

考えるのは後、今はシャルちゃんを助けるんだ!


「《挑発》!さあ来なさい、踊ってあげるわ!」


今しも牙を突き上げようとしていた猪は、ピタリと止まり、こちらを向く。


よし、やった!

ヘイトを奪われたままなんて、MT(メインタンク)の沽券に関わるからね!今の私に一番欲しかったのは、他の何よりも、仲間を守れる、このスキルだったのだろう。


「〈竜爪撃(ドラグスラッシュ)〉!」


狙いを変えて、こちらに突進する猪の鼻面目掛け、爪を振るう。しかし、猪はそれを頭を下げる事で反らす。


───ガッ、と鈍い音。狙いを反らされた爪は、牙一本を折っただけ。そのまま私は重い体当たりを受け、ごろごろと地面を転がった。


だが、これで正解。


「やってくれましたわね、三倍返しですわ!」


私を吹き飛ばし、猪の動きが一瞬止まる。そこにシャルちゃんが飛び込んで来る。


「〈雷光崩拳(サンダーブレイク)〉!!」


シャルちゃんの右拳、次いで左拳が猪の頭に撃ち込まれ、衝撃が走り猪はよろめいた。

そこで止まらず、シャルちゃんのラッシュ!某聖なる闘士の主人公のように、連打、連打、連打!

最後に止めと言わんばかりに、突き上げられた掌底がその顎を砕いた。


猪は‥‥‥まだ倒れない。

しかし、この間に私が復帰。


「これで、終わり!〈竜爪撃〉!」


竜の爪は、猪の頭を切り裂き、ようやく動きが止まり、ゆっくりと倒れた。


「なんとかなりましたわね」

「シャルちゃん、傷は?」


大きく息をつくシャルちゃんに私は駆け寄り、傷の具合いを確かめる。ガントレットを外してみれば、折れたりはしてなさそうだけど、両腕は大きく腫れてきていた。


「良くこれであの連打打てたね‥‥薬あったと思うんだけど‥‥」

「このくらいなら、自前でなんとかなりますわ」


《空間収納》を確かめようとした私を制して、シャルちゃんは右手を腫れた左腕に当てて。


「《集気功》」


呟くと、ぽわっと手の平が淡い光を放ち、暫くすると腫れが徐々に治まっていく。

ほー、魔法とはまた違う系統か。魔力の流れが無いので、気‥‥というかスタミナを消費して傷を治すタイプのスキルっぽいね。


「シャルちゃん、それやってみていい?」

「やってみるって‥‥‥?」


まだ腫れたままの残る右腕を取り、私は見せてもらった様を再現してみる。こう、私の力を注ぐイメージだろうか?


「《集気功》」

「!?」


私の手が優しい光を放つ。成功‥‥かな?

それが収まると、腫れた腕は元のしなやかな肌を取り戻していた。


[スキル《集気功》を取得しました]


システムメッセージの声に、私は反省した。

ゲームの頃からソロばかりで、役割的に火力と防御力ばかりを気にしていたけど、今は一人じゃない。

私だけが無事ならなんとか出来ると思っていて、重要な事が抜けていた。


「これで、私が治してあげられるよ」

「‥‥‥慣れたと思ってましたが、やっぱり貴女は規格外な事を平気で‥‥ありがとう、カトレアさん」


仲間を守れる力。

ダンジョン攻略までに、身に付けよう。



タイラントボアを収納して、とりあえず安全圏まで撤退。少し森に戻った所に、以前見つけた広場があって、そこまで戻る。


「お昼になるし、しばらく休憩だね」

「ええ、お腹も空いてきましたし」


今日のランチは、マリアンお手製のタコライス風丼です!酢飯にしたご飯に千切りレタスを敷いて、味噌とお醤油カレー粉で炒めた合い挽き肉と玉葱。アボカドとトマト、それの上にチーズと炒り胡麻をぱらっとかける、簡単だけどお肉も野菜も取れる丼物です!


「「いただきまーす」」


うん、一緒に美味しい物が食べられる。

無事で良かった。

お読み下さりありがとうございますm(_ _)m

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